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3章 魔王の復活

17話 傷も癒えて

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 鳥のさえずりが聞こえ、部屋には刀を研ぐ音が響き渡る。身体を起こすと目の前には床に座り、砥石で刀を研ぐリーズの姿があった。
 見つめる俺に気づいたリーズは勢いよく胸に飛び込んできたのだ。

「大丈夫? 痛いところはない?」

「大丈夫だよ、ありがとう。リーズが助けてくれたんだろ。この部屋に俺達以外に誰かいなかったか?」

「ううん、私がきた時には誰も……」

 そう言いながらリーズは俺の傷の手当てをしてくれている。

「ちょっと痛いかも……《治癒ヒール》」

 傷はみるみる癒えていき、まるで初めから傷がなかったかのように完治したのだ。

「やっと完治したね。一晩中治療を続けてよかったよ、ほんとに」
 
 リーズは傷が塞がったのを確認すると床に座り込み再び刀を研ぎ始めた。

「ありがとう」

 あの男は逃げたに違いない。
 でも確かに固有スキルは奪った。
 この報い受けてもらうから覚悟しとけよ。見知らぬ男だろうが必ず追い詰めてやる。いつか必ず。

「本当に心配したんだよ。私にとってリヒトは――」

「何か言ったか?」

 最後はよく聞き取れなかったが、リーズが心配してくれていたのは伝わってくる。

「そうだ! これからどうするつもり?」

「どうやら、今回はゴードンが関わってるっぽいが。どちらにせよいづれアイツらも……。俺たちはあの日、報復すると誓った。どんな手を使ってでも」

「私たちは報復することだけを考えて生きてきた。それは変わらないからね」

 ゴードンは俺を始末できたと考えているはずだ。逃げた男が返り討ちにされたと報告していたらまた別の話にはなるが……。

 そしてリーズも刀を研ぎ終り、鞘に収めたところで、

「とうとう、この家ともおさらばだな!」

 俺とリーズは正体がばれないように、マントで身を包み荷物を持って家をあとにした。

 そして家を出て考えた。
 この王国に報復するにはどうしても多くの勢力と俺たち個人の力の両方が必要不可欠となる。どちらかが欠けた時点でもはや勝機がないことは目に見えているのだ。
 それだけ王国は強大な力を手にしている。
 
 でだ、そんな強大な王国と唯一競り合った国が過去に存在している。
 それは魔王と呼ばれる者が魔族たちを束ね、魔道具の技術もさることながら、軍事面でも圧倒していたと聞く。そんな国家を運営していた魔王となる人物はどれほど偉大な人物だったのか……。

 本当に力を授けてくれたあの人物が魔王だとするならば少々頼りない気もするが気のせいか? 

 でも今はここで呑気にしてられない。
 少しだが予定を変更し、王国に伝わる魔王と勇者の伝記を図書館に調べに行かねば……。
 何か参考になることが書かれているかもしれないからな。
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