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船旅 1

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    大陸の南端まで来た。ここから船で、更に南へ。

    漁船や貿易船が並ぶ港は活気に溢れていて、水揚げされた魚も売られている。
    怖い顔の魚。これはライギョかな?…サンダーフィッシュだ。口から覗く歯は鋭い。

    おお。フィレオフィッシュもある!まだ釣った事はなかったけど、やっぱりちゃんと生息しているんだね!

「メイ、先に船に乗れるか確認してからの方がいいんじゃないか?」
    確かに、買い物は後でも出来るよね。
    再びお子様だっこされての移動。そろそろ止めて欲しいんだけどな…

    冒険者はランクに応じて割引があるのか…その代わり、有事の際には戦わなきゃならない。倒した魔物は冒険者の物になるから、いいんじゃないかな?

    この辺は気温が高いから、雪も降らないみたいだ。ここから更に南だから、きっともっと暑いんだろうな…
    船は2日後に出て、更に着くまでに5日はかかるようだ。

「ボク達の分の船代は必要なかったんじゃないの?」
「どうせなら、みんなで船旅を楽しみたいじゃん?だからいいの。メタルはしょうがないけどね」
    いや、髪形や服装を変えればいけたかも?

(メタル、船に乗ってみたい?)
(いえ。強力な魔物が出現した際には大人のシュガーを想像して、変化してみます。…祝福、ありがとうございます)

    正直、どうやって祝福を与えられたのか、私自身良く分かっていない。加護として与えられればきっとそっちの方が強力なんだろうけど、それで妄想が付いたりしたら嫌だな…森羅万象も固有スキルなんだから、それを付けられればいいのに…はぁ。

    アスール行きの船には前日から乗り込んだ。これは早朝出発の為だ。早起きには自信あるけど、他のみんなはそうでもないからね。

    持ち込める荷物は基本、木箱一つだ。それ以上になると、別料金。だけど収納庫があるから箱も要らない…料金は変わらないので、港で買った乾物を入れた。

    船の動力は、長距離移動しなければならない為、魔晶石が使われている。ただ、最初は帆に風魔法を当ててそれを動力にする。
    鳥獣人は背に生えた翼で飛ぶ事が出来て、風魔法も得意だそうで、獣人には珍しい魔力の多い種族。足も、鉤爪になっていて、ポールの先に立ったり出来る。

    凄いな…あんな小さい子供も働いているんだ。

    風魔法を帆にいっぱい受けて、船が動き出す。
    う…これは、船酔い?頭痛い…
「メイ、亜空間に入るの」
    クラクラする…あ、朝ご飯が…
    ランスがメイを抱きあげ、急ぎ船室に戻る。

    亜空間に入ると、不快感はましになった。それに、フレイムが癒しの聖域を使ってくれた。
    他のみんなは状態異常無効だけど、私は耐性。それにこんな揺れは、初めての経験だ。

「メイ、大丈夫にゃ?」
「あはは…情けないね。少し位の毒は効かないのに、船の揺れに負けるなんて」
    それに折角の船旅なのに…

(私が主の姿になりましょうか?感覚共有も、余計な自我がない分、容易に出来るかと)
「いいの?…なら、少し身代わりになって」

    魔力が同じだからこそ出来る、多重思考の分体を、メタルに共有させる。
「うにゃっ?!…メイが二人にゃ?!」
「惑わされるな。意識の分体を創り出すとは…本当に主には驚かせられるな」
「船旅を代わりに楽しんでね、メタル…ん?メタルも今は私の一部なのか」

    思い付いて、出来そうだとやってみたら、本当に出来ちゃった。
    感覚が私と共有してるから、船酔いもするかと思ったけど、大丈夫みたいだ。潮風まではっきりと感じられる。

    眷属達も、同じパスが2ヵ所から感じられるからか、頭では分かっていても、ちょっと混乱しているみたいだ。
「魔法も使えたりするにゃ?」
「うん」
    潮風でベタついた髪にクリーンをかける。
「まるで、エルド殿とヤブランの関係のようだな」
「全然違うよー?意識だけだもん」
    私の意識は今、森羅万象の中にある。
    新たな固有スキル、森羅万象も随分使いこなせるようになったからこそ出来たのかな。

    ご飯は流石に食べられないから、船室に持ち帰って貰い、亜空間内で食べる。

    食休みしてから外に出てみた。…少しは慣れたかな?状態異常耐性のレベルが上がったのか、頭痛はあるけど、そこまでムカムカしない。
「でも、まだ顔色が悪いにゃ?」
「うん…でも、私が船に乗りたかったんだから、頑張るよ」

    潮風に当たりながら散歩していたら、辺りが騒がしくなってきた。船員達は慌てているし、冒険者にも召集がかかる。
「あんた達も冒険者だったよな?カジキが出たんだ!討伐を手伝ってくれ!」
    か、カジキ?!
    急いで船尾から船頭に走る。
「主!落ち着くのだ!」
「美味しい獲物なのだな」

    正しくカジキだ。でも、私の知ってるカジキより凶悪だな。角で船を突いて壊してくる。ジャンプして人も狙ってくる。

    慣性制御の魔法で軌道をずらし、暴れるカジキに魔法でダメージを与える。
    最初は私を守ろうとしていたヤブランも、落ちてきたカジキに大剣を降り下ろす。

    最初は戸惑っていた冒険者達も、それぞれの方法でとどめを刺していく。

    揺れている船上での戦いは少し怖かったけど、どう調理してやろうかと考えると、逆に楽しくなった。刺身、ソテー…えへへ。

    船員達がカジキを回収していたけど、倒した人に権利があるよね?収納庫を持っていない人には無理だろうけど。

    その日の夕食は、カジキのカツだった。うん。カツも美味しいね!

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