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1巻
1-3
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「ひゃぁああっ!?」
目の前に火花が散って、身体がビクビクと跳ねる。まるで電気を流されたような衝撃に、真白は目を見開いた。
(い、今の、なに?)
良平とのセックスでは感じたことのない衝撃だ。良平はあまりそこを触らなかった。胸はたくさん触ってきたが。
真白が密かに動揺していると、頬に掛かった髪をどかすようにスリスリと頬擦りされた。
「なかなかいい声じゃないか。これでまぐろはないなぁ」
「ぇ……?」
揺れる視線を向けると、頬にちゅっとキスされる。彼は真白の蕾を弄びながら、男と女で多少解釈が違うがと前置きして、話を続けてきた。
「『男にとってのまぐろ女』は、男がなにしたって反応がまるっきりない女のことだ。あんたは感度はいいよ? むしろ、よすぎるくらいだ」
「ああっ!」
中に指が入ってきて、そのままぐるりと掻き回される。いきなりのことに唇を噛むのも忘れて、真白はあられもない声を上げた。
「ぃやぁっ! ぁ、ぁぅっ!」
みっちりと蜜口を埋められ、中を引き伸ばされる感覚。たぶん、一本じゃない。二本……もしかしたら三本、指を挿れられているかもしれない。いきなりたくさんの指を挿れられて、お腹が熱くなる。
「ううう……」
彼は悶える真白の中で軽い散策でもするかのように二、三度、指を出し挿れした。そしてじゅぼっと指を引き抜く。
「はぁんっ!」
「それに濡れやすい。見てみなよ俺の指」
目の前に掲げられた彼の指が、薄明かりの中でもはっきりとわかるほど、テラテラと濡れている。彼が人差し指と親指を軽く擦ると、指の間をねばり気のある細い糸が引くのが見えた。
「~~~~っ!」
自分のいやらしい汁を見せつけられて、真白は涙目になって顔を逸らした。
知らない男の人に触られて、あんなに濡れてしまう自分が信じられない。そしてなにより恥ずかしいのは、彼の指でこじ開けられていたあそこが、ヒクヒク疼くことだ。
身体の奥からいやらしい汁が垂れてきて、真白は思わず内腿を寄せた。だが彼は気にした素振りすら見せずに、真白の耳の裏を舐めてくる。
「ひぅっ!」
普段、人に触られることのない処を舐められて、咄嗟に変な声が出る。そんな真白を見てふっと笑うと、彼は押さえつけていた手を離した。
「こんなに感度のいい女をまぐろ扱いって。さてはあんた、彼氏にイカされたことないな?」
本気でギクリとした。
確かに真白は、絶頂というものを知らない。触られて、それなりに気持ちいいとは感じるが、それ以上の快感は知らなかった。雑誌の体験談に書いてあるようなドラマティックな性的快感は、AVと同じで完全にフィクションだと思っているクチなのだ。
「やっぱりな。可哀想に。濡れやすい体質だからって雑な前戯しかされてなかったんだな。せっかちな男なら、女が濡れたらすぐ挿れるだろうし。そして自分だけ気持ちよくなって、ハイお終い。どうせ挿れてる時間も短かったんじゃないのか?」
「…………」
なんでこの人はそんなことまでわかるのだろう?
確かに真白は良平とのセックスで、すぐ濡れていた。キスされただけでも濡れた。それは彼のことが好きだからと思っていたのだが、それが体質だったって?
真白が濡れたら良平がすぐ中に入ってくるのも、求めてくれていたからじゃなかったのか。ただ、自分が気持ちよくなりたかっただけ?
良平が動いている時間が長いか短いかなんて、比べる相手がいないからわからない。けれどとりあえず、ラブホテルの時間延長はしたことがない。
良平が終わったらセックスは終わりだし、二回目は良平の気分次第。セックスとは、そういうものだと思っていたのだが――
(も、もしかして……違うの?)
ショックを受けているのが顔に出ていたのか、彼は真白を見て軽く嘆息した。
「あのな、男だけ気持ちよくなってどうするんだよ。惚れた女が自分の腕の中で乱れるのを見るのが最高に楽しいのに。聞いてるとさ、あんたの彼氏はメンタルが童貞だ。自分に都合のいい女を求めてる。あんたを大事にしてない。下手くそなくせに浮気して、自分を想って泣いてくれる女捨てるって何様だよ。気に入らないな!」
ここにはいない良平に向かっていきなり怒りだした彼に呆気に取られて、反応ができない。
でも、不思議と心のどこかがすっきりした。
もしかして真白は、誰かに同情してほしかったのではなく、誰かにこの理不尽を怒ってもらいたかったのかもしれない。悪いのは真白じゃないと。
「あ、ありがとう……そう言ってもらえると、なんだか――」
――嬉しい。そう言おうとした真白の声を、彼が突然遮った。
「俺があんたをイカせてやるよ」
「え? あ、きゃぁっ!?」
彼の言葉を理解する前に、スカートが捲られる。驚いて、自由になっていた手でスカートを押さえようともがいた。
「な、なに?」
「俺があんたに、本当のセックスを教えてやる」
そう言った彼の目は、今まで以上に熱く鋭くなっている。
その目に怯み、思わず動けなくなったとき、ショーツのウエスト部分から彼の手が入ってきた。
「あ、やっ!」
脚をバタつかせるが、ぱっくりと開いたあそこに無理やり指をねじ込まれた。
また、指を挿れられてしまった。何本挿れられたかわからないが、とろとろに濡れているから、根元まで簡単に入っていく。
「あ……ぁあ……」
「大丈夫」
震える真白のこめかみにキスをして、彼はゆっくりと指を動かしてきた。
長い指を奥まで挿れられ、ぞろりと肉壁をなぞられる。さっきよりも深いところを触られ、いやらしい汁がじわっと滲んだ。
(ま、た……濡れて……)
どこまで自分は濡れやすいのだろう? これが体質?
