貴族の四男に生まれて居場所がないのでゴブリンの村に移住して村長をします

佐藤スバル

文字の大きさ
41 / 42
第四章

貴族部隊壊滅

しおりを挟む
 グリプニス王国軍がエルダーミストの森に侵攻を開始する前から、ゲッターたちは相手を監視下に置いていた。
 森に火を付けた王子直属部隊の強さはさすがと思わされたが、貴族部隊の弱さにも驚かされていた。
 何の警戒もせずに木を切り始めたのには、さすがに頭にきたのですぐに邪魔をした。
 その後は警戒しながら木を切るようになったが、そもそも協力し合う気がないのか、全然連携を取る様子が見られなかった。
 もっと上手く見張りを置けば、より効率よく木を切れるだろうにと、監視をする者たちがみんな言っていた。
 
 そのうちに50人ほどの部隊が単独で森に入ってきた。
 多少冒険者としての経験はあるようだったが、エルダーミストの森は初めてのようであっさり罠にかかった。
 さすがに50人以上全員をひっかける罠は作れなかったので、なんとか罠を逃れた兵が何人かいたが「私の初陣をこんなことで汚されてなるものか」と元気よく騒いでいた兵をカプルが倒したら他の兵も静かになった。
 このうるさい兵が貴族と聞いて、エルダーミスト連合の一同は貴族部隊に連れてこられた兵隊たちがかわいそうになったのであった。
 
 そうこうしていると王子直属部隊がモンスターたちの縄張りに入ったようで、イビルベアーたちの襲撃にあったとの報告が入った。
 ただ王子直属部隊は被害を広げることなく、秩序を保って退却したらしく、余計な抵抗がなかったことから森のモンスターたちの被害も少なかったのでいい結果に終わったと言えた。

「これで全軍退却してくれ」とゲッターは祈ったがその願いは通じなかったようで数日後貴族部隊は進軍を開始した。

 前線基地であるアトラ村には、エルダーミスト連合の精鋭たちが集まり、ゲッターからの号令を待っている状況であった。
 
 ゲッターは出撃前にカプルを執務室に呼ぶと一振りの剣を渡した。
「これは?」とカプルが尋ねるとなぜかゲッターは照れ臭そうにして「カプルが私よりも強くなったお祝いだ」と言った。
「ヴェルデリオンからミスリルの鉱石を貰えたんだ。量が足りなくて完全ミスリル製ではないけど、鉄との合金にしたから手入れはこの方が楽だと思う。ミスリルは魔力との親和性が高いから魔力が高いカプルとは相性のいい武器になると思うよ」とゲッターが説明するとカプルは剣を構えた。
 カプルが剣に魔力を込めると、剣は薄く光を放った。
「なんかすごく手に馴染む感じがする」とカプルが言ったのでゲッターはうれしくなり「それは良かった」と笑顔で答えた。
「ゲッター。俺この剣を大事にするよ」とカプルが言うので「カプル。この剣は相手を倒すためではなく、みんなを守るため、エルダーミストの守護者としての剣なんだ。それを忘れないでくれ」とゲッターは頼んだ。
 カプルは力強く「わかったよ。俺がエルダーミストを守る!」と宣言した。

 先に捕虜としたカリスト子爵によると貴族部隊をまとめているのはダスクレイヴ男爵という人物で、他に3人の有力な貴族が従っているとのことだった。
 まずはそのまとめている貴族たちを見極めなくてはならなかったがすぐに見つかった。
 貴族たちは森の中だと言うのに馬で移動していたからである。
 セリクス子爵に限っては馬に乗れないからか輿を用意してそれに乗っていた。

 ゲッターは「森を歩くのがそんなに嫌なら攻めてこなくていいのに」と思わずにいられなかった。

 貴族部隊を森に引き込むことができたし、主力の位置もわかったので、ゲッターは攻撃することにした。

 ゼルカンの部隊を攻撃した時と同じように、弓と煙を使い敵の部隊を罠の仕掛けてある場所へ誘導していく。
 その際に敵の主力だけ孤立するようにした。

 ゼルカンの部隊はこの作戦でも、人数に差があったためかなかなか瓦解しなかったが、貴族部隊はあっさり混乱に陥って敗走を始めた。
 しかも狙い通りに罠の仕掛けてある場所へ逃げてくれるので、雪だるま式に怪我人を増やしていった。

 ダスクレイヴ男爵たちのいる主力部隊だけはなんとか瓦解だけはせずにいたが、ゲッターたちの作戦通りにエルダーミスト連合の主力部隊の前に誘き出されていた。

 カプルはダスクレイヴ男爵を見つけると「ダスクレイヴ男爵だな!潔く降参しろ!」と叫んだ。
 カプルの姿を見てダスクレイヴ以外の貴族たちが慌てて逃げていく。
 すでに半包囲されているので彼らもすぐに捕まるだろう。
 ダスクレイヴ男爵も逃げたいのだろうが踏み止まると、護衛の兵士に命じてカプルを攻撃してきた。
 いずれも手練の兵士だろうが、今のカプルの敵ではなかった。剣を撃ち合うことすらなく一撃で切り伏せていく。カプルのすぐ後ろには彼の背を守るようにアッグが目を光らせる。
 2人のゴブリンであったがその見事な連携から一匹の強大なモンスターのようにダスクレイヴには感じられた。

 護衛の兵士が全て倒されもはや自分の周囲には誰もいないことに気づくと、ダスクレイヴは「私と一騎討ちをしろ!そして私が勝ったならば私だけは無事に逃げられることを保障しろ!」とカプルに叫んだ。
 カプルには何のメリットもない一方的な要求であったが「わかった」と言ってカプルはこの一騎討ちを受けてアッグを下がらせた。
 カプルは万が一にも負けるつもりはなかったが、ダスクレイヴはまだまだツキはあると感じていた。
 今目の前で護衛の兵士を全て倒されたにも関わらず、ダスクレイヴは自分が騎兵のため馬上から攻撃できること、ここまで来ても相手がゴブリンであるという侮りから、自分が勝てると思ってしまった。
 ダスクレイヴは持っていた槍を構えると「喰らえ!」と叫びながら馬を突進させた。
 森の中の道悪な環境で、振り落とされることなく馬で突進したのは見事であったが、それだけでカプルに勝てると思うのは些か甘過ぎた。
 カプルはダスクレイヴの槍を避けるとそのまま掴み、槍ごとダスクレイヴを振り回して馬上から地面に叩き付けた。
 カプルは殺すつもりではなかったので、柔らかい土の上に落としたが、ダスクレイヴはその一撃で気絶していた。

「ダスクレイヴ男爵が敵の手に落ちたぞ!」
 貴族部隊にその情報はあっという間に広まった。
 貴族部隊の後方支援をしていた王子直属部隊まで届くとヴォルガルは撤退の準備を始めた。
 残った部隊をまとめて王都に帰る。それがヴォルガルの今回残された最後の任務であった。


             ⭐️⭐️⭐️

❤️応援されるととてもうれしいのでよかったらお願いします。
励ましのコメントもお待ちしてます。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...