仰ぐ人

花乃

文字の大きさ
上 下
8 / 9
笑顔の日々

テレビの王子

しおりを挟む
テレビを見ていたらお兄ちゃんがチョッカイを出してきた。
「すごい熱心だな」
「この映画がカッコイイんだよ。特に女の子の弓のシーン」
「それは、映画館で見たな」
「え、お兄ちゃんズルイ」
「結末は言わないから安心しておけ」
わたしは、映画に夢中になった。
「読んだことはないんだが。本も出てる」
「えーほしい」
「本屋に行くか」
「うん」
わたしは、ピンクのカバンを出してきた。映画の原作になった日本語の本は難しいことばも並んでいた。
「一冊買ってやる。バイトしたからな」
「えっ」
「あの花は父さんも和んだ」
「アルバイトのつもりじゃなかった」
「いそがしいとできないこともある」
わたしは、映画の原作になった日本語の本を買ってもらった。
「あわてずに、読め」
わたしは居間で、本を開いた。王子の登場、わたしは胸をキュンとするだろう。テレビでひとめ見て一目惚れしたのだから。きっと本の中でも好きになれる。
「森恵。深夜の読書は美容に悪いぞ」
「そんなつもりじゃないよ」
わたしは王子がバレずによかった。部屋に入った。自然に机に置いた。机で本を読みはじめた。
しおりを挟む

処理中です...