ワンピースは着たまま、下着の一枚だって剥ぎ取られていない。なのに真白のあそこは、濡れていく。恋人でもない、知らない男の人とキスをして、その人の指を咥え込んで喘ぐ。そんな自分があまりに淫らで、羞恥心だけで死んでしまいそうだ。
「ンッ……だめ……」
「ここか?」
探るような動きで、お腹の裏にあるザラついた処をしつこく擦られ、真白は呻くように声を漏らした。そこを攻められると、なんだか身体の奥がズクズクするのだ。
真白の膣がぎゅぅうっと引き締まると、彼の指の動きが突き上げるようなそれに変わった。そこを擦り上げながら、奥を突かれる。突き上げの圧が凄い。何本もの指で、自分の中が奥から広げられていくのがわかる。
もがいた手は、いつの間にか彼のシャツを握りしめていた。
「んぅ~~……は、ぅぁ……んんんぅ……なに、これ……やだ……こんな、やだ……」
怖くて、恥ずかしくて、熱くて、気持ちいい。
知らない男の人の指が自分の中を好き勝手に動いているのに、気持ちよくなってしまうのが怖い。未知のなにかが、身体の奥から迫り上がってくるようだ。こんなの知らない。
このなにかから逃げないと、取り返しのつかないことになってしまう気がする。
「ゃ、やだ……こわいぃ……やめて、やめて、おねがい……だめ、だめなの!」
「怖くない。気持ちいいだけだ」
泣きそうになって見上げると、囁きと共にぎゅっと抱きしめられる。彼は、優しい表情をしていた。
こんなに優しく抱きしめないでほしい。出会ったばかりのくせに。恋人でもなんでもないくせに。こんな、まるで大切な女を抱くような……
「大丈夫。大丈夫……俺に任せて。俺はあんたを傷付けたりしない」
指が深くなるのと同時に、唇が塞がれる。
「んっ…………んは…………ゃぁぁ……」
吐息にまじって、ふたり分の唾液があふれて顎を伝った。口内に舌がねじ込まれ、呼吸もままならない。上からも下からもいっぱい挿れられて、苦しくてたまらない。自分以外の体温に内側から侵食されているのに、その熱が気持ちいいのはなぜ?
膣肉が勝手に蠕動して、悦んで男の指を貪っている。こんなのは屈辱だ。そう思うのに、身体は一方的に快感に堕ちていく。
身体の中から、自分の意識だけがどこかに飛んでいきそうだ。
真白が堪えるように目を瞑ったとき、蕾がくにゅっと押し潰された。
「――――ッ!?」
身体がビクッと仰け反る。その反応に合わせるように、中をいじる指の数がいきなり増えた。
「~~~~!!」
入り口がみっちりと引き伸ばされ、指が激しく出し挿れされる。もうこれ以上入らないのに、奥まで挿れられて、しかも蕾まで捏ね回されるなんて。
逃げたいのに逃げられない。頭が真っ白になっていく。
強すぎる快感に翻弄されて、真白は彼に、泣きながら縋っていた。
「あはぁぁああんっ! ぃやあぁ! うっ、ううう……」
キスをしたまま泣き叫んで、一気に脱力する。自分がどうなったのかわからない。
「はぁはぁはぁはぁ……んっ、はぁはぁはぁはぁ……」
目を閉じて、肩で息をしながらぐったりとソファに沈む。そんな真白の頬に、そっとキスが落とされた。
「イッたな」
囁きながら、眦からあふれる涙を舐め取られる。
(……こ、れが……イクって、こと……?)
過去の記憶のどこにもない快感を与えられて、心と身体が戸惑う。今までのセックスの価値観がひっくり返されそうだ。
知らない男の人に、イカされてしまった。こんなことがあっていいのだろうか?
良平にテクニックがなかったとしても、彼のことが好きだったから、抱いてもらえるだけで満足していたつもりだった。なのにそれが全部、自分の身体に否定された気分だ。
混濁した意識の中に沈んでいた真白の身体が、急にふわりと浮いた。
(え?)
重たい瞼を持ち上げると、壁紙が動いているのが視界に入る。不自然な現象に目を見開くと、なんと、彼に横抱きに抱き上げられているではないか!
「え!? な、なに?? なにするの!?」
驚いて、自分を抱く人を見上げる。すると彼は不敵に笑って、真白をベッドに寝かせた。
「『なにするの』って、セックスだけど?」
「~~~~っ!」
どストレートな物言いに、真白のほうが赤面してしまう。
(た、確かに、わたしが誘ったんだけど! だけど!)
