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上機嫌な男
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2日ほど出かけた後のイアンは上機嫌だった。
「ねえ、ダルトン。エリー達に聞いても知らないって言うの。
何であんなにイアンは機嫌がいいの?」
「私どもには分かりかねます」
補佐官は知らないと言う。
「オードリック」
「分かりません」
「ワイラー卿なら知っているかしら」
ワイラー卿を探しに行くと黒髪のレミが歩いていた。
「レミ~」
「ラヴィア様」
「ワイラー卿が何処にいるか知ってる?」
「勤務中ですね」
「レミはイアンの機嫌が良い理由を知ってる?」
「パトリック王子を処分できたからじゃないですか」
「処分?殺したの!?」
「違います。バルド領に入ったと知らせがあったので捕えました。
そして隣国のご友人を紹介しました」
「え?イアンの友人?」
「はい。仲が良いらしいです。すごく美人で巨乳らしいですよ」
「……ふぅん」
【 イアンの視点 】
隣国の女辺境伯に王子をプレゼントしてスッキリした。
彼女は父と同年代で、美しく豊満な胸を持った女剣士だった。
男児が産まれなかったので娘に継がせるか、婿養子を取るか先代の辺境伯は悩んでいた。
隣接した土地で国境を守る者同士、バルド家との関係は良好だった。
そこで相談を持ちかけられた。
避けられない有事のときは互いに事前に開戦の連絡を入れ、それ以外は良好な関係を保つという約束事だった。
婿養子を取ろうにも娘の好みが軟弱な美男子だったから役に立たない。
娘に継がせるための申し入れだった。
父も彼女も互いに好みではないので友人として関わるようになり、息子の俺も何度か会った。
子供の頃に見た彼女は妖艶な女だったけど、すっかり変わり果てた。だが中身は同じだ。俺も父と同じで彼女は好みではない。だから中身さえ変わらなければ良かった。
今回、パトリック王子の脱走で閃いた。
パトリック王子は跡を継いだ女辺境伯の好みだと。
だから捕えて引き渡した。
邪魔者はいなくなって良い気分だった。
なのに何故、ラヴィアに避けられているんだ?
ラヴィアの専属メイド達も俺に冷たい。
食事を一緒にとるのは朝食だけ。ラヴィアはずっとティラミスとシラタマに話しかけているし、夜、夫婦の寝室に来てくれない。
目すら合わせない。
ワイラー達や補佐達に聞いても知らないと言うし、侍従は“浮気がバレたんじゃないですか?”とか言い出すし。
「え?旅に出る!?」
「母方の祖母にでも会いに行こうと思います」
「俺も行く」
「国境を守る方が度々不在ではいけません」
「俺と一緒じゃなきゃ駄目だ」
「そんな決まりはありません」
「ラヴィア!」
「っ!」
「違うだろう?何が気に入らない」
「……」
「あんなに避けられたら嫌でも気付くぞ」
「……」
「ちゃんと話せ」
「じゃあ、自分だって話したら?
美人の巨乳と仲良くしてるって」
「は?」
「私は小さい方ですからね。経験豊富なバルド侯爵ですもの、私では満足なさらないでしょうね」
「ラヴィア、何の話だ!」
腕を掴み問い詰めると、強気なラヴィアの表情は一気に崩れて幼子のように泣き出した。
「ふぇ~ん!!」
「グルルルルルル」
「ち、違う、ティラミス、違うぞ、虐めてないからな」
「ウーッ」
「シラタマ…違うんだ、虐められているのは俺だ」
もうティラミスは成犬と言って良いほどデカい。
シラタマは既に靴の踵に噛み付いている。踏んでしまいそうで怖い。
俺を“バルド侯爵”なんて呼び方をするくらい怒っているのは分かったが、何のことか分からない。美人の巨乳!?浮気なんかしてないし、巨乳は俺の好みじゃない!
バン!
