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君のために

ただいま

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 お昼前ぐらいに家の扉が開く音がした。
 「ただいま」
 足音は白斗はくとの部屋に近づいてくる。扉の前に止まり、一瞬ノックする手が
 ノックして扉を開ける。まだ白斗は寝息を立てて寝ている。チラッと部屋の隅に目をやるがすぐに白斗の方に視線を戻す。
 「あ、」
 行きに言われたことを思い出し、てんに帰って来たと連絡を入れた。
 白斗の髪の毛に触れる。短いためすぐにすらっとベットに戻る。
 「・・・白斗。あと、5年の辛抱だから」
 そう呟いて部屋を出た。
 
 数分後、家の開く音がして槇が入って来た。
 「おかえり直也なおや
 「ただいま。」
 椅子を引いて槇は直也の向かい側に座った。
 「それで、本題なんだが・・・
 「お父さん、先にお昼にしよう。お腹すいた。」
 「あぁ」
 朝、葉が用意してくれたご飯を並べる。
 2人でお昼を食べる。気まずくはなかったが静かだった。

 「・・・」
 「お父さん、話して」
 「・・・・白斗君が発情して、直也は俺達に助けを求めただろ?」
 軽く頷いた直也を見て「それで」と続ける。
 「それで、その時・・・俺、直也からの電話気づいていたんだ。」
 何も言えないのか直也が槇の顔を見る。
 「・・・・きづ・・」
 言おうとしたことを飲み込んだ。
 「スマホが繋がっただろ?俺は連絡が来てたから出ようとした。・・・でも、近くに校長がいたんだ。」
 「こ、校長が・・・?」
 「あの時、見学しに来ていたんだ。今、研究室では高度な技術を使って一回に2人産める『双子』を作れる薬を開発中なんだ。今までの薬は双子まで追いついていなかった。今はまだ模索中だが、完成も近い。それで校長はたまに見に来ることがあった。」
 「じゃあなんで・・・なんでそのまとらなければ俺はお父さんに期待してなかった」
 「・・・ごめん。電話が繋がっていたことに気づいたのは俺の後輩だ。スマホが床に落ちて、それを拾って電話を切ったのは・・それでも悪かった。」
 「・・・・」
 頭を下げ続ける。その間直也は何も言わない。数分して「お父さん」と声をかけた。
 「白斗の薬の効果を切らす薬を研究して、校長にバレないように、そしたら許す」
 
 そう言って立ち上がり、槇に背を向けた。
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