あんな激しい絶頂を体験させられたばかりで、まだ自分の中で整理がついていない。本当にこの人に――知らない人に――抱かれてもいいものかと迷う自分もいる。それに身体のほうも気怠い。しかし彼はずいぶんと乗り気のようで、及び腰の真白を前に、躊躇う素振りもなく自分のジャケットを脱いだ。
清潔な白いシャツのボタンがひとつずつ片手で外されていく。あらわになっていく首元と広い胸板を見て、勝手に心臓がドキドキしてきた。
枕元のランプが、彼の男らしい肉体を朧気に照らす。
この人は魅力的だ。綺麗な顔立ちに、真白の知らない性技。そして確かな優しさも感じる。でも、知らない人だ。知らない人とこんな深い関係になるべきではないと、自分の中の良識が咎める。
「あ、の……わたし……やっぱり……」
ベッドの上をじりじりと後退するが、この人に絶頂を味わわされてしまったばかりの身体は思うように動かない。
上半身裸になった彼が、どこから出したのか避妊具片手に面白がるように迫ってきた。
「俺じゃ不満か? 浮気した彼氏よりは、あんたを大事にしてやれるし、満足させてやれると思うけど?」
ベッドヘッドに手が当たった。もう壁際だ。これ以上逃げられない――そこまで追い詰められたとき、ふわりと彼が微笑んだ。
「本音を言うよ。あんたを俺の女にしたくなった」
「ぇ……?」
出会ったばかりで、この人はなにを言っているんだろう? 意味が理解できない。
呆けて固まっているうちに、そのまま抱きしめられた。
優しい抱擁だった。あたたかくて、いい匂いがして、ドキドキが加速する。
へたり込んだ真白が逃げないのをいいことに、彼は真白の顎を持ち上げると、そのままキスしてきた。
(あ……)
挿れられた舌が口内で絡む。もう何度この人にキスされただろう? 唾液を纏った舌を強引にすり合わせ、絡めて吸う。吐息ごと奪うような激しいキスなのに、どこか甘い。逃げなければと思うのに、甘さに酔った身体が動かないのだ。
彼はキスをしながら、真白の背中に手を回し、ワンピースのファスナーを下ろした。
「んぅ……は……んっ……」
真白の肩がピクッと強張ると、キスがより深くなる。彼は唇を舐めるようにねっとりと口付けながら、真白の肩からワンピースとキャミソールを同時に落とした。
ブラジャーが見えて、慌てて胸を押さえようとする。しかし、その手は一瞬で掴まれてしまった。
「ぁ……」
彼は真白の両手を握り、そっと指を絡めてきた。両手を恋人繋ぎにして、キスに没頭する。
くちゅり、くちゅり、くちゅ……
舌が絡む音と共に、ゆっくりと唇が離れた。散々吸い付かれた唇は腫れぼったくて、熱い。唇だけでなく、身体も――
上半身裸の彼を前にして、目のやり場に困る。真白が視線を泳がせると、首筋に唇が当たった。首筋、鎖骨、胸の膨らみ――なぞるように落ちていくその唇に、ぶるりと肌が粟立つ。
息を呑んだ真白に、彼の低い声が届いた。
「ああ……いいな。真っ白だ……」
「っ!」
名前を、呼ばれたのかと思った。
教えてもないし、ただの偶然だ。なのに心臓の高鳴りがとまらない。それと同時に、「この人に、最後まで抱かれたらどうなるんだろう?」という思いが生まれる。それはただの興味というより、女の本能だったかもしれない。
「いいだろう?」
見上げてくる彼の眼差しが熱い。女を求める男の目だ。その目が、真白の中の女に火をつけた。
「……ん」
小さく頷くと、彼の目がすぅーっと細まって、唇が弧を描く。不気味なくらいに綺麗な笑みだった。
トサッと軽い音を立てて、彼が横向きにベッドに倒れ込む。すると手を繋がれたままの真白も、当然つられる。彼は手を繋いだまま、口だけで真白の乳房を愛撫してきた。
大きくもなければ、小さくもない。そんな平均的な乳房が甘く囓られて、くいくいと乳首を擦るようにブラジャーが押し上げられる。それはもどかしい疼きだ。
今すぐこの手を離して、ブラジャーを剥ぎ取れば、舐めるのも揉むのも思いのままだろうに、この人はそうしない。
ブラジャーに顔を擦りつけ、谷間に鼻を埋めて、カップからあふれた乳房を舐める。まるで焦らされているみたいだ。ぷっくりと立ち上がった胸の先が熱くなってくる。
今すぐこの人の口でここを吸ってほしい――舐めてほしい。しゃぶってほしい。噛んで……
(そ、そんなはずは……)
自分の身体の欲求を否定し、プイッと顔を背ける。けれどあそこから、ぬるぬるした汁が次から次へとあふれてくる。さっき指でイカされたからだと心の中で言い訳してみても、いやらしい汁はとまらない。ショーツのクロッチはもうぐちょぐちょで、恥ずかしいことになっている。
(ど、どうしよう……わたし……こんな……)
本当にどうしてしまったんだろう? 頭の中は彼に乳首を吸ってもらいたくて、そのことばかり考えている。でも言えない。
真白は身体をモジモジさせ、自然に胸の谷間を寄せていた。するとブラジャーのカップが浮いて、乳首が覗く。本当ならそのことにこそ羞恥心を抱かなくてはならないのに、こうすれば彼の舌がそこを舐めてくれる気がしたのだ。
ドキドキする。彼に自分から乳首を見せるようなことをしていると知られたくない。でも、そこを吸ってほしい。
真白が平静を装っていると、覗いた乳首に気付いた彼が、舌を伸ばしてそこを舐めてきた。立ち上がった乳首がくいくいと舌先で押し上げられ、そのままハムッと咥えられる。
お腹の奥が疼いて、また濡れた。
「はぁはぁ……はぁはぁ……んっ……」
くちゅくちゅ、くちゅくちゅ……あれほど饒舌に迫ってきた彼が、今は言葉もなく、息を荒くしながら一生懸命に真白の乳首をしゃぶっている。舌先で包み込み、口蓋でぎゅっぎゅっと扱きながら吸われると、たまらない気持ちになってきた。
もっと吸って。舐めて……囓って。反対も……
「ブラ、外して。反対も舐めたい。あんたの身体、甘い」
胸に顔を埋め、上目遣いで懇願してきた彼にゴクッと生唾を呑む。なぜだかわからないが、異常なまでにゾクゾクした。
「……手……離して……」
声を絞り出すと、すぐに解放される。真白は自由になった両手を背中に回して、自分でブラジャーを外した。しかしすぐに乳房を隠すように、身体を倒してうつ伏せになる。
恥じらいが半分。残りの半分は淡い期待だ。こうやって焦らせば、もっとこの人に求められるかもしれないという期待。
真白がドキドキしながら窺っていると、突然腰が持ち上げられた。自分がシーツに突っ伏す体勢にさせられたことに、目を白黒させる。
「や、だ……こんなっ!」
こんなことを求めていたんじゃない。なのに、真白の腰でもたついていたスカートを捲って尻を撫でながら、彼はわざとらしい声を上げた。
「なんで? 今度はこっちを触ってほしかったんじゃないのか? さっきはしゃぶってほしいからって、胸見せてきたくせに」
「っ!!」
バレていた恥ずかしさから、シーツに顔を押し付ける。どんな顔をしろというのか! 一気に立場が逆転した気分だ。
真白が顔を上げないのをいいことに、彼は腰を押さえつけ、片手で剥くようにショーツを引き下げてきた。
濡れたショーツが、つーっと糸を引くのを感じる。あそこが全部丸見えで恥ずかしいのに、動くことができない。
シーツを握りしめて震える真白の蜜口に、彼の指先が触れる。とろとろになったそこを撫で回しながら、彼が真白の耳元で囁いた。
「ヘンタイ」
「っ!!」
恥ずかしい……恥ずかしい! 恥ずかしい!!