「ラヴィア様!どうなさいましたか!」
「まあまあ、お可哀想に。お部屋に戻りましょう」
サラとローズがノックもせずに入室し、泣いているラヴィアを連れて行ってしまった。
ティラミスもついて行った。
シラタマはラヴィアがいないことに気付いていない。
首根っこを掴み持ち上げるとシラタマは目を逸らした。
「こら」
抱っこして腹を撫でてやると尻尾を振り出した。
「ラヴィアもシラタマみたいに単純だったらなぁ」
「ねえ、ダルトン。エリー達に聞いても知らないって言うの。
何であんなにイアンは機嫌がいいの?」
「私どもには分かりかねます」
補佐官は知らないと言う。
「オードリック」
「分かりません」
「ワイラー卿なら知っているかしら」
ワイラー卿を探しに行くと黒髪のレミが歩いていた。
「レミ~」
「ラヴィア様」
「ワイラー卿が何処にいるか知ってる?」
「勤務中ですね」
「レミはイアンの機嫌が良い理由を知ってる?」
「パトリック王子を処分できたからじゃないですか」
「処分?殺したの!?」
「違います。バルド領に入ったと知らせがあったので捕えました。
そして隣国のご友人を紹介しました」
「え?イアンの友人?」
「はい。仲が良いらしいです。すごく美人で巨乳らしいですよ」
「……ふぅん」
【 イアンの視点 】
隣国の女辺境伯に王子をプレゼントしてスッキリした。
彼女は父と同年代で、美しく豊満な胸を持った女剣士だった。
男児が産まれなかったので娘に継がせるか、婿養子を取るか先代の辺境伯は悩んでいた。
隣接した土地で国境を守る者同士、バルド家との関係は良好だった。
そこで相談を持ちかけられた。
避けられない有事のときは互いに事前に開戦の連絡を入れ、それ以外は良好な関係を保つという約束事だった。
婿養子を取ろうにも娘の好みが軟弱な美男子だったから役に立たない。
娘に継がせるための申し入れだった。
父も彼女も互いに好みではないので友人として関わるようになり、息子の俺も何度か会った。
子供の頃に見た彼女は妖艶な女だったけど、すっかり変わり果てた。だが中身は同じだ。俺も父と同じで彼女は好みではない。だから中身さえ変わらなければ良かった。
今回、パトリック王子の脱走で閃いた。
パトリック王子は跡を継いだ女辺境伯の好みだと。
だから捕えて引き渡した。
邪魔者はいなくなって良い気分だった。
なのに何故、ラヴィアに避けられているんだ?
ラヴィアの専属メイド達も俺に冷たい。
食事を一緒にとるのは朝食だけ。ラヴィアはずっとティラミスとシラタマに話しかけているし、夜、夫婦の寝室に来てくれない。
目すら合わせない。
ワイラー達や補佐達に聞いても知らないと言うし、侍従は“浮気がバレたんじゃないですか?”とか言い出すし。
「え?旅に出る!?」
「母方の祖母にでも会いに行こうと思います」
「俺も行く」
「国境を守る方が度々不在ではいけません」
「俺と一緒じゃなきゃ駄目だ」
「そんな決まりはありません」
「ラヴィア!」
「っ!」
「違うだろう?何が気に入らない」
「……」
「あんなに避けられたら嫌でも気付くぞ」
「……」
「ちゃんと話せ」
「じゃあ、自分だって話したら?
美人の巨乳と仲良くしてるって」
「は?」
「私は小さい方ですからね。経験豊富なバルド侯爵ですもの、私では満足なさらないでしょうね」
「ラヴィア、何の話だ!」
腕を掴み問い詰めると、強気なラヴィアの表情は一気に崩れて幼子のように泣き出した。
「ふぇ~ん!!」
「グルルルルルル」
「ち、違う、ティラミス、違うぞ、虐めてないからな」
「ウーッ」
「シラタマ…違うんだ、虐められているのは俺だ」
もうティラミスは成犬と言って良いほどデカい。
シラタマは既に靴の踵に噛み付いている。踏んでしまいそうで怖い。
俺を“バルド侯爵”なんて呼び方をするくらい怒っているのは分かったが、何のことか分からない。美人の巨乳!?浮気なんかしてないし、巨乳は俺の好みじゃない!
バン!
「ラヴィア様!どうなさいましたか!」
「まあまあ、お可哀想に。お部屋に戻りましょう」
サラとローズがノックもせずに入室し、泣いているラヴィアを連れて行ってしまった。
ティラミスもついて行った。
シラタマはラヴィアがいないことに気付いていない。
首根っこを掴み持ち上げるとシラタマは目を逸らした。
「こら」
抱っこして腹を撫でてやると尻尾を振り出した。
「ラヴィアもシラタマみたいに単純だったらなぁ」
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