借りてきたカレ

しじましろ

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第四章 おかしな同居

(11)

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「あー疲れた」

 家に帰るとみさをは一目散にソファに向かい、だらしなく寝そべって足を投げ出した。お気に入りの服が皺になることなどどうでもよくなっていた。

 特に何をしたわけではなく、ただ話を聞いて座っていただけで、こんなに疲れるなんて。
 勝俣に頼んで、今後接待はもう勘弁してもらおう。あんなことをするなら、四十八時間ぶっ通しでコード書いてた方がよっぽどマシだ。

 緊張していたため、出された料理にもほとんど手をつけられなかった。

 お腹が空いていると言ったら、キキが残りご飯でお茶漬けを作ってくれた。

「んー、料亭の料理よりもこっちの方が全然美味しいよー」

 お世辞でなく、体が中から温まり、本当に生き返った気分になった。

「それにしてもみさをさんって、ホント良く働くよね。なんでそこまで出来るの?」

 キキが缶ビールを持ってきて横に座る。

「何、それ嫌味?」

「違うよ、就活生の素朴な疑問」

 キキは笑顔で否定した。

「なんでって……。難しい課題をこなせれば達成感もあるし、出来たものが人の役に立てばなお嬉しいし、結局仕事が好きってことなのかな」

 深く考えたことはなかったが、頭に浮かんだままを言葉にしたら、そんな答えになった。

「ふーん。そんな風に言えるのって羨ましいな。俺はきっとそんな風にはなれないだろうな」

「大丈夫だよ。キキは頭も良いし、コミュニケーション能力も高いから、どこに行ってもうまくやっていけるよ」

「でもそれって器用貧乏ってやつだよね?なんでも出来るってのは逆に言えば飛びぬけた才能がないってことだし」

 自信家のキキが珍しく弱気なことを言う。

「Win-tecはどうなの? インターンに来たくらいだから興味はあるんでしょ」

「うーん、インターンは面白かったけど、なんとなく俺にIT業界は向いてないのかなって思った。勝俣社長が言ってたバイタリティとか全然ないし。俺はもっと地に足のついた会社の方がいいかも」

「そう。まだ時間はあるし、ゆっくり考えたらいいよ」

 みさをはそう言いながら、キキの人生は本当にまだ真っ白なんだと改めて思った。これからどんな道にも進んで行けるなんて、そこにはもう戻れない大人からすると、夢と希望に溢れた素晴らしい時期に思える。

 真剣に悩んでいるキキには言えないが、少しだけキキが羨ましくなった。

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