でもなにも言えない。
屈辱的なことを言われているのに、あそこを触られて気持ちよくって、身体はますます濡れていく。
真白が羞恥心に震えていると、ずぶずぶと彼の指が入ってきた。一本だけではない。二本か、三本か……
「ああ、奥までとろとろ。さっきより濡れてる」
「あ、あ、あ……あ、ぁ……」
右回転、左回転。身体の中で彼の指が回って、節くれ立った関節で襞が強く擦られる。あまりの快感に、真白の内腿は自然と痙攣していた。
「俺の指は気持ちいいか?」
聞かれて、唇を噛みしめながら小さく頷く。
「いやらしい女。あんたに満足しない彼氏とかアホだな」
彼は嘲るように嗤うと、ズンズンと奥を突いてきた。子宮の入り口に指の腹を当てながら上下に擦り、今度は指を変えて奥から中を広げる。真白は快感に目を見開いた。
「あぁ……ぅ……はぁはぁ……はぁはぁぅぅう……ぉあ……あぁ……」
気持ちいい。きっと手慣れているのだろう。彼の指は、女の身体を女より知っている。的確に気持ちいい処を探り当てて、そこを入念に突いてくるのだ。
恥辱的に犯されているのに、身体はどうしようもなく悦んでいる。男と女に、こんなに気持ちのいい世界があるなんて知らなかった。
今までの自分は、良平に抱かれてなにを満足していたんだろう?
本当の快感を知ったばかりの真白の身体は、蜜口をヒクヒクさせながら彼の指を咥え込んだ。
いやらしい汁が垂れて、シーツに染みを作る。
(ぁああ……あぁ……も、もぅ……だめ……きもちいい……きもちいぃ……)
真白が二度目の絶頂を極めようとしたとき、不意に指が引き抜かれた。
「え? やだ! どうして?」
快感を奪われ悲痛な声を上げて振り向くと、そのまま仰向けに押し倒された。膝を胸に押し付けられ、脚をMの字に開かされる。中途半端に脱がされたショーツのせいで、脚が下ろせない。
「本当に可愛い。すっげえ、そそる」
真白の身体を押さえつけ、自由を奪ったまま片手でベルトを外す彼の目は、欲情した獣そのものだ。その目を向けられた真白は、恐怖するどころか、信じられないことに明らかに興奮していた。
今、自分は、女として求められている――そして、この人を男として求めている。
熱い息を吐いた彼は、雄々しく屹立した物を取り出して、真白の秘裂に擦りつけてきた。
それは良平の物とは太さも長さも段違いだった。あれがほしいと、真白の子宮が疼く。
互いの体液が擦れ合って、いやらしい音がした。
「あっ」
熱くて硬い肉棒が、花弁を開いて真白のそこを滑る。何度も何度も繰り返し擦られているうちに、先がくぽっと蜜口に入った。それが出たり入ったりを続ける。蕾をツンと突かれ、緊張と期待が高まった。
このまま挿れられたい。この人に抱かれたい。欲望に侵されてみたい。
一度火の付いた真白の欲望はとまらない。
そんな真白を悠然と見下ろしながら、彼は意地悪な声で囁いた。
「どうしてほしい?」
「…………」
そんなこと、恥ずかしくて言えない。
「言えよ。言わないならやめるぞ」
試されているのだとわかっていても、実際に蕾を擦っていたのをやめられると、泣きたくなってくる。
欲望が、羞恥心と理性を上回った。
「……ぃ、れて……ほしぃ……」
口の中で、モゴモゴと唱える。
「どこに? なにを?」
彼は余裕だ。真白を誘うように蜜口を丸く撫でて花弁を開き、ぷっくりと立ち上がった蕾をぎゅうぎゅうと摘まむ。
「わ、たしの、なかに……ぁなた……の……を……」
真白はもう涙目だ。
快感を求める身体の言いなりになる自分が恥ずかしい。でも抗えないのだ。心も身体も辱められているのに、この人のくれる快感を求めてしまう。本当はいけないことだとわかっているのに……
真白が折れた心で見上げると、彼の目が蠱惑的に細まった。
「しょうがないな。あんたがあんまり可愛いから、特別に挿れてやるよ」
避妊具を着けると、彼は真白の泣いた蜜口にそれを充てがった。それだけで、媚肉が蠢いて期待に喘ぐ。その瞬間、一気に彼の物が身体の中に入ってきた。
「あぁぁああっ!」
たっぷりと濡れた身体を最奥まで貫かれ、悲鳴を上げながら目を見開く。指とは比べ物にならない圧と快感に襲われて、真白の意識は一瞬飛んだ。
「ううう……」
「見てみな。俺のがあんたの中に全部入ってる」
彼はぐったりとした真白の頭を持ち上げ、見せつけるように腰を前後させた。いやらしい汁を纏った屹立が、じゅぶじゅぶと音を立てながら、真白の中に出たり入ったりしている。
(わ、わたし……本当に、されてる……)
イケナイコトなのに、知らない人とのセックスに、こんなに身体を熱くしている自分が怖い。
「あぁ……あぁぁあっあぁ…………」
「すごい締まり。中、熱っ。気持ちいい。あんたもだろう?」
「…………」
そんなの、恥ずかしくて言えない。
頬を染める真白の子宮口をぐりぐりと抉りながら、彼は真白の乳房を鷲掴みにしてきた。
「やめてほしくなかったら、正直に言いな」
目の前に火花が散って、身体がビクビクと跳ねる。まるで電気を流されたような衝撃に、真白は目を見開いた。
(い、今の、なに?)
