最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

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戦争編〜第四章〜

第174話 異種族の狂乱

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「ぜぇ……ぜぇ……」
「はぁ……はぁ……」

 山が1つ潰えた。
 異種族が2人向かい合う。
 3つの隕石が落ちた。

「しつ……こいっての……! エルフ野郎がぁ!」

 獣人のコーシカがその筋力を使って見えないほどの素早さで飛びかかる。地面を蹴り、拳を握り締めた強力な一撃が敵を補足する。

「それは、こっちのセリフだ……! 獣人が!」

 対するルフェフィアは周囲に張り巡らせた魔力の糸がコーシカを察知したと同時に仕込んで居た地魔法を発動させ金でできた壁を作った。

 エルフの魔法である為、地水火風の四属性ではなく木火土金水の金魔法の〝ゴールドウォール〟であるのだが。

 ぐにゃりと曲がる金。拳が金にハマったコーシカは一瞬体制を立て直し回し蹴りをする。バキン、と完全に壁の形を失った。

「〝瞬間移動魔法〟ッッッ!」

 ルフェフィアの弟子であるリィンの十八番、空間魔法がその身を一緒で別の場所へと移動させた。
 リィンは視界に転移地点を入れておかなければならないが、ルフェフィアは背後へ飛ぶ。

「ガァアアッ!」

 咆哮と共にコーシカが追いつく。
 3回連続で距離を取った瞬間移動も、コーシカの速度とほぼ並んだ。

「くっ、そが!」

 〝オーシャンウェーブ〟

 後退しながら放った魔法はコーシカを飲み込んだ。
 津波である。

 それだけで終わる訳もなく。地面を抉る大規模な災害に氷の雨が降り注いだ。

「やれ、〝アイシスクル〟」

 精霊はルフェフィアの命令通り魔法を行使した。
 無数の氷柱が標的目掛けて放たれた。鋭利な矢で肌を突き刺す感覚がビリビリとコーシカに伝わる。

「うぅうぅ゛……ッ!」

 ガジリ。眉間を貫きかけた氷柱をコーシカが噛み砕く。
 するとルフェフィアの視界にビュンと何かが掠めた。

「……ッッッ!」

 咄嗟に顔を動かすも額に力強い衝撃が伝わる。地面に転がったの石。コーシカが津波の最中石を弾丸の様に吹き飛ばしたのである。

「(荒波に飲まれながら、なんつー判断能力だよ……っ!)」

 どくどくと額から血が流れる。
 怪我はもちろんそれだけではなく、魔法で避けきれなかった傷は無数。対するコーシカも、魔法により体力の消耗も激しく無数の傷が出来ていた。

 戦闘時間、2週間。

 気力も、体力も。お互いに限界に近い。

「げホッ、ゴホッゴホッ」

 魔法が消え荒波の中からゴロゴロ弾き飛ばされた獣人に大きな怪我はない。先程の攻撃では肩に浅く突き刺さっている程度しか傷つけられない。

「餌ならくれてやる。やれ、水を。〝ウォーターソード〟」

 半円を描く高速の刃は大地を切り裂いた。地獄の穴の誕生である。

「ぐるるるるる……」

 喉を鳴らしながらコーシカが避ける。再び魔法が放たれる。避ける。

「(おかしいだろ、こんっっだけ暴れまくってるってのに、援軍は無理として様子見1人来やしねぇ……!)」

 しかも二週間。
 するとコーシカは気付いた。濃厚な死の気配には。

「俺の得意魔法を教えてやるよ獣人」

 準備が完了したと言わんばかりの表情。
 ルフェフィアは人避けの結界魔法を最初から巡らせていた。邪魔者は、入らない。

「五行複合魔法」

 小さく呟くように魔法を。

「──〝エンド〟」


 5種類の魔法の同時行使。五つの魔法がコーシカを容赦なく攻める。

「ガアァッ!」

 水が切り裂き、金が貫き、大地が割れ、火が焦がし。
 ドカドカとコーシカの頭上に土が振りおちる。岩が振りおちる。

「くたばれ」

 そして大地に木が生えた。根を張り巡らせ、固く、大地が崩れぬ様に。念入りに。


 コーシカが生き埋めになった。
 ルフェフィアはしばらく待って反応が無いことを確認すると、ようやく息を吐く。

「はぁ~~~~~しんど……。だるっ」

 流血が収まらず、ルフェフィアは木に持たれた。
 何十年ぶりに本気を出しただろうか。

「悪いな獣人。譲れねぇんだよ」

 
『それで。元宮廷相談役のフェフィア様。力を貸していただきたいことがあるんです』

 あの時、王子様に言われた言葉を思い返す。戦争に力を貸せ、なんて言われればルフェフィアは断る気満々であった。異種族の力を使って、何が人の争いだ。人の在り方をトリアングロに示したいのであれば、人同士でやれ、と。

 だが王子が口に出したのはそれでは無かった。

『──トリアングロにいるリィンの、手助けをして欲しい』

 我ながら場所の制限があまりなく、何千年と生きているが故に知識も魔法も手に入れた自分の存在など。人間共にとっちゃそれこそ神に等しい。

「よりにもよって、いや、揃いも揃って」

 クアドラードの王族が頼むのはたかが小娘一匹の子守りだ。
 国王も騙していたという負い目があるのか、リィンに甘い。王子の考えを読んだ上で、ルフェフィアに『あの娘を頼む』なんてのたまった。
 ロークとてそうだ。戦い方も殺し方も、リィンには教えさせなかった。生き方を教える為の、家庭教師。

 ま、その中で自分のために頼み事するリィンは率直に言ってクソだし自己中だし卑怯だ。あいつ本当人間性無いな。



「はー、流石にきっつい。しばらく寝る」

 二週間戦いっぱなしだったので限界なのだ。


 ルフェフィアは大地の下に埋まった獣人に語りかける様に呟いた。


「人同士の揉め事ほど、陳腐なもんはねぇよな」

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