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マジックバッグと、都会
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ワーウルフの皮で作ったバッグを海人君が持って来た。
「あ、ずるい。素材は親に貰ったんだね?」
「先行投資って奴だよ。ウルフの皮だとそんなにいい付与もつかないだろ?」
「まあね…魔石も、これなら充分かな?」
「時間停止は付けられるか?」
「うーん…今は無理かな。記憶はあっても技術が追い付いていないから。時間遅延と空間拡張、重量軽減とクリーンでいいかな?」
「おう。充分だ。美優なら楽勝で色々付けられると思ってたけど」
「今の私は藤林美優だからね。でも、1からやるよりは有利だと思うよ?やり方が分かるだけでも」
「そりゃそうだ」
昔の仲間だからと注意せずに気軽に付与をつけてしまった事、今にして思えば迂闊だったと思う。
後にそれが仕事になるとは思わなかった。
作者の名前は秘匿してくれるけど、今までマジックバッグはダンジョンの宝箱から出るのに頼るしかなかったのもあって、手軽なウルフバッグは空間拡張のみで10万円。
付与を多くして、素材を変えるとそれに応じてお値段も高くなる仕組み。バッグと魔石はショップ本社から既製品が送られてきて、私は付与をつけるだけ…それでも飛ぶようにバッグは売れたようだ。
それこそ、真面目に確定申告してたら、私は幼稚園児にして扶養から外れてしまうだろう。
でも、個人情報は秘匿されているし、今の所冒険者としての収入に税金はかかってない。魔石から得られるエネルギー量から換算するとぼったくりとは言われているけど。
付与をつけられるのは、私以外いないらしくて、西日本の系列外ショップでは、アドベンチャーショップから仕入れているみたいで、割高になっている。
それでも中級以上の冒険者には欲しい物らしく、予約待ちでなければ買えない状況だ。
お金は手に入るけど、流石に通帳も印鑑もカードも親が預かっている。
魔法スキルを持つ人や、錬金術、あるいは鍛冶スキルを持つ人に技術を伝授したいとは思っているけど、結局魔法と魔術の違いからか、教えても覚えられそうな人はいない。
お陰で冒険に行く時間が削られてしまった。
流石に会社の人も私が小さ過ぎるから仕事を強制する事も出来ない。
私も無理ない程度にやるつもりだ。
と、いう事になるがもう少し先の話だ。
海人君にマジックバッグを作ってあげたのは、軽い親切心から。前世ではマジックバッグもそこまで珍しい物でなかったから。
夏休みはダンジョンばかりじゃない。近くの川遊びや、家族とプール…は、今年は無理かな。お父さんと2人だけはちょっと嫌だし。
夏休みはマジックバッグを作りながら、ダンジョンに潜る。
だけど、折角ネズミーランドの近くのダンジョンにもゲートを開いたのに、全然行けてない。
「という訳で、ダンジョンは絶対許可が降りないから、東京に行きたい!海人君、案内して!」
「…何がという訳なんだよ…東京のどこ?」
「メイドさんのお店!」
「あー。アキバな。千葉から?」
「うっ…ごめんなさい」
「いいよ。というか、名前詐欺だよな。珍しくもないけど」
ネズミーランド近くの駅から電車で1本。だけどそこから乗り換えて行くらしい。
人がいっぱい過ぎて驚いた!町中の人を集めてもこんなにいないと思う位、電車に詰まってる。
ふらふらになりながら駅を出て、やっぱり人が多くて驚いた。
「大丈夫?」
「なんか…人酔い?」
道幅も広い!というか、地面が全てアスファルトだ。
「怖い所だね…」
私、ここで生活して行ける自信ない。
「お帰りなさいませ!お坊っちゃま、お嬢様!」
イメージとはちょっと違う、ビルの一角にあるお店に入った。メイドさん…も、私のイメージとは違うかな…コスプレみたい?
お腹も空いていたし、オムライスを頼んだ。
萌え萌えきゅん…うん。こんな感じなのか。
私の我が儘で誘ったので、電車代も食事代も全て私が出した。
「満足したか?」
「うん…何か思ってたのとは違う感じ?あと、新宿ってどこにあるの?」
「え…いや、ダンジョンは止めておけよ?それこそ怒られるぞ」
「入らないけど、ゲートだけ!お願い!」
「…まあ…それなら。知ってると思うけど、駅がダンジョンに飲み込まれたから、隣駅から少し歩くからな」
ネズミーランドの時も思ったけど、すごく大勢の人達がダンジョンに向かっていく姿は、ダンジョンに出勤するみたい。
「ダンジョンに入っても、経験値難民の奴とかが大勢でポップした瞬間のネズミを叩くんだ。魔物に恨みがある奴もいるかもしれないけど、怖い光景だ」
それは、どっちが魔物か分からないね。
新宿ダンジョンは、出来た瞬間に大勢の人が飲み込まれた。当時はダンジョンがどういう物か分かっておらず、火器も用いられて、ダンジョンに対する攻撃も行われた。
結果はスタンピードの発生と、より多くの犠牲者を出しただけだった。
多くの会社も移転を余儀なくされ、当時は大きな混乱を巻き起こした。
世界的にも幾つものダンジョンが出来て、今のようにただ攻略を目的として入るような環境になるまでに多くの時間も要した。
前世ではダンジョンはあって当たり前だったし、新たに出来ても喜ばれこそすれ、混乱はなかった。
「それじゃなくても都会は怖いのに…やっぱり私には田舎が合っているかも」
「欲を言えばコンビニ位、近くに欲しかったな」
「あるじゃん!2件も!」
