まさかその程度で私の婚約者を奪ったつもりですか?

榎夜

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9話

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始業式の前の日、噂の隣国の王女が挨拶に来ました。

王女の名前は【ハニーア・タタルット】です。

見た目からして我儘そうな......いや、気が強そうな方ですわね。

隣にはハニーア様の母親も一緒に来ています。

アルフレッド様曰く、ハニーア様は第一側室の娘ならしいですが、第一側室の方は陛下のお気に入りならしく、とても甘やかされて育ったらしいですわ。

一方、王妃様とは政略結婚だったこともあって、仲が冷めているんだとか。

聞いて面白い話ではありませんわね。

「此度は急な留学の話を受け入れてくれてありがとうございます」

あら?

こういうのって、頭を下げるものよね?

それに、隣国よりこっちの方が大国ですから当然ですわ。

それなのに、母親だけが頭を下げて、受け入れてもらうハニーア様は頭を下げることなく、ずっと眺めているだけ。

おかしいですわ。

なんて思いながら見ていると

「それは構わんが、なぜ急に我が国に留学しようと思ったのか聞かせてもらいたい」

と陛下が聞きました。

確かに、それは私も気になりますわ。

すると少しの間の後に

「.......この国のことを色んな方から聞いて....」

うーん.....ここでも答えるのは母親の方ですか。

ハニーア様は何を思って留学したいなんて言ったんでしょう?

そう思っていると、急にハニーア様は今まで下を向いていたのに顔を上げて

「アルフレッド様っ!私、一目惚れしましたの!結婚してくださいませっ!」

「........は?」

あらまぁ、これは驚きですわ。

まさか我儘を押し通した理由がアルフレッド様だなんて。

陛下の方をチラッと横目で見ると怒っているのがわかります。

留学っていうのは、こっちにも色々と準備がありますからね。

そんなくだらないことで無理を言うなんてありえませんわ。

「.....ほう?留学の理由はそれか?」

「い、いえっ!それだけでは「そうですわっ!」」

「は、ハニーアっ!」

あらあら、母親は必死に庇ってあげようとしているのに、気付いていないんですかね?

「どうせ隠していてもすぐに気付かれますわ。だったら最初から言っておいたほうがいいでしょ?」

ハニーア様は、なぜか得意げに胸を張ってそう言いますが、私としては全く理解できませんわ。

陛下は、はぁ.....とため息をついてから

「息子にはもう婚約者がいる」

というと

「どうせ公爵家あたりの令嬢でしょ!そんなのより私の方が良いに決まっているわっ!」

どうせ、って。

王族の次に爵位は高いんですけどね?

まぁ、王女からすればその程度、という感じなんですかね。

「そう思うなら、自分が我が国の王妃に相応しいか示してみろ。儂はマリアンヌより王妃に相応しい者はいないと思っている」

「はぁ?マリアンヌっていうのはそこに立っている令嬢でしょ?」

「ハニーア!やめなさい!」

もうハニーア様の母親は顔色が真っ青ですわ。

なんだか可哀そうに見えてきます。

ハニーア様は、私のことを舐めるように見ると

「まぁ、美貌はもう私の方が勝ってるわよね」

まぁ!そのぺったんこの胸のどこにそんな自信があるんでしょう?

と言いたくなるのを我慢していると

「ありえん。俺はマリアンヌの方が好みだ」

......アルフレッド様、余計なことは言わないでくださいませ。
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