まさかその程度で私の婚約者を奪ったつもりですか?

榎夜

文字の大きさ
16 / 61

15話

しおりを挟む
「マリアンヌ、直接見たわけじゃない、というのはどういうことなんだ?」

と聞いてきたアルフレッド様に私は家から出る前にお父様からもらっておいた一枚の紙を渡しました。

その紙を見て

「あぁ、なるほど」

とアルフレッド様も納得したみたいです。

私が渡したのはとある過去の新聞です。

しかも隣国で販売されたもの、そう、ハニーア様のいた国ですね。

内容は私が他国との輸出入をしやすくする為に提案したことが可決されましたよ、という記事です。

記事には私の写真が載っていますが、隣にはもちろんアルフレッド様が写っています。

まぁ、この記事のせいで私も少し大変な目に遭いましたのよね。

なんて思いながら

「実は、これを撮ったカメラマンの腕が良かったのか、ハニーア様のお兄様に当たる人から求婚されたことがありましたの」

とその話をすると

「はぁ!?俺は聞いていないぞ!?」

やっぱり驚いていますわ。

ですが、そりゃあ聞いていないに決まっていますわよ。

「だって、陛下達には口止めしましたもの。知らなくて当然ですわ」

私がそう言うとアルフレッド様は呆然とした様子で固まってしまいました。

黙っていたのは、当時のアルフレッド様だったら隣国に乗り込んででも求婚を取り消させようとする、と満場一致で決まったことです。

まぁ、そんなことをしなくても元々断るつもりで話は進んでいたんですけどね。

でも、求婚されたのがハニーア様の兄だというのが引っかかるんですよね。

いや、考えすぎかもしれませんが.......。

そう思っていると

「一旦その話は置いておくとして、マリアンヌ、これから奴にはどんな対応をするべきだと思うか、意見を聞きたいんだ」

とアルフレッド様が急に真剣な顔をして言ってきました。

どんな対応、ですか......。

なんて聞かれてもすぐに思いつきませんが、少し気になることはありますね。

「そういえば、前回のリリアさんの時と、今回のハニーア様の時と、味方につく人って同じような人なんですよね」

ふと私がそう言うと、アルフレッド様は眉をひそめながら

「......というと?」

と聞いてきたので

「ほら、リリアさんの時に謹慎処分を言い渡された人たちがいるじゃないですか。ハニーア様を支持している人の中に紛れ込んでいましたわ」

それも1人だけ、とかならその人は相当懲りない人なんでしょう、くらいで終わるんですが何名も。

私が嫌われているのか、何かしら目的があってやっているのか.......。

どちらにしろ私を敵視していることは明らかですわね。

なので念のためアルフレッド様の耳にも入れておいた方が良いと思って言っただけですし、この話は終わりですわね。

「さて、ハニーア様ですね。とりあえず前回と同じようにしてはいかが?」

もう考えることも面倒なので、それでいいと思いますわ。

あのタイプだと勝手に自滅するでしょうし。

なんて軽い気持ちで言うと、アルフレッド様は思いっきり嫌そうな顔をして

「絶対に嫌だ」

「まぁ.....そこまで強く反対しなくてもいいですわよ」

そこまで嫌がられるようなことをするハニーア様も凄いですわよね。

ですが、そうなると何も打つ手はありませんわね。

そう思っているとアルフレッド様も同じ考えのようで

「......とにかく、どんな手を使ってもマリアンヌと婚約破棄するつもりはない、という意思を伝え続けるしかないか」

そう言いました。

「それくらいしか思いつきませんわね。下手なことをしたら国の問題になりますもの」

と私も頷くと

「はぁ.....厄介な相手だな」

大きなため息をついていますが、誰のせいだと思っているんでしょう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。

藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。 「……旦那様、何をしているのですか?」 その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。 そして妹は、 「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と… 旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。 信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

処理中です...