良平とのセックスでは感じたことのない衝撃だ。良平はあまりそこを触らなかった。胸はたくさん触ってきたが。
真白が密かに動揺していると、頬に掛かった髪をどかすようにスリスリと頬擦りされた。
「なかなかいい声じゃないか。これでまぐろはないなぁ」
「ぇ……?」
揺れる視線を向けると、頬にちゅっとキスされる。彼は真白の蕾を弄びながら、男と女で多少解釈が違うがと前置きして、話を続けてきた。
「『男にとってのまぐろ女』は、男がなにしたって反応がまるっきりない女のことだ。あんたは感度はいいよ? むしろ、よすぎるくらいだ」
「ああっ!」
中に指が入ってきて、そのままぐるりと掻き回される。いきなりのことに唇を噛むのも忘れて、真白はあられもない声を上げた。
「ぃやぁっ! ぁ、ぁぅっ!」
みっちりと蜜口を埋められ、中を引き伸ばされる感覚。たぶん、一本じゃない。二本……もしかしたら三本、指を挿れられているかもしれない。いきなりたくさんの指を挿れられて、お腹が熱くなる。
「ううう……」
彼は悶える真白の中で軽い散策でもするかのように二、三度、指を出し挿れした。そしてじゅぼっと指を引き抜く。
「はぁんっ!」
「それに濡れやすい。見てみなよ俺の指」
目の前に掲げられた彼の指が、薄明かりの中でもはっきりとわかるほど、テラテラと濡れている。彼が人差し指と親指を軽く擦ると、指の間をねばり気のある細い糸が引くのが見えた。
「~~~~っ!」
自分のいやらしい汁を見せつけられて、真白は涙目になって顔を逸らした。
知らない男の人に触られて、あんなに濡れてしまう自分が信じられない。そしてなにより恥ずかしいのは、彼の指でこじ開けられていたあそこが、ヒクヒク疼くことだ。
身体の奥からいやらしい汁が垂れてきて、真白は思わず内腿を寄せた。だが彼は気にした素振りすら見せずに、真白の耳の裏を舐めてくる。
「ひぅっ!」
普段、人に触られることのない処を舐められて、咄嗟に変な声が出る。そんな真白を見てふっと笑うと、彼は押さえつけていた手を離した。
「こんなに感度のいい女をまぐろ扱いって。さてはあんた、彼氏にイカされたことないな?」
本気でギクリとした。
確かに真白は、絶頂というものを知らない。触られて、それなりに気持ちいいとは感じるが、それ以上の快感は知らなかった。雑誌の体験談に書いてあるようなドラマティックな性的快感は、AVと同じで完全にフィクションだと思っているクチなのだ。
「やっぱりな。可哀想に。濡れやすい体質だからって雑な前戯しかされてなかったんだな。せっかちな男なら、女が濡れたらすぐ挿れるだろうし。そして自分だけ気持ちよくなって、ハイお終い。どうせ挿れてる時間も短かったんじゃないのか?」
「…………」
なんでこの人はそんなことまでわかるのだろう?
確かに真白は良平とのセックスで、すぐ濡れていた。キスされただけでも濡れた。それは彼のことが好きだからと思っていたのだが、それが体質だったって?
真白が濡れたら良平がすぐ中に入ってくるのも、求めてくれていたからじゃなかったのか。ただ、自分が気持ちよくなりたかっただけ?
良平が動いている時間が長いか短いかなんて、比べる相手がいないからわからない。けれどとりあえず、ラブホテルの時間延長はしたことがない。
良平が終わったらセックスは終わりだし、二回目は良平の気分次第。セックスとは、そういうものだと思っていたのだが――
(も、もしかして……違うの?)
ショックを受けているのが顔に出ていたのか、彼は真白を見て軽く嘆息した。
「あのな、男だけ気持ちよくなってどうするんだよ。惚れた女が自分の腕の中で乱れるのを見るのが最高に楽しいのに。聞いてるとさ、あんたの彼氏はメンタルが童貞だ。自分に都合のいい女を求めてる。あんたを大事にしてない。下手くそなくせに浮気して、自分を想って泣いてくれる女捨てるって何様だよ。気に入らないな!」
ここにはいない良平に向かっていきなり怒りだした彼に呆気に取られて、反応ができない。
でも、不思議と心のどこかがすっきりした。
もしかして真白は、誰かに同情してほしかったのではなく、誰かにこの理不尽を怒ってもらいたかったのかもしれない。悪いのは真白じゃないと。
「あ、ありがとう……そう言ってもらえると、なんだか――」
――嬉しい。そう言おうとした真白の声を、彼が突然遮った。
「俺があんたをイカせてやるよ」
「え? あ、きゃぁっ!?」
彼の言葉を理解する前に、スカートが捲られる。驚いて、自由になっていた手でスカートを押さえようともがいた。
「な、なに?」
「俺があんたに、本当のセックスを教えてやる」
そう言った彼の目は、今まで以上に熱く鋭くなっている。
その目に怯み、思わず動けなくなったとき、ショーツのウエスト部分から彼の手が入ってきた。
「あ、やっ!」
脚をバタつかせるが、ぱっくりと開いたあそこに無理やり指をねじ込まれた。
また、指を挿れられてしまった。何本挿れられたかわからないが、とろとろに濡れているから、根元まで簡単に入っていく。
「あ……ぁあ……」
「大丈夫」
震える真白のこめかみにキスをして、彼はゆっくりと指を動かしてきた。
長い指を奥まで挿れられ、ぞろりと肉壁をなぞられる。さっきよりも深いところを触られ、いやらしい汁がじわっと滲んだ。
(ま、た……濡れて……)
どこまで自分は濡れやすいのだろう? これが体質?
