FORBIDDEN【オメガバース】

由貴サクラ

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1章 一人のオメガと二人のアルファ

(23)★

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「ん……」
 耐えるように小さく声を漏らすと、僅かな変化も見逃さない颯真が、異変を素早く察知した。
「そろそろか?」
 潤は目を閉じたまま頷いた。本当に薬が切れるのは早いと思う。 

「ん……あ」
 寝間着のシャツの合わせを握り込む。股間に違和感を覚える。脚をぎゅっと閉じるが、もぞもぞと布団のなかで身体が動いてしまう。急に快楽の階段を駆け上がらされているような感覚で、戸惑いしかない。
 横向きになり身体を丸めて、なるべく快感を拾わないような体勢を無意識で探してしまう。
 もう身体中がぞわぞわと泡立つ感じに、自然と身体に力が入り、無言で耐える。


 颯真が、力を抜けと、アドバイスをする。
「身体の力を抜いて、すべてを受け入れたほうが楽になる」
 しかし、突然の変化に戸惑いを隠せない潤はどう対応していいのか分からない。枕の端を握り込んで、颯真を見上げた。
「大丈夫、口で呼吸をして」
 颯真が呼吸を誘導してくれる。大きく吸って、吐いて、と潤の身体のこわばりを解こうとしてくれる。潤も颯真の言葉に従い、口で深呼吸を繰り返す。すると、不快で恐怖さえ感じるような快感はそのままだったが、身体の力が抜けて、少し楽になった気がした。


 すると颯真がベッドサイドに跪いて、潤を見る。

「潤、少し診せてくれ。下着取るぞ」
 突然の言葉に潤は驚く。いきなり何を言っているのだ。思わず目を剥く。
「え。やっ」
 拒絶の言葉がついて出た。掛け布団をたぐり寄せたが、颯真は容赦がない。

「完全に発情期が来て、ぐずぐずになってから診られたいか?」
 潤は言葉に詰まる。自分の意識がないときに、下着をはぎ取られて診察されるのだけは嫌だ。潤が先程以上に明確な拒絶の意志を見せると、じゃあ、恥ずかしくないように手早くするから今診せてと説得される。

「布団の中でズボンと下着を脱ぐだけでいいから」
 掛け布団の下でもぞもぞとパジャマのズボンを脱ぎ、下着も取る。これまで何度か発情の波に晒されたため、すでに下着も体液を吸って湿っぽくなっているのが分かる。性器はすでに硬く上を向きかけていて、布に擦れる刺激だけで気持ちが良くてうっとりとしてしまいそうだ。
 身体がぞわぞわとしているせいか……というか、これが発情期なのだろうか。下着とパジャマを着けているより、脱いでしまった方が、訳もなくすっきりする。
 

 潤が布団の中で支度を調えていると、医療用グローブを手に嵌めた颯真が、布団の上から潤の脚に手を添えた。


「支度できた?」
 潤が小さく頷くと、颯真が仰向けになって、膝を立てて、脚を開いて、と受診体位に誘導する。これまで衣服に守られていた部分の肌がシーツにひんやりと触れ、気持がいい。程よい心地よさを身体の感覚が拾っていて、自然と内部が潤んできているのを自覚する。

 颯真に言われるまま、潤は膝を立てて脚を開いた。この体勢では、屹立しかけている自分の中心が見えてしまうに違いない。少し……いや、かなり恥ずかしい。
「力抜いて。ちょっと診るだけだから」
 颯真が足許の掛け布団を剥いで、その場所を露わにした。冷たい空気が脚を撫で、中心部もひんやりとした空気にさらされる。
 潤はぎゅっと目を瞑った。足許から冷静な颯真の声が響く。
「指、入れるよ」
 指で肌を広げられ露出したであろうその場所に、何かが入ってきた。それは颯真の指であることは明確なのだが、これまで受け入れていたものとは違う気がした。

 潤は思わず目を開く。
 それは、足りない何かが埋まるような、不思議な安堵を伴う充足感だった。

 颯真の指が潤の後孔に入り込み、ぐるりと内部を撫で上げる。これまでとは全く違う感覚を拾ってしまい、潤も戸惑うほどであった。

 屹立しかけた潤の性器に、熱が不意に集まるのを自覚した。性器は思わぬ快感に晒され、質量を増した気がする。


 下半身に力がぐっと入ってしまう。
「ん……」
 思わず、口許を掛け布団で抑えて声を漏らすと、潤の下半身を覗き込んでいる颯真が、大丈夫かと気遣った。潤も辛うじて、平気と返す。

「怖くないから、力抜いて」
 颯真の手が潤のふくらはぎに触れ、優しく宥める声が聞こえる。潤も浅く息を繰り返して懸命に力を抜く。

「そうそう、上手」 
 颯真の声が股間から聞こえる。

 単なる診察なのに……。
 潤が熱いため息を密かに漏らす。

 なんでこんなふうに感じているのだろう。しかも、実兄の指なのに。


「もう終わるからな」
 颯真が素早く指を引き抜き、再び掛け布団でその場所を覆った。医療用グローブを外しながら言う。
「頑張ったな。もう発情期が始まってるぞ」
 これで確定診断はついたらしい。
 これからどのくらい続くのか変わらないという発情期だ。おそらくいつ始まったという確定診断がつかないと、終わりも分からない。必要な診察なのだとぼんやりと思った。


