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春休み

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    春休みに入る前に、商業ギルドの方から呼び出しがあった。
    熱交換の煉瓦、町中の主要道の煉瓦と交換するそうだ。
「素晴らしい魔道具だと領主様も仰られて、是非とも量産して欲しいそうだ…しかしメイさん一人ではとても手が足りないでしょうから、この町中の錬金術師にも手伝って貰う事になりました」

    じゃあ、来年には雪のない道を歩けるって訳だ。
「勿論、我々も起動術式の説明はさせて頂きますが、メイさんにも出来るだけ参加して頂きたい」
「ええと…冒険者ギルドの方にも登録しているので、そっちも仕事しないと失効になっちゃうし…春休みはやりたい事もあって」

「今はまだ、材料を仕入れている段階なので、夏前には本格的に始めたいと思っています。夏休みは長いですし、是非お願いしますよ。メイさんの作品でもあるので」
    それもそうか…まあ、仕方ないかな。作者としての責任はあるよね。それに、アルマのお姉さんにも会えそうだ。

    オージェがいなかったら完成しなかった物だけど、せめておつまみ系の料理をたくさん出荷しよう。

    春休みは短いから、1日だって無駄には出来ないもんね。

「明日から春休みだが、武術訓練は怠らないように。明けたら、町の外での実戦訓練もあるからな!遊んでいると後悔するぞ」
    ブーイングの嵐だ。でも町の外壁の側ならそんなに強い魔物はいないよね?
    

    亜空間移動でダンジョンの側に出る。
    まだ冒険者達は来ていないみたいだから、綿入りの布団を作る為にもモコモコを倒さないと。
(ボク、ジンギスカン好きー!)
(ドロップアイテムは燃やさないように気をつけてね!)

    学校のベッドには毛皮が敷いてあるだけだったから、冬は寒かった。もふもふのシュガーがいなかったら、絶対風邪を引いていたと思う。
    布団を作るんだ。
    
    14階層で、シャドーバットを倒しながら、階段を探す。
    みんなのマントは出来たから、皮膜は今回は売ろう。
    よし、階段を見つけた。次はどんな美味しい物(魔物)が出るかな?

(メイが食べ物を探すのは、ボク達の為だよね?)
(そのはずだけど…自信ないな)
(メイは美味しい物を食べるのが好きなのにゃ)
(その割には少ししか食べないし、身体も大きくならないな)
(もう!聞こえてるんだからね!ていうか、人族は大きくなるのに時間がかかるんだよ)

    私と従魔達は、基本オープンで喋ってるけど、本来は1対1が基本のようだ。

    15階層。ここも青空が見える。5のつく階層は、そういう所なのかな。
    みんな気配は探っていたはずだけど、突然生えてきたタケノコに擦り傷を作っている。
「大丈夫?」
(大した事はないにゃ…でも罠感知には反応してないにゃ)
(魔化した植物だからだろう)

    そういう時は、魔力感知だ。スパッと切ると、普通のタケノコが採れた。
    まあ、ラスカームの加護もあるから、私に不意打ちは殆ど効かないだろう。

    手間取っていた二人も、すぐにコツを覚えた。
    そこに飛んで来たのは、イエロービー。かなり大きな蜂で、フレイムの倍位の大きさがある。
    この蜂、賢い。フレイムにブレスで焼かれてからは、一定の距離を保っているし、剣筋も読まれている。

    網の形で放った蔓で絡め取り、とどめを刺すと、蜂蜜の小瓶を落とした!
    タケノコを避けつつ、蜂蜜を狙う。たまにキラキラした羽も落とすけど、数枚拾ってあとは放っておく。タケノコや蜂蜜の方が大切だもんね。
    壁の周囲は通路のようになっていて、壁はなく、木が壁のようになっている。

(山菜が生えているにゃ)
    確かに、季節関係なく無節操に生えてるけど、それに気を取られると、蜂に刺される。

    酷く痛いし、腫れるから毒を持っているのだろう。
    シュガーも魔法で毒を消せるので、うっかり毒を喰らっても安心だ。
    
    おお。山ワサビも生えてる。刺身に付けたいから、少し取っておこう。
「あれって…ゴーレム?」
    岩だと思ってたら、立ち上がって攻撃してきた。
(シュガー!関節を狙ってソニックウエーブ!)
    私も衝撃弾を放つ。やはり弱点は関節か。

    崩れた所には何も残らないけど、塞いでいた所には、階段があった。
(下に行くのー?)
    魔法石には触っておきたいけど、見当たらない。
    最終階層には転移の為の魔法石がないとか?
(ちょっと覗く位はしようか)

    罠だ!
    階段からみんなが降りた途端、上からシャッターが…石の扉が落ちてきて、中にはたくさんの魔物がいた。
(待って!数を減らす!)
    ゴブリン等の弱い魔物もいるし、それなら動きやすいようにするべきだ。

    広域範囲魔法。絶対零度のニブルヘイム。
    真っ白な霧が包んだ後は、氷の彫像が残る。
    さすがに全滅はしなかった。オークのような皮下脂肪の厚い奴とか、角の生えた鬼のような魔物が残った。
    
    鑑定     オーガ    鬼系魔物で、切り傷は再生する。防具にすると、最強の再生防具になる

    でも、ダンジョンだから素材は残らないだろうな。
    とにかく倒さないと。ランス達が、オークは倒したけど、オーガで苦戦してる。

    傷は再生しても、脳はそうはいかないよね。
    貫通するレーザービームをイメージして、脳天を撃ち抜く。
    銃があれば格好良かったのに。

    ステージクリア、かな?
    宝箱が残ったので、近寄る。因みに他のドロップアイテムは出なかった。
    さて、中身は何かな?

    弓だ。しかも魔道具で、属性を付けた魔力を流すと、その属性の矢が作られる。
    私のパーティーはほぼ全員が前衛で、私がたまに魔法担当になる。フレイムは遊撃って事になるのかな?

    試しに弓を引いてみたけど、腕が短いので、射る事は出来なかった。
「ランス、ちょっとやってみて?」
    裸…まあいいや。今は目を瞑ろう。
「どうすればいいのだ?」
「魔力を込めて、こんな風に糸を…私にはこれ以上は無理だけど」
    雷の矢が飛んで行った。
「どうなっているのだ?魔力が吸われたと思ったら、矢が」
「魔道具だよ」

    ランスが戻ったので、頭を撫でてやる。
    そのままの姿は恥ずかしいからね!

    階段の前の石壁も、いつの間にか消えていた。そうして、この部屋にはそれ以上の仕掛けはないみたいだ。
    
    とりあえず15階層に戻り、辺りを見回すと、岩に擬態しているゴーレムが見えた。下に行く階段が隠れているのか…それともまた罠部屋か。

    でも、今日は疲れた。部屋全部を凍らせるので結構魔力を使った。それに、折角手に入れた蜂蜜を味わいたい。
(戻った方がいいにゃ)
(うん。何度もここには来る事になると思うし)

    ホットケーキにフレンチトースト、蜂蜜クッキーもいいな。
    ハーブティーに入れてもいいよね!えへへ…
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