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264話
しおりを挟むフォルン様とギール様を先頭に、私達3人は上に警戒しながら階段を上り始めましたわ。
私の感覚が正しければここは地下の6階。
上に到着するまでの間に、どこかへ抜ける道はない.......とのことでしたわ。
まぁ、つまりは一方通行だということですわね。
なので、上から誰かが下りてくると、降りてきた人によっては終わりということです。
例えばフェルマー様、とかですわ。
まぁ、結局はここから抜け出したことがバレたら終わりなので、ここですれ違う、ということは抜け出すタイミングを間違えた、ということですわよね。
そう思いながら、一番先頭を歩くフォルン様に
「フェルマー様は本当に王宮に向かったんですのよね?」
と尋ねましたわ。
すると
「はい、家を出てから10分は様子を見ました。それでも帰ってこない、ということは大丈夫だと思います」
しっかりと前を向いているので表情はわかりませんが、きっと真剣な顔をしていると思いますわ。
まぁ、私の推測でしかありませんけど。
流石にこの状況で笑顔だったら
「あー......流石フェルマー様の息子さんですわね」
という感想になってしまいますわよね。
なんて思いながらひたすら階段を上がっていると、私の少し前を歩くギール様が
「あの......僕たちが逃げた後、母上は.......」
と心配そうな顔をしてフォルン様に尋ねましたわ。
当然ですわよね。
.....って、馬車には私とギール様、フォルン様、夫人の4人で乗ると思っていましたが違いますの!?
え?基本的には馬車は4人乗りですわよね?
なんて思っていると、フォルン様が馬車のことよりも気になることを呟いたのが聞こえてきましたわ。
「母上は俺が逃がす。ただ、それにはシルムのことをどうにかしにないといけないが.......」
そう言ったとき、フォルン様が斜めを向いていたので少しだけ顔が見えましたが、残念そうな、怒っているような、とても複雑な表情をしていましたわ。
これはギール様に言ったことだ、とはわかっていましたが、本当に気になったので
「シルム、ですか?」
と尋ねてしまいましたわよ。
だって、急に聞いたこともない名前?が出てきましたし、それに加えてシルム?というのは一体何者で、どうにかしないといけない、というのはどういうことなのか、全く分かっていませんもの。
一方ギール様はフォルン様の言葉に
「まぁ、そうですよね......」
と苦笑しているので意味を理解しているみたいですが......。
いや、ギール様が知っているのは当然の話ですわね。
シルム、というのはお屋敷の執事か何かでしょうか?
なんて思っていると、フォルン様が苦虫を噛み潰したような顔で
「あー.....シルムと言うのはこの家の次男のことです。父上に相当気に入ってもらっているので、俺たちの邪魔をしてくる可能性が高いですね」
そう言うと、じっと階段の上を見つめましたわ。
まるでこの先にシルム......いや、シルム様がいるとでも言いたそうに。
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