ワンピースは着たまま、下着の一枚だって剥ぎ取られていない。なのに真白のあそこは、濡れていく。恋人でもない、知らない男の人とキスをして、その人の指を咥え込んで喘ぐ。そんな自分があまりに淫らで、羞恥心だけで死んでしまいそうだ。
「ンッ……だめ……」
「ここか?」
探るような動きで、お腹の裏にあるザラついた処をしつこく擦られ、真白は呻くように声を漏らした。そこを攻められると、なんだか身体の奥がズクズクするのだ。
真白の膣がぎゅぅうっと引き締まると、彼の指の動きが突き上げるようなそれに変わった。そこを擦り上げながら、奥を突かれる。突き上げの圧が凄い。何本もの指で、自分の中が奥から広げられていくのがわかる。
もがいた手は、いつの間にか彼のシャツを握りしめていた。
「んぅ~~……は、ぅぁ……んんんぅ……なに、これ……やだ……こんな、やだ……」
怖くて、恥ずかしくて、熱くて、気持ちいい。
知らない男の人の指が自分の中を好き勝手に動いているのに、気持ちよくなってしまうのが怖い。未知のなにかが、身体の奥から迫り上がってくるようだ。こんなの知らない。
このなにかから逃げないと、取り返しのつかないことになってしまう気がする。
「ゃ、やだ……こわいぃ……やめて、やめて、おねがい……だめ、だめなの!」
「怖くない。気持ちいいだけだ」
泣きそうになって見上げると、囁きと共にぎゅっと抱きしめられる。彼は、優しい表情をしていた。
こんなに優しく抱きしめないでほしい。出会ったばかりのくせに。恋人でもなんでもないくせに。こんな、まるで大切な女を抱くような……
「大丈夫。大丈夫……俺に任せて。俺はあんたを傷付けたりしない」
指が深くなるのと同時に、唇が塞がれる。
「んっ…………んは…………ゃぁぁ……」
吐息にまじって、ふたり分の唾液があふれて顎を伝った。口内に舌がねじ込まれ、呼吸もままならない。上からも下からもいっぱい挿れられて、苦しくてたまらない。自分以外の体温に内側から侵食されているのに、その熱が気持ちいいのはなぜ?
膣肉が勝手に蠕動して、悦んで男の指を貪っている。こんなのは屈辱だ。そう思うのに、身体は一方的に快感に堕ちていく。
身体の中から、自分の意識だけがどこかに飛んでいきそうだ。
真白が堪えるように目を瞑ったとき、蕾がくにゅっと押し潰された。
「――――ッ!?」
身体がビクッと仰け反る。その反応に合わせるように、中をいじる指の数がいきなり増えた。
「~~~~!!」
入り口がみっちりと引き伸ばされ、指が激しく出し挿れされる。もうこれ以上入らないのに、奥まで挿れられて、しかも蕾まで捏ね回されるなんて。
逃げたいのに逃げられない。頭が真っ白になっていく。
強すぎる快感に翻弄されて、真白は彼に、泣きながら縋っていた。
「あはぁぁああんっ! ぃやあぁ! うっ、ううう……」
キスをしたまま泣き叫んで、一気に脱力する。自分がどうなったのかわからない。
「はぁはぁはぁはぁ……んっ、はぁはぁはぁはぁ……」
目を閉じて、肩で息をしながらぐったりとソファに沈む。そんな真白の頬に、そっとキスが落とされた。
「イッたな」
囁きながら、眦からあふれる涙を舐め取られる。
(……こ、れが……イクって、こと……?)
過去の記憶のどこにもない快感を与えられて、心と身体が戸惑う。今までのセックスの価値観がひっくり返されそうだ。
知らない男の人に、イカされてしまった。こんなことがあっていいのだろうか?
良平にテクニックがなかったとしても、彼のことが好きだったから、抱いてもらえるだけで満足していたつもりだった。なのにそれが全部、自分の身体に否定された気分だ。
混濁した意識の中に沈んでいた真白の身体が、急にふわりと浮いた。
(え?)
重たい瞼を持ち上げると、壁紙が動いているのが視界に入る。不自然な現象に目を見開くと、なんと、彼に横抱きに抱き上げられているではないか!
「え!? な、なに?? なにするの!?」
驚いて、自分を抱く人を見上げる。すると彼は不敵に笑って、真白をベッドに寝かせた。
「『なにするの』って、セックスだけど?」
「~~~~っ!」
どストレートな物言いに、真白のほうが赤面してしまう。
(た、確かに、わたしが誘ったんだけど! だけど!)
