最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

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戦争編〜第二章〜

第133話 嘘はついてない

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「来ますたね」
「来たな」
「来ちゃったな」

 冒険者3人で身を隠しながら検問が敷かれている第二都市を眺めた。

「リックさん、他の出入口はどうですた?」
「あー、駄目だな。人が動ける場所は無いし、入れる箇所は全部1箇所に集中してる」

 1番の問題点。第二都市に入る行為。
 クラップが兵を置くならここで、私達も避けて通れない地点。……元から避けるつもりは微塵もないけれど。


 第二都市の地形は簡単に言えば山。クアドラードには無いような険しい岩山がトリアングロには沢山ある。
 その岩山の斜面を街として開拓している様で、まさに自然の要塞。険しい岩山からは街に入れず、挑もうと思ったけど時間がかかる上き、何も準備がない私たちじゃまず無理。
 ダクアは円形の街だったけど、第二都市はL字型の地形だな。立体的に。

「魔法が使えれば話ぞ別口でしょうが」
「リィンならな。俺は無理。魔力も足りなければ打破出来る魔法もない」

 魔法職に有るまじきゴリ押し戦法が私の武器だからね。

 道中はちらほら国境から第二都市へと馬で駆けていく兵士は見えたけど、私たちに関しては触れられずに終わった。
 他のパーティーメンバーは不思議そうな顔をしていたけど、恐らく道中での捜索が山メインか早馬優先で目もくれなかった、が当たりだろう。まぁ結局待ち構えていることには違いないので割愛。

「んー。一応この状態でも侵入可能」
「え!? そうなのか!?」
「1つ目は崖から飛び降りるして、それで着地を魔法に任せる方法」

 魔法、の部分でグレンさんの式神を見せる。数に限りがあるから幹部の戦闘に遭った時に使いたい。

「2つ目は一般側ではなく兵士側から入る方法」

 検問が敷かれているのは一般側。外壁のどこかに恐らく兵士達の出入りする扉があるだろう。
 ただ、そこを選ぶと速攻でバレる可能性が高い。兵士はエリート中のエリートだろうし独自の文化があるだろうから。

「要するにまともな案はないってことよね」
「そういうこと」

 カナエさんの結論に肯定する。

「──ま、当初の予定通り正面突破ですね」

 別に誤魔化す必要は無いのだ。
 正直にいえばいい。



 ==========



 第二都市の検問。
 戦争中、第二都市だけではなく全ての都市の出入りを制限しているため、検問には複数の兵士が来訪する人を調べている。

「再重要人物なぁ」
「あぁ。幹部直々に調べているらしい。怪しい人物居れば速攻で捕獲しろ、とさ」
「いやそれでも情報少なすぎるって。金髪青目の女、黒髪黒目の女、白髪緑目の男、赤髪黒目の男、……である人間と。緑髪緑目女エルフ」
「髪色や瞳の色は変えられなくても他は変装でどうこうできるからな……」

 検問の担当は国境からもたらされた情報に首を捻る。

「ま、だいたい真正面から都市に入ろうとするわけないからな。調べるのは街の中メインだ」
「あー、あんまり俺らに関係ないってことか」

 実際街の中では兵士が複数創作をしている。
 曰く、魔法が使えるらしい。

「特に金髪の人間を探せ、だとさ」
「金髪の人間って珍しいよな。というか会ったことある?」
「珍しいから的にされてるんだろ」

 さて、仕事だ。

 検問に旅人らしき5人組が現れた。この戦時下に珍しい。


 男はこの第二都市を拠点とする空軍の兵士。会話の主導権を握るため、威厳たっぷりに言い放った。


「止まれ」
「──黙れ」

 めっちゃ切り返された。ちょっとビビった。

「命令するな、人間」

 フードを深く被った人物はどうやら機嫌が悪いようだった。

「…………。来訪の目的を聞こう」
「人探し」
「ほぉ、どこから」
「クアドラード」

 つまりは国境側から、ということ。先程話題に上げた話題もあり同僚と目配せをする。

「あー、すまないが規則でね。フードを取って顔を見せてくれるか」
「……チッ、人間社会は」

 フードを被っているのは2人。他の3人は非常にボロボロの格好で、泥だらけだ。

「シロ、椅子」
「はい」

 白髪の男が四つん這いになった。
 そうしてフードを被った小柄の人物はそこに座る。

 ……ドン引きである。

 あまりにも異様な空間に人目を集めすぎていてめちゃくちゃやばい。どうしようか、俺がここから逃げるにはどうしようか。
 男はただひたすらにこの場から逃げたかった。

「で、質問は?」

 小柄な人物と棒立ちの人物がフードを取る。
 顔が非常に整った金髪青目の女と緑髪緑目の女だった。


「(先輩、これって)」
「(いや…………決めつけるには早い。再重要人物はスパイだ。こう堂々とやってくるはずがない。話を出来るだけ引き伸ばせ、国境基地いた兵士を読んでくる)」
「(へ?)」

 先輩は逃げた。
 そう悟ったのはここで尋問するのは自分1人だと現状確認した所だ。

「あ、あっ、えっと」
「ご主人様」
「ん?」

 薄汚れた茶髪の男が金髪の女に耳打ちした。

「……。ふざけるな!」
「も、申し訳ございません! 申し訳ございません……何卒……何卒折檻だけは……」
「チッ」

 茶髪の男が震えて地面にベシャリと頭を打ち付けた。

 あ~~~~~嫌だな~~~俺ここめっちゃ嫌だな~~~~。
 クアドラードから来たって言ったよねこいつら。フゥ、流石敵国! 住民の性根も腐ってやがる!

