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婚約破棄された令嬢が、「仕返しに元婚約者の彼女を寝取る」と言っておりますが、いやどうやって?
4.友達になった!
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「え?」
(えぇ、次は何が始まったんだ?)
流れるようにヴァンナ嬢が語り出す。
「先ほどの巧みな氷魔法で、確信しました! 数か月前、私が街で絡まれた時、颯爽と助けてくださった方がおりました。その方はガルディ伯爵家の馬車に乗り込まれたので、こちらに縁ある方とずっと探していたのです。それでジュリオ様と出会いまして……」
続く話は、こうだった。
恩人を探すためガルディ家に来たら、門の前でジュリオ殿と出会ったこと。
以降「捜索に協力する」との約束で、何度か彼と会ううちに、"今日のパーティーではサプライズがある"と誘われたという。
「お前が喜ぶ話だから着飾って来い」と言われたので、"ついに探す相手が見つかったのだ"と期待していたら、婚約破棄が始まり、驚きのあまりに言葉も出なかったらしい。
(それであの時、狼狽えていたのか)
婚約破棄を告げるジュリオ殿の隣で、所在なげに困っていたヴァンナ嬢を思い出す。
カロリーナがぽんと手を打った。
「ああ! どこかで見たと思ったら、雑貨屋の前で会った!」
「そうです。御礼を申し上げたくて、ずっとお探ししておりました」
声を弾ませるヴァンナ嬢。
「じゃあ、ジュリオ様が"結婚する"って言った話は……」
「万に一つもありません! プロポーズもされてませんし、そんな関係じゃないし、そもそも好きじゃありませんもの!」
「なっ、ヴァンナお前! "人探し"は俺に会いたいがための作り話じゃなかったのか!?」
(……わぁ~~)
これは探してもなかったな。そして自惚れが痛すぎる。
ジュリオ殿を見る目が、ひときわ残念なものになってしまうのも仕方ないと思う。
カロリーナに至っては、ゴミ虫以下の目で、元婚約者を眺めている。
つまりは全て、ジュリオ殿の頭の中だけで進行していた恋愛劇だったらしい。
カロリーナを見つめるヴァンナ嬢に、嘘は感じない。瞳いっぱいに憧憬の念を乗せている。
「勘違い男、サイっテぇ……」
カロリーナの声は氷点下だ。
「あの……、カロリーナ伯爵令嬢……、私のこと怒っておられますよね? だって私のせいで婚約が……」
「あなたは巻き込まれただけなんでしょう? いいのよ、私、せいせいしてるし。彼は話を聞かないから、大変だったわね」
涙目で尋ねたヴァンナ嬢に、カロリーナが理解を示す。そして思いついたように提案した。
「そうだわ。私たち友達になりませんこと?」
「ええっ、いいんですか? そんな破格な待遇! もちろん喜んで、お友達になりたいです!」
「良かったわ。これからぜひ交流を深めましょうね。ジュリオ様抜きで」
勝ち誇った目をジュリオ殿に向けながら言うカロリーナ。
僕に向けてはこっそりと、"勝利のサイン"を出してくる。魔物討伐で使う、計画がうまく行った時の手信号だ。
(ああ、はい。"寝取ってやる"って言ってた件ね)
まったくちっとも寝取れてないけど、カロリーナが満足したなら良しとしよう。
蚊帳の外にされたジュリオ殿が、顔を真っ赤にして怒鳴り出した。
「ま、待て! なんだそれは! そうか貴様ら、グルだったんだな、俺を笑いものにしようと企んで騒ぎを起こしたんだ!」
「何を根拠に」
「そうですよ。言い掛かりも甚だしいです」
手を取り合っているカロリーナとヴァンナ嬢は素っ気ない。
僕はそっとジュリオ殿に耳打ちした。
「ジュリオ殿、それよりも伯爵夫妻が戻られてからのことを、心配したほうが良いのではありませんか? 会場は惨憺たる有り様。家長が決めた婚約は独断で破棄。それら全ての原因が、ジュリオ殿の浮気にあるようですが」
おっと、つい低すぎる声が出た。
真っ赤だった彼の顔が、さっと青く変わる。
やっと状況に気付いたか。
その後、ガクガクと震えるばかりで動かなくなったジュリオ殿を後に、会場を出た僕は、カロリーナとヴァンナ嬢を送り届けたのだった。
(えぇ、次は何が始まったんだ?)
