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4話
しおりを挟むパッと声のした方を確認すると、そこには私が思っていた通り陛下と王妃様、それからお父様とお母様、グレン様のご両親、そしてレオンハルト様が私たちの方を見ていますわ。
グレン様のご両親は顔を真っ青に、他の皆は呆れた、というような顔で私たちを見ていますわね。
まぁ、仕方がないのかもしれませんが。
一方お姉様たちは、このタイミングで現れた陛下達に戸惑いを隠せないようですわ。
「え!?へ、陛下........」
と呟いて、何もなかったかのようにグレン様からパッと離れました。
そんな状況の中、陛下は
「これは一体何の騒ぎだ?」
そう言って辺りを見渡すと、今までヒソヒソと話をしていた人達も急に黙り込んで、陛下の様子を窺っています。
見る人が見ればわかりますが、今の陛下はとてつもなく怒っていますわよ。
それも当然のことですけどね。
そう思っていると
「ミーフィア、説明せよ」
陛下はそう言って、お姉様の方を見ましたわ。
まさかここで自分が説明を、と言われると思っていなかったお姉様は
「え.....えっと.......ユースティアが次期王妃である私に対して生意気なことを言ってきたので言い争いを........」
少し戸惑いながらも、自分は悪くない。
私がお姉様に喧嘩を吹っかけてきたんだ、という主張ですわね。
あのような醜態を晒した後なので、お姉様の言葉に皆唖然としてしまっていますわ。
すると陛下は、私の方に向きを変えて
「それは本当か?」
と確認をしてきました。
この状況を見るに、そんな単純なことでもめたわけではないことくらい、誰が見てもわかりますわ。
なので、陛下に
「いえ、真実とは異なりますわ。パーティーの最中、急にグレン様とお姉様が私の前に現れて、私に婚約破棄を言ってきました。その際、グレン様が私について何やら変な勘違いをしてるようなので、しっかりと説明をしていました」
そう言って一歩後ろに下がると、陛下も私の言葉に
「ふむ、なるほどな」
と頷いています。
.....いや、本当は聞かなくても大体のことはわかっているはずなんですのよ?
何度か宰相が会場の様子を確認しに来ていましたもの。
といっても、お姉様たちは気付いていなかったみたいですけどね。
なので、平気でこのような嘘を付けるのでしょう。
そう思いながら、陛下の次の言葉を待っていると、それよりも先に
「へ、陛下!私の言うことを信じてもらえないんですか!?王太子の婚約者である私より、妹の言っていることが正しいと!?」
お姉様はそう言って、凄い勢いで陛下に詰め寄りました。
王妃様とお父様達はそのお姉様の姿を見て、大きくため息をついていますわ。
レオンハルト様は、お姉様のことを見定めているかのように静かにこの様子を見守っていますし、グレン様のご両親は私の話を聞いて顔を土色に変えてしまっている、というなんとも言えない....とにかく凄い状況ですわね。
さて、陛下がお姉様に何と返すのか、と思い、眺めていると
「だったらここにいる皆に聞いてみたらいいだけだ。どっちの言っていることが正解なんだ?」
そう言って、陛下は一番近くにいた令嬢に、状況の確認をしましたわ。
あの令嬢.....子爵令嬢ですわね。
まさか陛下と直接話せるとは、と驚きながらも
「あっ......ユースティア様の言っていることが正しいです.......」
そう言って一歩後ろに下がりました。
その言葉を聞いていた周りの人達も、子爵令嬢の回答に深く頷いていますし、これはもう確定ですわね。
これには流石のお姉様も言い返すことが出来ないようで歯をギリギリと音を立てて黙ってしまいましたわ。
さて、これでお姉様もグレン様も、逃げ場はなくなりましたわ。
後は何を話すか、ですわね。
そう思っていると、陛下は
「さて、それで?ユースティア嬢と婚約破棄して、どうするつもりだったんだ?」
今度はグレン様にそう尋ねました。
確かに......それは私も気になりますわ。
グレン様には兄が2人いるので、家を継ぐなんて不可能ですし、自分で婚約者を探すつもりだったんでしょうか?
思わず私まで首を傾げてグレン様のことを見ると、
「それは.......ミーフィアが俺を愛人にしてくれると..........」
蚊の鳴くような声、という言葉がぴったり当てはまるほどの小さな声で、陛下にそう言いましたわ。
これには流石のお母様も
「はぁ!?」
と声を上げてしまっています。
それもそのはずですわ。
お姉様は女王になるわけではないので、愛人なんて作れるわけがないのですから。
そんなの貴族の誰しもが知っているはずですわ。
それをグレン様も鵜呑みにするなんて......常識というものをわかっていなさ過ぎて驚きますわね。
なんて思いながらお姉様を見ると、グレン様が話してしまうのは想定外だったみたいで顔を真っ赤にしてプルプルと震えています。
さて、お姉様は一体どんな返事をするんでしょうね。
まぁ、何を言ってもお姉様の発言を信じてくれる人なんてここにはいないんですけどね。
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