「えーっと、身分の目的を細かく……お教え頂きたいです……」

 会話の主導権? そんなものは無い。

「クアドラード王国冒険者ギルド協会。王都支部サブギルドマスター、エルフ、エティフォールの妹」

 緑髪の女を指さしてそう言う。
 冒険者ギルド協会関連か……。

 男の思わず頬が引き攣る。戦争中であろうとも中立組織である冒険者ギルドは変わらず経営される。全国各地に支部を持つため、敵に回すと非常に厄介なのだ。

「グリーン領ダクア支部サブギルドマスター、エルフ、リリーの妹。代表、私」

 そして金髪が自分を指してそう言った。
 エルフ、と強調して言った所を考えると『決して人間などと一緒だと言わせない』って強い意志を感じる。

 特に詐称を許されない冒険者ギルドを名乗るってことは、本当なのだろう。冒険者ギルドの名前を使い、身分詐称をすれば厳罰対象一直線だ。

 中立組織に手を出すな。あそこは平和的な中立組織ではなく物理的に色々やってくる武装中立組織だ。これは世界中で有名な言葉。

 検問に残る兵士達は『冒険者ギルド協会』という言葉に怯んだ。
 しかもサブギルドマスターの名前を使っている。

「他、奴隷。以上」
「身分を証明出来るものはあるでしょうか」
「無い」
「なるほど……」
「何故私が人間、合わす必要」

 どうやら金髪の子はまだ子供のようだった。共通語の言語は上手くない。
 特に人間軽蔑の様子が見て取れる。

「名前を聞いても?」
「リアスフィア」
「後ろのお嬢さんは?」
「ーーーーー」

 風の様な言葉が緑髪のエルフから零れた。
 喋る言語は流石に読み取れないが、エルフの名前は聞き覚えがある。フィアとかフォールとかそういう奴。

「奴隷も必要か?」
「あ、あぁ」
「シロ愛玩、クロ翻訳、アカ雑用。男」

 奴隷の使用用途の話じゃねーーーーーよ!!!!!!!


 思わず頭を抱えた。

「……おまたせしました! ぜぇ、はぁ……。それで、問題の人物ってのは」

 どうやら国境にいた兵士が検問までやってきたようだ。思っていたより早かった。


 国境基地の兵士はリィンと、あと冒険者2名とエルフが逃げたと聞いて情報を伝えるために寄越された男だった。
 つまり『再重要人物』と面識があるという事。


 男は聞き取りのメモを見る。金髪エルフ、緑髪エルフ、奴隷3人。ふむふむ。身分はなるほど、ふむ。

 そして記憶と照合して訪れた5人組を見る。
 

「……」


 うん、これは無いわ。

「違いますね(確信)」

 そもそも嘆願書まで書いた我らの癒しリィンちゃんがエルフなわけが無いし幹部にしこたまやられてもめちゃくちゃ笑顔で元気良くて人に優しくできる女の子が、奴隷を椅子にして不機嫌そうに眉間にしわ寄せて鳥の鳴き真似でもしてるのかってほど舌打ち連発するガラの悪い女の子じゃない。
 あと白髪といえば冒険者のリックだが、こんなにイケメンじゃなかったしあいつが居るならグレンがいるはず。片隅で怯えている男……なわけがあるか。

「人探しって、誰を探しているのですか?」

 その質問をしてすぐ、枝を突きつけられた。
 ……いや、これは枝なのか? わざわざ玩具の様な枝を向けるほど馬鹿なのか?

 エルフの文化に詳しくないため警戒する。
 リアスフィアと言った女は枝を不規則に動かした。

「ふむ。なるほど」

 何がなるほどなんだこえーーーよ。

「お前の知る人物」

 そう言って問題の女は椅子から降り、都市の中へと足を進めた。



「…………いや怖っ」
「あれは、うん、流石に『追われてる者』の態度じゃねーわ……」
「言ってる内容は嘘ついてる様に思えなかったな」
「嘘つくならもっとまともな嘘つくだろ」

「……ま、一応エルフだから警戒する必要はあるし、グルージャ様に報告はしとくか」

 幹部の耳に入るならば問題は無い。

 そうして検問にいる者達は、起こった騒動に疲れて同時にため息を吐いたのだった。



 ==========




「やー、正直に言うって良きですね!」
「あれはハッタリって言うんだよ!!!!」

 耐えきれなかったグレンさんのツッコミが炸裂した。
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