「症状が結構出てきてるよな。しんどいならば出しちゃえよ、少し楽になるから」
 颯真には立ち上がりかけている屹立が丸見えだったのだから、出せ、というのはそのような意味なのだろう。
 彼の指が入ってきて、感じてしまっていたのがバレていないか、不安になる。


「そんな……恥ずかしいよ」
 颯真が掛け布団を抱え込むように顔を半分隠す潤を諭す。
「ここは誰も来ないし、香りも漏れないから」

 決して間違いではないのだが……。
「だって、颯真は入ってくるじゃん……」
 しかし潤の言葉を颯真は意に介さない。
「兄弟だろ。同じものが付いているんだから恥ずかしくないよ」
 たしかに正しい。そのとおりではあるが、オメガの潤とアルファの颯真ではずいぶん違うのではないかと思うのだが。

 颯真によると、病院の特別室でオメガの患者さんの自慰はよく見るらしい。しかし、そう言われて潤は余計に恥ずかしくなった。颯真には見慣れた風景なのかもしれないが、自分は違う。潤は焦る。恥ずかしさと戸惑いと、容赦のない快感で目に涙が溜まってくるのが止まらない。
 そんな心情が颯真にも伝わったらしい。

「そんなに嫌な顔をされるとな。わかったよ。俺も極力ここには入らないようにする。何かあったら呼んでくれればいいよ。だから、ちゃんと処理しちゃえよ。それで楽になったら、少し寝たらいい。いつ休めるか分からないからな、寝られるときに寝ておいたほうがいい」
 
 アドバイスによほどに不安そうな顔を浮かべてしまったのだろう。発情期ってそういうものだから、と慰められた。
 何かったらラインでもいいから呼べよ、と言い残し、颯真が部屋を出ていった。
 陽が傾き始めている。エアコンはつけてくれていたようで、室内で寒さは感じないが、物寂しさをわずかに感じる。人……、颯真がいなくなったためかもしれない。

 潤は手元がおぼつかないままパジャマの上着のボタンを外して全裸になった。特に全裸になる必要はないのかもしれないが、身体が火照って仕方が無いのだ。
 さらりとした感触のシーツに身体を横たえ、潤は発情のために屹ち上がった性器を手にする。すでに硬く怒張しており、先走りでとろとろになっている。
 そして、親指と人差し指で輪っかを作り、おそるおそる擦り上げる。
 
 そのダイレクトな快感に、思わず深く息を吐く。
 きもちがいい……。

 颯真が置いていってくれたローションが不意に視界に入る。あれを使ったらもっと気持ちよくなるかも、と躊躇いなく手に取って、塗りつけた。

「くっ……あん」
 上下にしごくと、ぞわぞわと下半身を快感が駆け上がり、手が離せなくなる。
 ベッドの上で身体を捩りながら、己を慰める行為に没頭する。屹立してもなお、ささやかな大きさにしか成長しない分身を見ると、自分の身体がまさに受け入れる側であることを実感されられるが、発情期というもの、自分を慰める行為がこんなにも刺激が強く、かつ気持が良くて、満たされるものなのだと、初めて知った。


 潤は自分を慰めながら、仰向けになる。先程の颯真が診てくれたときの体位のように膝を曲げて、脚を大きく開く。アルファを受け止めるために変化した、アナルが空気に触れる。かなりオメガ特有のフェロモンが出ているようで、空気に触れて少し冷たくてキモチガイイ。
 快感で脚を立てる力もなくなり、重力にされるがまま膝がシーツの上に沈む。だらしなく脚を開いたまま、己の中心部を慰める姿は、誰かがいたらできないだろうなと役立たずの頭の隅で考える。
 これはすべてを晒しているからこそ得られる快感なのだろうかと思った。

「は……ああん」
 思わず声が漏れる。
 もっと、もっとと身体が快感を欲している。

 もし、と快感で湧いた頭にふと考えが過ぎった。
 ……自分の指を入れてみたら気持がいいのかな。
 潤はそんな考えに駆られ、それから放れられなくなった。

 恐る恐るその場所に中指を当てる。少し力を入れて押し込むと、いともかんたんに指先が入った。
「ふぅ……ん」
 思わず声が漏れる。身体が強ばったが、入ったという興奮で、さらに熱が集中した。
 
 気付けば、その場所は自分の中指をずっぽり飲み込んでおり、それに興奮して潤自身が極限までいきり立つ。
 くちゅくちゅと水音を立ててかき回してみると、身体の奥から何かがぞわぞわとやってくる。その感覚に肌が総毛立った。
 ぬるぬるとローションと先走りに濡れる性器を、上下に夢中になって扱き上げる。

「あっ……はっ……」
 もう口から漏れるのは快感を追う呻きだけで、言葉ではない。言語機能など、とうに壊れていた。
 
 右手で性器を扱き、左指を二本自分の中に埋め込んでぐるぐるとかき回した。
 キモチヨクテドウニカナリソウ……。

 快感を追う本能に忠実になっているのに、なぜか両眼からはらはらと涙が落ちる。その涙を払うように、眼を強く閉じて、頭を左右に振った。
「あっ……イク……」
 腰が激しく揺れ、性器から白濁を吐き出した。

「はぁぁ……あん!」
 潤の指が入った中が、うねったのが分かった。

 潤は己の中に指を入れたまま、ベッドに身を横たえた。
 とたんに、疲れに襲われ動けなくなった。
 
 気持いいけど……しんどい…。
 そして。眠い……。
 潤はシーツに身を横たえて、そのまま意識が深海に落ちていった。
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