悪役令嬢は溺愛される

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閑話 叶うのは想い(エミリー)

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アルトとキャロライン公爵が和解をしている間・・・エミリーはそわそわしていた。

先程までは妄想ーーー否、想像の世界に逃避をしていたエミリーだったが、二人がいなくなってからアルトのことが心配でそわそわしていた。

そんな娘に母親であるキャロライン公爵夫人は笑顔で言った。

「エミリー・・・少しは落ち着きなさいな。アルトさんなら大丈夫よ」

「わかってはいますが・・・アルト様にまた迷惑をかけるかもしれないと思うと・・・」

昔から過保護な父親がアルトに何を言うか・・・エミリーは心配だった。
そんな娘を微笑ましげにみながら公爵夫人はお茶を飲んでから言った。

「あなたがそんなことではいけませんよ。アルトさんはあなたが迷惑をかけてるなんてこれっぽっちも思ってないでしょうからね」

「ですが・・・」

「エミリー。仮にあなたがアルトさんに迷惑をかけていたとしても・・・アルトさんがその程度で困ったり、愛想を尽かすような方だと思うのですか?」

「え?」

思いもよらない母親からの言葉にエミリーは目を丸くして母親を見つめた。

「それは・・・でも、迷惑をかけてることは事実ですし・・・」

「アルトさんは多分、あなたがそう思う方が困ると思いますよ。アルトさんにとってあなたは特別・・・何があろうと一番なのでしょうしね」

先程のアルトとの会話から公爵夫人はアルトの瞳から伝わるエミリーへの愛を見抜いていた。
まあ、それ以外にも監視の侍女から色々と報告を受けてはいたが・・・ここ最近のアルトがエミリーのことを何よりも大切に思っていることは手に取るようにわかった。

「アルトさんが本当に困るのはあなたがそんな風に、思い悩んだり、悲しんだりすることだと思いますよ。あなただってアルトさんには笑顔でいて欲しいでしょ?」

「それは・・・そうですが・・・」

「好きな人に笑顔でいて欲しい・・・アルトさんにとって当然なことなんですよ。だからあなたはアルトさんに笑顔で答えなさい。せっかく実った恋なんだから」

「な、お、お母様知って・・・!」

「誰でも分かることですよ」

真っ赤になる娘をみてくすりと笑う公爵夫人。

「初恋が実るなんて素敵なことなんですから、大切になさいな」

「そう・・・ですね・・・」

顔を赤くしながらエミリーは昔を思い出す。

アルトと初めて出会ったのは、同年代の顔見せの茶会のこと・・・その当時はかなり引っ込み思案だった、エミリーはアルトの美しさに惹かれた。

美しい容姿なのに・・・その表情にはどこか影があったアルト。

そんなアルトにエミリーは興味を抱いた。

いや・・・単純にエミリーはアルトに一目惚れしたのだろう。

物語の王子様みたいに格好良いのにどこか影がある彼を支えたいと幼いながらにエミリーは思ったのだ。

婚約者になってから、接してる内にアルトに募る思いは増えていき・・・同時にエミリーに対してアルトが何も思っていないことにも気づいてはいた。

認めるのは怖かったが・・・アルトは表面的には優しく接してくれてはいたが・・・やはりどこか自分のことを見ていないとわかっていた。

だから、エミリーは努力をした。

あらゆることを勉強して、いつか婚約者としてアルトを支えたいと・・・そうすればアルトも振り向いてくれると、幼い頃はそんな風に思っていた。

しかし時が経つにつれて・・・そんな自分の努力がアルトを苦しめていることに薄々気付いたエミリーは・・・そこで半分くらいは諦めていた。

アルトの心が自分になくても、アルトを思う気持ちがあれば大丈夫だと自分に言い聞かせて想いを抑える日々・・・婚約者になれたのに、抑圧される想いは日に日に大きくなっていくが、関係は一歩も前には進めずに離れていく心・・・・そんな実らないと思っていた想いは突然実ってしまった。

何がアルトにあったのかエミリーには理解ができなかったが・・・エミリーはそれでも良かった。

どんなに狡くても・・・・アルトが自分を愛してると言ってくれればそれだけで嬉しかった。

募っていた、抑圧していた想いはアルトの行動に合わせて次第に爆発していき・・・エミリーにはもう抑えられないくらいにエミリーの心はアルトに向いていた。

だからこそ・・・エミリーにとって、アルトがいなくなることが何よりも怖くて、思わず迷惑をかけることにも怖れてしまっていたが・・・これは多分言い訳なのだろう。

エミリーはどこかでアルトが自分を嫌いになっていなくなると思っているのだ。
だからこそ、迷惑をかけることにも怖れてしまっていたが・・・それでもとエミリーは思う。

アルトが自分を嫌いになっても・・・自分はきっとアルトのことを嫌いにはなれないと。
昔からの想いは心の灯りに火を灯して、決して消えることはないだろうと。

自分には情熱的な恋の炎は燃やせないが・・・暗闇の中で道標となる篝火のような輝きの想いは消えることはないと。

それがエミリーの・・・初恋なのだろうと。



   
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