まさかその程度で私の婚約者を奪ったつもりですか?

榎夜

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5話

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アルフレッド様の急な変わりようにリリアさんも取り巻き達も唖然としていますね。

ですがそんな中でも

「で、殿下ぁ.........?」

一生懸命猫なで声でアルフレッド様を呼ぶなんて、今は自殺行為でしかありませんよ。

「気持ちわりぃんだよ!その語尾を伸ばす喋り方!許可もなく人の体をベタベタ触ってきやがってっ!」

「ひ......っ!ご、ごめんなさい......っ!」

あらまぁ......今まで耐えていたのが爆発してしまったみたいですわね。

リリアさんはさっきまでの自信たっぷりな顔から一変、怯えたような顔をしていますわ。

まぁ、でもここでアルフレッド様を止めないと話が進みませんので仕方ありませんわ。

ふぅ...とひとつ呼吸をしてから

「アルフレッド様、今まで築き上げてきたものが台無しですわよ?」

そう言って首を傾げると

「マリアンヌと婚約破棄させようだなんて馬鹿な事を考える奴が悪いんだよ」

まだ怒っていますわね。

王宮で会う度にリリアさんのことについて愚痴っていましたもの。

今までよく我慢できた方だと思いますわ。

「でも急にそんな態度が変われば皆ビックリしますわ。ちゃーんと1から説明して差し上げないと......」

「はぁ...それもそうか」

アルフレッド様は、はぁ...とため息をついた後に

「まず何を勘違いしてんのか知らねぇが、俺はお前みてぇな売女を好きになった覚えはねぇ」

そう言い放ちました。

するとリリアさんは

「............え?」

と間抜け面を晒しています。

正直、あれで自分のことを好いていると思っていたんでしたら勘違いも甚だしいですわ。

アルフレッド様は必死に耐えているつもりでしたが、私から見たら結構顔に出ていましたからね。

「あんなバカな噂を信じる奴の気が知れねぇわ」

バカな噂、とはアルフレッド様がリリアさんに恋しているけど、私が邪魔をしている、という噂ですわね。

「あら?そんなことを言ったら私のありもしない変な噂を信じた愚か者だって沢山いますわよ?」

そう言って微笑むと

「なんで.........」

とリリアさんが呟いています。

なんで、というのは、どのことについて指しているのかわかりませんね。

なので、私が話したいことを話しましょう。

「リリアさんがアルフレッド様と私のありもしない噂を流していたことくらい把握済みですし、証拠もありますわ」

微笑みながらそう言うと、リリアさんの肩がビクッと大きく震えました。

証拠まであるなら何かしらの罰があると思いますよね。

ですが

「リリアさんには不敬罪については何も罰を与えるつもりはありませんわ」

「え.........?」

「だって、そんな事しなくても違うことで処罰されることが決まりましたから」

私がそう言うと、リリアさんは何のことを言っているのかわからない、という様子です。

もちろんリリアさんの件だけでも処罰することは可能です。

でも、それじゃあ私が今まで苦しめられたのに面白くないじゃないですか。
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