国道と県道の交差する場所に、町で2件だけのコンビニも一応あるのだ。ファーストフード店も、ピザの配達をしてくれるお店もないけど、車があるんだから、買いに行けばいい。
「あ、ずるい。素材は親に貰ったんだね?」
「先行投資って奴だよ。ウルフの皮だとそんなにいい付与もつかないだろ?」
「まあね…魔石も、これなら充分かな?」
「時間停止は付けられるか?」
「うーん…今は無理かな。記憶はあっても技術が追い付いていないから。時間遅延と空間拡張、重量軽減とクリーンでいいかな?」
「おう。充分だ。美優なら楽勝で色々付けられると思ってたけど」
「今の私は藤林美優だからね。でも、1からやるよりは有利だと思うよ?やり方が分かるだけでも」
「そりゃそうだ」
昔の仲間だからと注意せずに気軽に付与をつけてしまった事、今にして思えば迂闊だったと思う。
後にそれが仕事になるとは思わなかった。
作者の名前は秘匿してくれるけど、今までマジックバッグはダンジョンの宝箱から出るのに頼るしかなかったのもあって、手軽なウルフバッグは空間拡張のみで10万円。
付与を多くして、素材を変えるとそれに応じてお値段も高くなる仕組み。バッグと魔石はショップ本社から既製品が送られてきて、私は付与をつけるだけ…それでも飛ぶようにバッグは売れたようだ。
それこそ、真面目に確定申告してたら、私は幼稚園児にして扶養から外れてしまうだろう。
でも、個人情報は秘匿されているし、今の所冒険者としての収入に税金はかかってない。魔石から得られるエネルギー量から換算するとぼったくりとは言われているけど。
付与をつけられるのは、私以外いないらしくて、西日本の系列外ショップでは、アドベンチャーショップから仕入れているみたいで、割高になっている。
それでも中級以上の冒険者には欲しい物らしく、予約待ちでなければ買えない状況だ。
お金は手に入るけど、流石に通帳も印鑑もカードも親が預かっている。
魔法スキルを持つ人や、錬金術、あるいは鍛冶スキルを持つ人に技術を伝授したいとは思っているけど、結局魔法と魔術の違いからか、教えても覚えられそうな人はいない。
お陰で冒険に行く時間が削られてしまった。
流石に会社の人も私が小さ過ぎるから仕事を強制する事も出来ない。
私も無理ない程度にやるつもりだ。
と、いう事になるがもう少し先の話だ。
海人君にマジックバッグを作ってあげたのは、軽い親切心から。前世ではマジックバッグもそこまで珍しい物でなかったから。
夏休みはダンジョンばかりじゃない。近くの川遊びや、家族とプール…は、今年は無理かな。お父さんと2人だけはちょっと嫌だし。
夏休みはマジックバッグを作りながら、ダンジョンに潜る。
だけど、折角ネズミーランドの近くのダンジョンにもゲートを開いたのに、全然行けてない。
「という訳で、ダンジョンは絶対許可が降りないから、東京に行きたい!海人君、案内して!」
「…何がという訳なんだよ…東京のどこ?」
「メイドさんのお店!」
「あー。アキバな。千葉から?」
「うっ…ごめんなさい」
「いいよ。というか、名前詐欺だよな。珍しくもないけど」
ネズミーランド近くの駅から電車で1本。だけどそこから乗り換えて行くらしい。
人がいっぱい過ぎて驚いた!町中の人を集めてもこんなにいないと思う位、電車に詰まってる。
ふらふらになりながら駅を出て、やっぱり人が多くて驚いた。
「大丈夫?」
「なんか…人酔い?」
道幅も広い!というか、地面が全てアスファルトだ。
「怖い所だね…」
私、ここで生活して行ける自信ない。
「お帰りなさいませ!お坊っちゃま、お嬢様!」
イメージとはちょっと違う、ビルの一角にあるお店に入った。メイドさん…も、私のイメージとは違うかな…コスプレみたい?
お腹も空いていたし、オムライスを頼んだ。
萌え萌えきゅん…うん。こんな感じなのか。
私の我が儘で誘ったので、電車代も食事代も全て私が出した。
「満足したか?」
「うん…何か思ってたのとは違う感じ?あと、新宿ってどこにあるの?」
「え…いや、ダンジョンは止めておけよ?それこそ怒られるぞ」
「入らないけど、ゲートだけ!お願い!」
「…まあ…それなら。知ってると思うけど、駅がダンジョンに飲み込まれたから、隣駅から少し歩くからな」
ネズミーランドの時も思ったけど、すごく大勢の人達がダンジョンに向かっていく姿は、ダンジョンに出勤するみたい。
「ダンジョンに入っても、経験値難民の奴とかが大勢でポップした瞬間のネズミを叩くんだ。魔物に恨みがある奴もいるかもしれないけど、怖い光景だ」
それは、どっちが魔物か分からないね。
新宿ダンジョンは、出来た瞬間に大勢の人が飲み込まれた。当時はダンジョンがどういう物か分かっておらず、火器も用いられて、ダンジョンに対する攻撃も行われた。
結果はスタンピードの発生と、より多くの犠牲者を出しただけだった。
多くの会社も移転を余儀なくされ、当時は大きな混乱を巻き起こした。
世界的にも幾つものダンジョンが出来て、今のようにただ攻略を目的として入るような環境になるまでに多くの時間も要した。
前世ではダンジョンはあって当たり前だったし、新たに出来ても喜ばれこそすれ、混乱はなかった。
「それじゃなくても都会は怖いのに…やっぱり私には田舎が合っているかも」
「欲を言えばコンビニ位、近くに欲しかったな」
「あるじゃん!2件も!」
国道と県道の交差する場所に、町で2件だけのコンビニも一応あるのだ。ファーストフード店も、ピザの配達をしてくれるお店もないけど、車があるんだから、買いに行けばいい。
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