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わたくしの婚約は破棄される予定だそうです。計画を知ったので、婚約相手の弟ぎみと手を結ぶことにしました。
2.第二王子からの提案
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わたくしは今回の会談の理由を察し、心寂しく感じました。
(つまりゲオルク殿下は、王太子の座を狙っていらっしゃるんだわ。ヴィラント殿下のことをあんなに"兄上、兄上"と追いかけてらしたゲオルク殿下が)
幼馴染としてわたくしが見るおふたりは、とても仲の良いご兄弟でした。
特にゲオルク殿下は、ヴィラント殿下のことが大好きで、いつもついてまわられていた。
(歳月や権力の無情さを、痛感してしまうわね……)
ゲオルク殿下は、学問にも武芸にも意欲的な御方。
何事も真摯に学ばれ、お若いながらも政務に携わって、その手腕を発揮されながら、才覚を伸ばし続けていらっしゃる。
寄せられる期待も多く、将来を嘱望されている。
有能なゲオルク殿下が何らかの野心を抱いたとしても、おかしなことではない。
王位に就くためには、有力な貴族の後押しも重要。
わたくしが王太子殿下の婚約者に選ばれたのは、我が公爵家が貴族のまとめ役であったから。
次期王妃の実家として、ユーセビアス公爵家が最適だったから。
年が近いのは、単なる幸運。
であれば、王位獲得のため、ゲオルク殿下が次に望むのは──。
「アデリナ嬢、俺の味方になってください」
(…………! つまり自分に、公爵家の後ろ盾が欲しいと)
予想通りの殿下のお言葉に、わたくしはそっと目を伏せ、手元のティーカップを見つめました。
紅茶に映った自分の姿が、お茶にあわせてユラリと揺れます。
でも。
だけども。
わたくしは、ヴィラント殿下が好きなのです。
朗らかで、誠実で、お優しくて。然るべき場では毅然とした態度を貫かれる、そんなヴィラント殿下が大好きなのです。
急にわたくしに素っ気なくなられたとしても、わたくしから殿下を裏切る気持ちはありません。
ゲオルク殿下のお力にはなれない。
(ここはきっぱりとお断り申し上げるべきね)
ゲオルク殿下のご提案と、わたくしが決意を込めて口を開いたのは同時でした。
「ゲオルク殿下のお申し出を飲むことは出来……
「俺たちで兄上に"好き"という気持ちを、もっとアピールしましょう」
……ませ──え?」
(えっ? ゲオルク殿下、いま何とおっしゃったの? 好きをアピール? えっっ???)
聞こえた言葉に当惑し、意味を反芻しているわたくしに、ゲオルク殿下が更に驚くべきご発言をされました。
「兄上はマルテ嬢を理由に、卒業パーティーで貴女との婚約破棄を発表されるおつもりです」
「!? 婚約破棄?」
淑女にあるまじき大きな声を上げてしまい、思わず口元を隠しましたものの。
(わたくしとヴィラント殿下の関係は、そこまでこじれてはいなかったはず)
思いがけない単語に、わたくしは完全に戸惑ってしまいました。
被せるように、ゲオルク殿下が言葉を足されます。
「そして、その結果起こった混乱で、廃太子どころか王籍剥奪まで責を負う想定をされています。つまり兄上は自ら城を出るよう、いま動かれているのです」
「なっ……」
「なので、俺はそれを阻止し、兄上をお引き留めしたい」
(つまりゲオルク殿下は、王太子の座を狙っていらっしゃるんだわ。ヴィラント殿下のことをあんなに"兄上、兄上"と追いかけてらしたゲオルク殿下が)
幼馴染としてわたくしが見るおふたりは、とても仲の良いご兄弟でした。
特にゲオルク殿下は、ヴィラント殿下のことが大好きで、いつもついてまわられていた。
(歳月や権力の無情さを、痛感してしまうわね……)
ゲオルク殿下は、学問にも武芸にも意欲的な御方。
何事も真摯に学ばれ、お若いながらも政務に携わって、その手腕を発揮されながら、才覚を伸ばし続けていらっしゃる。
寄せられる期待も多く、将来を嘱望されている。
有能なゲオルク殿下が何らかの野心を抱いたとしても、おかしなことではない。
王位に就くためには、有力な貴族の後押しも重要。
わたくしが王太子殿下の婚約者に選ばれたのは、我が公爵家が貴族のまとめ役であったから。
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年が近いのは、単なる幸運。
であれば、王位獲得のため、ゲオルク殿下が次に望むのは──。
「アデリナ嬢、俺の味方になってください」
(…………! つまり自分に、公爵家の後ろ盾が欲しいと)
予想通りの殿下のお言葉に、わたくしはそっと目を伏せ、手元のティーカップを見つめました。
紅茶に映った自分の姿が、お茶にあわせてユラリと揺れます。
でも。
だけども。
わたくしは、ヴィラント殿下が好きなのです。
朗らかで、誠実で、お優しくて。然るべき場では毅然とした態度を貫かれる、そんなヴィラント殿下が大好きなのです。
急にわたくしに素っ気なくなられたとしても、わたくしから殿下を裏切る気持ちはありません。
ゲオルク殿下のお力にはなれない。
(ここはきっぱりとお断り申し上げるべきね)
ゲオルク殿下のご提案と、わたくしが決意を込めて口を開いたのは同時でした。
「ゲオルク殿下のお申し出を飲むことは出来……
「俺たちで兄上に"好き"という気持ちを、もっとアピールしましょう」
……ませ──え?」
(えっ? ゲオルク殿下、いま何とおっしゃったの? 好きをアピール? えっっ???)
聞こえた言葉に当惑し、意味を反芻しているわたくしに、ゲオルク殿下が更に驚くべきご発言をされました。
「兄上はマルテ嬢を理由に、卒業パーティーで貴女との婚約破棄を発表されるおつもりです」
「!? 婚約破棄?」
淑女にあるまじき大きな声を上げてしまい、思わず口元を隠しましたものの。
(わたくしとヴィラント殿下の関係は、そこまでこじれてはいなかったはず)
思いがけない単語に、わたくしは完全に戸惑ってしまいました。
被せるように、ゲオルク殿下が言葉を足されます。
「そして、その結果起こった混乱で、廃太子どころか王籍剥奪まで責を負う想定をされています。つまり兄上は自ら城を出るよう、いま動かれているのです」
「なっ……」
「なので、俺はそれを阻止し、兄上をお引き留めしたい」
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