流れるようにヴァンナ嬢が語り出す。
「先ほどの巧みな氷魔法で、確信しました! 数か月前、私が街で絡まれた時、颯爽と助けてくださった方がおりました。その方はガルディ伯爵家の馬車に乗り込まれたので、こちらに縁ある方とずっと探していたのです。それでジュリオ様と出会いまして……」
続く話は、こうだった。
恩人を探すためガルディ家に来たら、門の前でジュリオ殿と出会ったこと。
以降「捜索に協力する」との約束で、何度か彼と会ううちに、"今日のパーティーではサプライズがある"と誘われたという。
「お前が喜ぶ話だから着飾って来い」と言われたので、"ついに探す相手が見つかったのだ"と期待していたら、婚約破棄が始まり、驚きのあまりに言葉も出なかったらしい。
(それであの時、狼狽えていたのか)
婚約破棄を告げるジュリオ殿の隣で、所在なげに困っていたヴァンナ嬢を思い出す。
カロリーナがぽんと手を打った。
「ああ! どこかで見たと思ったら、雑貨屋の前で会った!」
「そうです。御礼を申し上げたくて、ずっとお探ししておりました」
声を弾ませるヴァンナ嬢。
「じゃあ、ジュリオ様が"結婚する"って言った話は……」
「万に一つもありません! プロポーズもされてませんし、そんな関係じゃないし、そもそも好きじゃありませんもの!」
「なっ、ヴァンナお前! "人探し"は俺に会いたいがための作り話じゃなかったのか!?」
(……わぁ~~)
これは探してもなかったな。そして自惚れが痛すぎる。
ジュリオ殿を見る目が、ひときわ残念なものになってしまうのも仕方ないと思う。
カロリーナに至っては、ゴミ虫以下の目で、元婚約者を眺めている。
つまりは全て、ジュリオ殿の頭の中だけで進行していた恋愛劇だったらしい。
カロリーナを見つめるヴァンナ嬢に、嘘は感じない。瞳いっぱいに憧憬の念を乗せている。
「勘違い男、サイっテぇ……」
カロリーナの声は氷点下だ。
「あの……、カロリーナ伯爵令嬢……、私のこと怒っておられますよね? だって私のせいで婚約が……」
「あなたは巻き込まれただけなんでしょう? いいのよ、私、せいせいしてるし。彼は話を聞かないから、大変だったわね」
涙目で尋ねたヴァンナ嬢に、カロリーナが理解を示す。そして思いついたように提案した。
「そうだわ。私たち友達になりませんこと?」
「ええっ、いいんですか? そんな破格な待遇! もちろん喜んで、お友達になりたいです!」
「良かったわ。これからぜひ交流を深めましょうね。ジュリオ様抜きで」
勝ち誇った目をジュリオ殿に向けながら言うカロリーナ。
僕に向けてはこっそりと、"勝利のサイン"を出してくる。魔物討伐で使う、計画がうまく行った時の手信号だ。
(ああ、はい。"寝取ってやる"って言ってた件ね)
まったくちっとも寝取れてないけど、カロリーナが満足したなら良しとしよう。
蚊帳の外にされたジュリオ殿が、顔を真っ赤にして怒鳴り出した。
「ま、待て! なんだそれは! そうか貴様ら、グルだったんだな、俺を笑いものにしようと企んで騒ぎを起こしたんだ!」
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「そうですよ。言い掛かりも甚だしいです」
手を取り合っているカロリーナとヴァンナ嬢は素っ気ない。
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おっと、つい低すぎる声が出た。
真っ赤だった彼の顔が、さっと青く変わる。
やっと状況に気付いたか。
その後、ガクガクと震えるばかりで動かなくなったジュリオ殿を後に、会場を出た僕は、カロリーナとヴァンナ嬢を送り届けたのだった。
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