あんな激しい絶頂を体験させられたばかりで、まだ自分の中で整理がついていない。本当にこの人に――知らない人に――抱かれてもいいものかと迷う自分もいる。それに身体のほうも気怠い。しかし彼はずいぶんと乗り気のようで、及び腰の真白を前に、躊躇う素振りもなく自分のジャケットを脱いだ。
清潔な白いシャツのボタンがひとつずつ片手で外されていく。あらわになっていく首元と広い胸板を見て、勝手に心臓がドキドキしてきた。
枕元のランプが、彼の男らしい肉体を朧気に照らす。
この人は魅力的だ。綺麗な顔立ちに、真白の知らない性技。そして確かな優しさも感じる。でも、知らない人だ。知らない人とこんな深い関係になるべきではないと、自分の中の良識が咎める。
「あ、の……わたし……やっぱり……」
ベッドの上をじりじりと後退するが、この人に絶頂を味わわされてしまったばかりの身体は思うように動かない。
上半身裸になった彼が、どこから出したのか避妊具片手に面白がるように迫ってきた。
「俺じゃ不満か? 浮気した彼氏よりは、あんたを大事にしてやれるし、満足させてやれると思うけど?」
ベッドヘッドに手が当たった。もう壁際だ。これ以上逃げられない――そこまで追い詰められたとき、ふわりと彼が微笑んだ。
「本音を言うよ。あんたを俺の女にしたくなった」
「ぇ……?」
出会ったばかりで、この人はなにを言っているんだろう? 意味が理解できない。
呆けて固まっているうちに、そのまま抱きしめられた。
優しい抱擁だった。あたたかくて、いい匂いがして、ドキドキが加速する。
へたり込んだ真白が逃げないのをいいことに、彼は真白の顎を持ち上げると、そのままキスしてきた。
(あ……)
挿れられた舌が口内で絡む。もう何度この人にキスされただろう? 唾液を纏った舌を強引にすり合わせ、絡めて吸う。吐息ごと奪うような激しいキスなのに、どこか甘い。逃げなければと思うのに、甘さに酔った身体が動かないのだ。
彼はキスをしながら、真白の背中に手を回し、ワンピースのファスナーを下ろした。
「んぅ……は……んっ……」
真白の肩がピクッと強張ると、キスがより深くなる。彼は唇を舐めるようにねっとりと口付けながら、真白の肩からワンピースとキャミソールを同時に落とした。
ブラジャーが見えて、慌てて胸を押さえようとする。しかし、その手は一瞬で掴まれてしまった。
「ぁ……」
彼は真白の両手を握り、そっと指を絡めてきた。両手を恋人繋ぎにして、キスに没頭する。
くちゅり、くちゅり、くちゅ……
舌が絡む音と共に、ゆっくりと唇が離れた。散々吸い付かれた唇は腫れぼったくて、熱い。唇だけでなく、身体も――
上半身裸の彼を前にして、目のやり場に困る。真白が視線を泳がせると、首筋に唇が当たった。首筋、鎖骨、胸の膨らみ――なぞるように落ちていくその唇に、ぶるりと肌が粟立つ。
息を呑んだ真白に、彼の低い声が届いた。
「ああ……いいな。真っ白だ……」
「っ!」
名前を、呼ばれたのかと思った。
教えてもないし、ただの偶然だ。なのに心臓の高鳴りがとまらない。それと同時に、「この人に、最後まで抱かれたらどうなるんだろう?」という思いが生まれる。それはただの興味というより、女の本能だったかもしれない。
「いいだろう?」
見上げてくる彼の眼差しが熱い。女を求める男の目だ。その目が、真白の中の女に火をつけた。
「……ん」
小さく頷くと、彼の目がすぅーっと細まって、唇が弧を描く。不気味なくらいに綺麗な笑みだった。
トサッと軽い音を立てて、彼が横向きにベッドに倒れ込む。すると手を繋がれたままの真白も、当然つられる。彼は手を繋いだまま、口だけで真白の乳房を愛撫してきた。
大きくもなければ、小さくもない。そんな平均的な乳房が甘く囓られて、くいくいと乳首を擦るようにブラジャーが押し上げられる。それはもどかしい疼きだ。
今すぐこの手を離して、ブラジャーを剥ぎ取れば、舐めるのも揉むのも思いのままだろうに、この人はそうしない。
ブラジャーに顔を擦りつけ、谷間に鼻を埋めて、カップからあふれた乳房を舐める。まるで焦らされているみたいだ。ぷっくりと立ち上がった胸の先が熱くなってくる。
今すぐこの人の口でここを吸ってほしい――舐めてほしい。しゃぶってほしい。噛んで……
(そ、そんなはずは……)
自分の身体の欲求を否定し、プイッと顔を背ける。けれどあそこから、ぬるぬるした汁が次から次へとあふれてくる。さっき指でイカされたからだと心の中で言い訳してみても、いやらしい汁はとまらない。ショーツのクロッチはもうぐちょぐちょで、恥ずかしいことになっている。
(ど、どうしよう……わたし……こんな……)
本当にどうしてしまったんだろう? 頭の中は彼に乳首を吸ってもらいたくて、そのことばかり考えている。でも言えない。
真白は身体をモジモジさせ、自然に胸の谷間を寄せていた。するとブラジャーのカップが浮いて、乳首が覗く。本当ならそのことにこそ羞恥心を抱かなくてはならないのに、こうすれば彼の舌がそこを舐めてくれる気がしたのだ。
ドキドキする。彼に自分から乳首を見せるようなことをしていると知られたくない。でも、そこを吸ってほしい。
真白が平静を装っていると、覗いた乳首に気付いた彼が、舌を伸ばしてそこを舐めてきた。立ち上がった乳首がくいくいと舌先で押し上げられ、そのままハムッと咥えられる。
お腹の奥が疼いて、また濡れた。
「はぁはぁ……はぁはぁ……んっ……」
くちゅくちゅ、くちゅくちゅ……あれほど饒舌に迫ってきた彼が、今は言葉もなく、息を荒くしながら一生懸命に真白の乳首をしゃぶっている。舌先で包み込み、口蓋でぎゅっぎゅっと扱きながら吸われると、たまらない気持ちになってきた。
もっと吸って。舐めて……囓って。反対も……
「ブラ、外して。反対も舐めたい。あんたの身体、甘い」
胸に顔を埋め、上目遣いで懇願してきた彼にゴクッと生唾を呑む。なぜだかわからないが、異常なまでにゾクゾクした。
「……手……離して……」
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「や、だ……こんなっ!」
こんなことを求めていたんじゃない。なのに、真白の腰でもたついていたスカートを捲って尻を撫でながら、彼はわざとらしい声を上げた。
「なんで? 今度はこっちを触ってほしかったんじゃないのか? さっきはしゃぶってほしいからって、胸見せてきたくせに」
「っ!!」
バレていた恥ずかしさから、シーツに顔を押し付ける。どんな顔をしろというのか! 一気に立場が逆転した気分だ。
真白が顔を上げないのをいいことに、彼は腰を押さえつけ、片手で剥くようにショーツを引き下げてきた。
濡れたショーツが、つーっと糸を引くのを感じる。あそこが全部丸見えで恥ずかしいのに、動くことができない。
シーツを握りしめて震える真白の蜜口に、彼の指先が触れる。とろとろになったそこを撫で回しながら、彼が真白の耳元で囁いた。
「ヘンタイ」
「っ!!」
恥ずかしい……恥ずかしい! 恥ずかしい!!
