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婚約破棄を告げるあなたに、屋根裏部屋で最後の口づけを望みました。
後編(救済)
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──ぶはっ!!
思い切り、寝台から跳ね起きた。
まだ心臓がバクバクと全身にこだましている。
心臓……?
(良かった! 僕は生きている! あれは夢だったんだ)
ロイはほっと胸を撫でおろし、自分の手を見た。
まだ小さな、子どもの手。
(夢の中の僕は、18歳の大人だった……)
奇妙な夢をなぞりながら思い出し、ゾクリと震えた。
たった今まで見ていた長い夢の恐怖が、なかなか体から離れない。
「ロイ──、起きた──?」
軽快なノックと同時に笑顔いっぱいの少女が、ロイのベッドへと駆けつける。
「わああ、リネ! 急に部屋に入ってくるなんて!」
「えへへ。待ちきれなくて朝一番に来ちゃった」
屈託なく弾む明るい声で、リネは言った。
「今日は一緒に川遊びに行く約束だよね。ね、早く準備して!」
「かわあそび……」
なんだろう。何か、良くない予感が心を覆う。
「ねえ、リネ。川遊びはまた今度にしない? 僕、今日はなんだか調子が悪くて、うちにいたい気分なんだ」
「大変! お風邪かな? 大人を呼んで来ようか?」
「平気。ごめんね、リネ。楽しみにしてくれてたのに」
「ううん。未来の旦那様だもの。ロイには自分を大切にして欲しいから、川遊びは元気になってからにしよう?」
チクリ
何かがロイの口を動かした。
「──リネ。もし僕に何かあったら……。リネは僕のことを忘れて幸せになって欲しい」
「何かって? 何かあっても私はずっとロイといるよ?」
無邪気に首を傾げる幼い婚約者に、ロイは"なぜ僕はこんなに真剣なんだ"と疑問を抱きながらも言葉を紡いだ。
「僕は、きみのことが大好きだから。僕に縛られて生きて欲しくないんだ」
「??? 私もロイのことが大好き!」
ああ、そうだ。僕はとてもリネが好きで、リネもまっすぐに僕が好きで。
どうして忘れていたんだ──?
「リネ、僕、きみのことを一生大事にするからね」
「わあ、嬉しい! ありがとう、ロイ! でも今日のロイ、なんだか変」
クスクスと傍らで笑う少女を、自分が優しく見つめていることに気づかないまま、ロイは。
彼女のあたたかな手を握りながら、寝台を降りた。
「僕、お腹ペコペコだった。朝ごはん食べてから、屋根裏で"かくれんぼ"して遊ぼう」
「ええ? あそこ隠れられるような場所や物、何もないから、すぐ飽きるよぉ」
「そっか。それじゃあ別の遊びで……」
柔らかな朝日は、子どもたちとその未来を祝福していた。
《婚約破棄を告げるあなたに、屋根裏部屋で最後の口づけを望みました。》完
※前編は「なろうラジオ大賞」でプロの声優さんが朗読してくださった作品となります。前編は怖いので、演出も怖かったです…!(第233回アーカイブで視聴可能)
思い切り、寝台から跳ね起きた。
まだ心臓がバクバクと全身にこだましている。
心臓……?
(良かった! 僕は生きている! あれは夢だったんだ)
ロイはほっと胸を撫でおろし、自分の手を見た。
まだ小さな、子どもの手。
(夢の中の僕は、18歳の大人だった……)
奇妙な夢をなぞりながら思い出し、ゾクリと震えた。
たった今まで見ていた長い夢の恐怖が、なかなか体から離れない。
「ロイ──、起きた──?」
軽快なノックと同時に笑顔いっぱいの少女が、ロイのベッドへと駆けつける。
「わああ、リネ! 急に部屋に入ってくるなんて!」
「えへへ。待ちきれなくて朝一番に来ちゃった」
屈託なく弾む明るい声で、リネは言った。
「今日は一緒に川遊びに行く約束だよね。ね、早く準備して!」
「かわあそび……」
なんだろう。何か、良くない予感が心を覆う。
「ねえ、リネ。川遊びはまた今度にしない? 僕、今日はなんだか調子が悪くて、うちにいたい気分なんだ」
「大変! お風邪かな? 大人を呼んで来ようか?」
「平気。ごめんね、リネ。楽しみにしてくれてたのに」
「ううん。未来の旦那様だもの。ロイには自分を大切にして欲しいから、川遊びは元気になってからにしよう?」
チクリ
何かがロイの口を動かした。
「──リネ。もし僕に何かあったら……。リネは僕のことを忘れて幸せになって欲しい」
「何かって? 何かあっても私はずっとロイといるよ?」
無邪気に首を傾げる幼い婚約者に、ロイは"なぜ僕はこんなに真剣なんだ"と疑問を抱きながらも言葉を紡いだ。
「僕は、きみのことが大好きだから。僕に縛られて生きて欲しくないんだ」
「??? 私もロイのことが大好き!」
ああ、そうだ。僕はとてもリネが好きで、リネもまっすぐに僕が好きで。
どうして忘れていたんだ──?
「リネ、僕、きみのことを一生大事にするからね」
「わあ、嬉しい! ありがとう、ロイ! でも今日のロイ、なんだか変」
クスクスと傍らで笑う少女を、自分が優しく見つめていることに気づかないまま、ロイは。
彼女のあたたかな手を握りながら、寝台を降りた。
「僕、お腹ペコペコだった。朝ごはん食べてから、屋根裏で"かくれんぼ"して遊ぼう」
「ええ? あそこ隠れられるような場所や物、何もないから、すぐ飽きるよぉ」
「そっか。それじゃあ別の遊びで……」
柔らかな朝日は、子どもたちとその未来を祝福していた。
《婚約破棄を告げるあなたに、屋根裏部屋で最後の口づけを望みました。》完
※前編は「なろうラジオ大賞」でプロの声優さんが朗読してくださった作品となります。前編は怖いので、演出も怖かったです…!(第233回アーカイブで視聴可能)
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