婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~

榎夜

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30話 キーンside

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そう思いながら過ごしていたら婚約破棄をして1ヶ月が経過してしまった。

当然だが、ヴァイオレットは俺に婚約を申し込んでくるどころか、最近は姿を見ることもなくなってしまったではないか。

どうにかして、父上に怒鳴られる前に婚約を結び直さないと......。

そう思いながら何かいい案はないか、と家の廊下を歩いていると、顔色を悪くさせたメイドが俺の元へとやってきた。

正直、こんな顔をして俺のところに来る、ということは父上絡みのなにか面倒なことなんだよな。

それがわかっているからこそ、今すぐにでも逃げ出したいところだが、

「き、キーン様、旦那様がお呼びです」

と言われてしまっては行くしかないよな。

はぁ......本当に憂鬱だ。

メイドに短く返事をして、父上のいる執務室へと向かおうと背中を向けた俺に、報告に来たメイドが

「そ、その......相当急いでいった方が良いかと思います」

と言ってきたではないか。

こんなことは当然だが初めてだからどう反応していいのかわからず戸惑ってしまう。

しかも、相当急いで行った方が良い、だと?

この言葉に違和感を覚えた俺は、恐る恐るではあったがメイドに

「そ、それはつまり今日は普段よりも怒っている、ということか?」

と尋ねると、静かに頷いた。

ふ、普段よりも怒っている、って........ハッキリ言うと想像がつかないな。

ただ、起こっている父上に慣れているメイドがここまで顔色を悪くさせている、ということは相当まずい状況なんだ、ということは頭に入れておこう。


メイドの言葉に少し怯えながら、執務室に到着した俺は早速

「し、失礼します」

と言いながら中に入っていった。

あ、ちなみに、ここに来る時間も普段は10分かかっているのに、5分で到着したからな。

相当急いで来たんだ、ということはしっかりと理解して欲しいものだ。

そんなことを思いながら父上の方を見ると、机の上にはいつも通り大量の書類や紙が置かれていて、俺のほうに顔を向けることもなく

「ヴァイオレット嬢との婚約の件はどうなっているんだ」

淡々とそう質問をしてきた。

うーん.....怒っている、と言っていたが普段と変わらないような......。

ただ、聞かれた内容については俺もどう答えようか全く考えていなかったから

「そ、その話ですが....え、えーっと...........」

と言葉に詰まってしまった。

父上はこれが一番嫌いだ、ということはわかっているが、どう答えるのが一番いいのか、と答えが出ないんだ。

変な答えを言うよりマシだ。

そう思っていると、父上は静かに

「お前、俺には娼婦と一緒に居たから勘違いをして、と説明したな」

と俺に言ってきたが....な、なんだ?何が言いたい?

もしかして.....あのパーティーで起こった出来事を全て聞いてしまったのか?

そう思った俺は恐る恐る机の上にある封筒の家紋を確認した。

するとそこには、ヴァイオレットの家の家紋がしっかりと書かれてあった。

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