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8話 父と旦那
しおりを挟む~ ハーヴェスト侯爵家にて ~
その日の夕方、ユーグ達はシエラが住む ハーヴェスト家の本家に到着した。
「「「おかえりなさいませ、旦那様」」」
先に戻っていたノアから、ユーグが来ることを聞いていた為、従者全員揃ってのお出迎えだ。
「皆、久しぶりだな。元気にしていたか?」
と言いながらもユーグはどこか落ち着きがなくキョロキョロとしていた。
「......ところで、シエラとメイリスはどこだ?」
その言葉を聞いて、皆が顔を見合わせる。
そして、 実は......、と2人が居なくなったことを伝えた。
「なっ!なんだと!?朝から居ないだと!?」
そう言うとユーグは顔を真っ青にして、まずいことになった、と呟いた。
「旦那様、私が戻ってから執務室を見ると、シエラ様は当主としての仕事を1週間分もこなしてから出ていかれたようです」
とノアが伝えるが、
「当主としての仕事など関係ない!!シエラがこの国から出ていったことが問題なのだ!」
そう言うと、ユーグは項垂れてしまった。
従者達は何を言ってるのか検討がつかず、オロオロとしていると玄関の扉が開いた。
「えっ......義父様どうされたのですか?」
現れたのはマノンだった。
マノンは、真っ青な顔をしているユーグを不思議そうに見つめた。
「......貴様に義父様などと呼ばれたくないわ」
ユーグは冷たい目でマノンを睨みつけた。
マノンは全く状況が理解できない、とノアの顔を見た。
すると、ノアは冷たい目で一瞥し
「マノン様、お久しぶりです。半年ぶりくらいでしょうか?お元気でしたか?」
マノンが求めていた答えと全く違うことを言った。それは マノンが家に帰ってきていない、という言葉と同じだった。
「なっ...今はその話ではなく......っ」
慌てながら隠そうとするマノンに間髪入れず
「ほう、家に帰ってきていないというのは本当みたいだな」
とユーグが詰め寄ると、もう逃げ場がないと思ったのか
「シエラが当主として働いてくれてるので、外交の仕事を手伝いたいと思い、様々なところに出向いておりました...。」
と言った。
確かにマノンは外交の仕事を手伝っていたが、それは家に帰れない程長引いたり、遠くへ行くような仕事ではないことを、ユーグはよくわかっていた。
シエラは当主として働きながら討伐作戦に出ていたり、孤児院に出向いたり、と当主の仕事以外のこともしていた。そのため、外交の仕事を引き受ける、というマノンの発言に物凄く喜んだ。
マノンが追い出されなかった理由はただそれだけだ。
ただ、ハーヴェスト侯爵家の外交の仕事はやることが少ない。3日仕事したら1日休んでも問題ない、といったくらいだ。
内容も他国と、ではなく他領地と、だった。
空いている日はシエラを手伝う、そう約束をして外交の仕事を掴みとったのだ。
マノンはその約束を破って、リリーの家に行っていた。
ノアの発言によって家に帰ってきてないことはバレている。それなのに平気で嘘を言うマノンにユーグはブチ切れた。
「貴様は、平然と嘘をつくのだな!!シエラは、そんな貴様のせいで出ていったのだ!どう落とし前をつけてくれるんだ!!」
とマノンを怒鳴ると
「へ?シエラが出ていった?なっ、なぜ俺のせいなんですか!!」
そんなことを言われるのは心外だ!とマノンは気分を悪くした。
そんなマノンに
「はぁ...出ていかれる理由が思いつかんか。愚かだな。自分のしてきたことを思い出せば、すぐにわかるのではないか?」
明日から一切仕事をせずに部屋に引きこもってろ、と告げるとユーグは、執務室へ向かった。
「マージェン夫妻を呼び出せ。到着するまで、マノンが部屋から出れるのはトイレと風呂だけだ。必ず監視をつけろ。」
そういうと、どうやってシエラを探すか...と必死に考えた。
ぽつんと取り残されたマノンは頭が追いつかず、ただただ1人で立ち尽くしていた。
いや、ただ立ち尽くしていた訳ではなく、自分の部屋が、どこかわからなくなっていた。
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