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第十一章 魔性の女とレンタル彼氏
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「私は萩野さんの仕事ぶりを見て感動したんですよ。日本にもこんなに優秀なエンジニアがいるのかと。だからあなたを塔から逃がすことにしたんです」
やや興奮気味に喋る弓削の頬は紅潮していて、いつもと違って人間味が感じられた。
それに常に人を見下すような態度を取っていた弓削が、みさをの実力をそこまで評価していたとは驚きだ。
みさをがラプンツェルで勝俣が魔女だとしたら、王子は弓削になるのか? 頼んでもいないのになぜそんな役に立候補を? まぁ、例え話の設定はどうでもいいか。
「それで平森さんに私を推薦したの?」
「そうですよ。透さんには昔から良くしてもらっていてね。アンギスなら萩野さんの才能を存分に活かせるでしょう」
「でもデジタル円の情報もアンギスに流したんだよね?」
みさをは自信満々の弓削をちくりと刺した。
「まぁ……。それは、雑談でちょっと口が滑ったかもしれません」
口が滑ったとは……呆れた言い訳だ。あれがWin-tecにどれだけ打撃を与えるか十分に分かっていたくせに。おそらく椎橋を寝返らせたのも弓削なのだろう。
それを受け、この短期間で結果を出した平森も相当抜け目がない。生き馬の目を抜くこの業界で登りつめた人だ。それくらい出来て当然ということか。
「とにかく平森さんなら萩野さんの望むものを全て与えてくれるんですよ。それを断るなんて、一等が当たった宝くじ破り捨てるようなものだ。絶対に後悔しますよ」
弓削の言いたいことは分かった。それにしても弓削は、平森がスカウトではなく結婚にこだわっていることを知っているのだろうか。
「弓削さんはこの件を手土産にアンギスに移るわけ?」
「いや、私は人の下で働くのは嫌なので、自分で起業しますよ」
みさをは当然のことを確認しただけのつもりだったが、弓削は意外な答えを返してきた。だとしたら、こんなことをして弓削に何のメリットがあるのだろう。
それに全体の計画を立てたのは弓削だが、結局何一つその計算通りに進まなかったのではないか。そう思うと弓削も案外間が抜けている。
平森はみさををスカウトせず、勝俣があんな風に暴走することも想定外だっただろう。一方でみさをはキキと……。人の気持ちは複雑で、そう簡単には操れないものなのだ。
この期に及んでまだみさをを説得しようとしている弓削のつぶらな瞳を見ていると怒る気も失せてきた。
「だったらもう、人に余計なお節介焼いてないで自分のことしなさいよ」
みさをがため息まじりに言うと、弓削は子供のように口を尖らせた。
まだ何か言いたそうな弓削に、「じゃあね」と軽く手を上げて別れを告げた。
やや興奮気味に喋る弓削の頬は紅潮していて、いつもと違って人間味が感じられた。
それに常に人を見下すような態度を取っていた弓削が、みさをの実力をそこまで評価していたとは驚きだ。
みさをがラプンツェルで勝俣が魔女だとしたら、王子は弓削になるのか? 頼んでもいないのになぜそんな役に立候補を? まぁ、例え話の設定はどうでもいいか。
「それで平森さんに私を推薦したの?」
「そうですよ。透さんには昔から良くしてもらっていてね。アンギスなら萩野さんの才能を存分に活かせるでしょう」
「でもデジタル円の情報もアンギスに流したんだよね?」
みさをは自信満々の弓削をちくりと刺した。
「まぁ……。それは、雑談でちょっと口が滑ったかもしれません」
口が滑ったとは……呆れた言い訳だ。あれがWin-tecにどれだけ打撃を与えるか十分に分かっていたくせに。おそらく椎橋を寝返らせたのも弓削なのだろう。
それを受け、この短期間で結果を出した平森も相当抜け目がない。生き馬の目を抜くこの業界で登りつめた人だ。それくらい出来て当然ということか。
「とにかく平森さんなら萩野さんの望むものを全て与えてくれるんですよ。それを断るなんて、一等が当たった宝くじ破り捨てるようなものだ。絶対に後悔しますよ」
弓削の言いたいことは分かった。それにしても弓削は、平森がスカウトではなく結婚にこだわっていることを知っているのだろうか。
「弓削さんはこの件を手土産にアンギスに移るわけ?」
「いや、私は人の下で働くのは嫌なので、自分で起業しますよ」
みさをは当然のことを確認しただけのつもりだったが、弓削は意外な答えを返してきた。だとしたら、こんなことをして弓削に何のメリットがあるのだろう。
それに全体の計画を立てたのは弓削だが、結局何一つその計算通りに進まなかったのではないか。そう思うと弓削も案外間が抜けている。
平森はみさををスカウトせず、勝俣があんな風に暴走することも想定外だっただろう。一方でみさをはキキと……。人の気持ちは複雑で、そう簡単には操れないものなのだ。
この期に及んでまだみさをを説得しようとしている弓削のつぶらな瞳を見ていると怒る気も失せてきた。
「だったらもう、人に余計なお節介焼いてないで自分のことしなさいよ」
みさをがため息まじりに言うと、弓削は子供のように口を尖らせた。
まだ何か言いたそうな弓削に、「じゃあね」と軽く手を上げて別れを告げた。
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