でもなにも言えない。
屈辱的なことを言われているのに、あそこを触られて気持ちよくって、身体はますます濡れていく。
真白が羞恥心に震えていると、ずぶずぶと彼の指が入ってきた。一本だけではない。二本か、三本か……
「ああ、奥までとろとろ。さっきより濡れてる」
「あ、あ、あ……あ、ぁ……」
右回転、左回転。身体の中で彼の指が回って、節くれ立った関節で襞が強く擦られる。あまりの快感に、真白の内腿は自然と痙攣していた。
「俺の指は気持ちいいか?」
聞かれて、唇を噛みしめながら小さく頷く。
「いやらしい女。あんたに満足しない彼氏とかアホだな」
彼は嘲るように嗤うと、ズンズンと奥を突いてきた。子宮の入り口に指の腹を当てながら上下に擦り、今度は指を変えて奥から中を広げる。真白は快感に目を見開いた。
「あぁ……ぅ……はぁはぁ……はぁはぁぅぅう……ぉあ……あぁ……」
気持ちいい。きっと手慣れているのだろう。彼の指は、女の身体を女より知っている。的確に気持ちいい処を探り当てて、そこを入念に突いてくるのだ。
恥辱的に犯されているのに、身体はどうしようもなく悦んでいる。男と女に、こんなに気持ちのいい世界があるなんて知らなかった。
今までの自分は、良平に抱かれてなにを満足していたんだろう?
本当の快感を知ったばかりの真白の身体は、蜜口をヒクヒクさせながら彼の指を咥え込んだ。
いやらしい汁が垂れて、シーツに染みを作る。
(ぁああ……あぁ……も、もぅ……だめ……きもちいい……きもちいぃ……)
真白が二度目の絶頂を極めようとしたとき、不意に指が引き抜かれた。
「え? やだ! どうして?」
快感を奪われ悲痛な声を上げて振り向くと、そのまま仰向けに押し倒された。膝を胸に押し付けられ、脚をMの字に開かされる。中途半端に脱がされたショーツのせいで、脚が下ろせない。
「本当に可愛い。すっげえ、そそる」
真白の身体を押さえつけ、自由を奪ったまま片手でベルトを外す彼の目は、欲情した獣そのものだ。その目を向けられた真白は、恐怖するどころか、信じられないことに明らかに興奮していた。
今、自分は、女として求められている――そして、この人を男として求めている。
熱い息を吐いた彼は、雄々しく屹立した物を取り出して、真白の秘裂に擦りつけてきた。
それは良平の物とは太さも長さも段違いだった。あれがほしいと、真白の子宮が疼く。
互いの体液が擦れ合って、いやらしい音がした。
「あっ」
熱くて硬い肉棒が、花弁を開いて真白のそこを滑る。何度も何度も繰り返し擦られているうちに、先がくぽっと蜜口に入った。それが出たり入ったりを続ける。蕾をツンと突かれ、緊張と期待が高まった。
このまま挿れられたい。この人に抱かれたい。欲望に侵されてみたい。
一度火の付いた真白の欲望はとまらない。
そんな真白を悠然と見下ろしながら、彼は意地悪な声で囁いた。
「どうしてほしい?」
「…………」
そんなこと、恥ずかしくて言えない。
「言えよ。言わないならやめるぞ」
試されているのだとわかっていても、実際に蕾を擦っていたのをやめられると、泣きたくなってくる。
欲望が、羞恥心と理性を上回った。
「……ぃ、れて……ほしぃ……」
口の中で、モゴモゴと唱える。
「どこに? なにを?」
彼は余裕だ。真白を誘うように蜜口を丸く撫でて花弁を開き、ぷっくりと立ち上がった蕾をぎゅうぎゅうと摘まむ。
「わ、たしの、なかに……ぁなた……の……を……」
真白はもう涙目だ。
快感を求める身体の言いなりになる自分が恥ずかしい。でも抗えないのだ。心も身体も辱められているのに、この人のくれる快感を求めてしまう。本当はいけないことだとわかっているのに……
真白が折れた心で見上げると、彼の目が蠱惑的に細まった。
「しょうがないな。あんたがあんまり可愛いから、特別に挿れてやるよ」
避妊具を着けると、彼は真白の泣いた蜜口にそれを充てがった。それだけで、媚肉が蠢いて期待に喘ぐ。その瞬間、一気に彼の物が身体の中に入ってきた。
「あぁぁああっ!」
たっぷりと濡れた身体を最奥まで貫かれ、悲鳴を上げながら目を見開く。指とは比べ物にならない圧と快感に襲われて、真白の意識は一瞬飛んだ。
「ううう……」
「見てみな。俺のがあんたの中に全部入ってる」
彼はぐったりとした真白の頭を持ち上げ、見せつけるように腰を前後させた。いやらしい汁を纏った屹立が、じゅぶじゅぶと音を立てながら、真白の中に出たり入ったりしている。
(わ、わたし……本当に、されてる……)
イケナイコトなのに、知らない人とのセックスに、こんなに身体を熱くしている自分が怖い。
「あぁ……あぁぁあっあぁ…………」
「すごい締まり。中、熱っ。気持ちいい。あんたもだろう?」
「…………」
そんなの、恥ずかしくて言えない。
頬を染める真白の子宮口をぐりぐりと抉りながら、彼は真白の乳房を鷲掴みにしてきた。
「やめてほしくなかったら、正直に言いな」
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