【完結】双子の公子様に執着された貧乏モブ令嬢になりました

ユユ

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約束しましたよね?

黒髪の従者は目をキラキラさせた。

〔教えてください〕

〔お米を研いでないんです。そのまま、もしくは付着したゴミを除くためにサッと水を通す程度なのでヌカの風味が強いんです〕

高性能の精米機で精米したお米ならいけるかもしれないけど、馬車に乗ってるくらいだからそんなもの無いし。

〔そうなのですね〕

〔では、失礼します〕

〔待ってください〕

〔何ですか〕

〔美味しくなる炊き方をここの料理人に教えてもらえませんか〕

〔ご自身で教えたらよろしいではありませんか〕

〔私は炊事をしたことがなくて〕

〔一行の中にどなたか一人くらいはご存知ですよ〕

〔……〕

〔シオン、遅いぞ。早く来い!〕

〔ですが、〕

「失礼しますね」

デザートは諦めて、逃げるように人混みに紛れカーテンの後ろに隠れた。

多分お米が主食の国よね。なのに研ぎ方を知らないの!?危うく仕事が増える所だったじゃない。

「メイちゃん、何をしているんだ?」

「ひっ!」

至近距離に王太子殿下の顔があった。

「幽霊扱い?普通は頬を染めて“きゃっ”とか言うものだろう」

「…“ひっ”であってます」

「で、何で隠れてるの?」

「ちょっと隠れたくて」

「事情を話すなら王族控室で匿ってあげるよ?」

「……」

「雷国の皇子と従者から逃げてるんだろう。
向こうにデザートを運ばせるよ?」

全部見てたんじゃない。

「行きます」

王太子殿下に連れられて会場から出る途中に褐色の肌の3人に会った。

[王太子殿下、こちらにいらしたのですか]

「マズい、通訳は何処だ」

王太子殿下が通訳を目で探し始めた。
早く控室に行きたいので教えてあげた。

「ここにいたのかと言っています」

「……トイレに行くから王妃のところに行ってくれと伝えてくれ。通訳もいるはずだから」

[恐れ入りますが、王太子殿下はトイレに駆け込まないとなりませんので、王妃陛下の元へお願いいたします]

[…すごいな。バランで生まれ育ったかのように流暢だ。君は誰だ?]

[お、王太子殿下の侍女みたいな者です。殿下が粗相をしてしまいますので失礼させてください]

「何て言ってるんだ」

「挨拶しただけです」


褐色の3人は…

[あの娘は何と言っていた]

[私達と何を話したのかとの問いに“挨拶しただけだ”と]

[ハハッ 漏らしそうだと言っているとは知らないのだな?]

[怖い通訳ですね]

[幼いし通訳ではないな。第五王子の繋がりの令嬢だろう。後で呼ばせてくれ]

[かしこまりました]



王族控室では王太子殿下に米の研ぎ方を説明した。

「それであんなに臭うのか」

「かなり大袈裟に言うと土のついたままの野菜を食べている感じです。
でもヌカは腸にも肌にも良いらしいですよ」

「分かった。メイちゃんは雷皇国のことを知っているのか?」

「知りません」

「どうして米の研ぎ方を知っているんだ?」

少し嘘を混ぜよう。

「不味かったので試行錯誤しました。モヴィー家は貧乏なので何にしても工夫が必要でしたから」

「そうか」

「説明したやり方で、カルデック邸で研いで炊いていますので間違いないです。ニコラ殿下も好きみたいですから大丈夫だと思います」

「あいつ、食べに行っているのか」

「毎日のように外出届を出しておいて自由に来ます。来ないときは予定が変わったと言って戻ればいいだけですから。突然だと叱られるので悪知恵を捻り出したようです」

「なるほどな。
で、君は神のいとし子か何かか?」

ギクっ

「お伽話ですか?」

「嘘が上手くないな」

「全面黙秘します」

「問い詰めたいが、愛し子ならマズいのだろうな」

「……」

「……しかし酷いよな。愛し子にするなら裕福な家の子にしてくれたらいいのにな」

「本当ですよ!こっちに来たらど貧乏底辺貴族で女性蔑視の家ですよ?」

「だよな」 ニッコリ

「あ…」

「よし、聞かせてもらおうか。誰にも言わないから」

「誓約書をお願いします」

「え?」

「他言したら全財産の没収と平民落ちして私の従者として一生無料で働いてください」

「は、母上と父上くらいは、」

「駄目です」

「母上だけ、」

「黙秘します」


第二王族控室を人払いさせて誓約書を書かせ、全部話した。

「ニコラは知っているのか?」

「知りません」

「双子は?」

「知っています」

「超美形の神様に殺されて放り込まれたのか。
しかもここは小説の世界?」

「はい」

「で、外国語は神様の授かり物、数学と音楽はミカのもの、後は元の男爵令嬢のものなのだな?」

「はい。生活に関することなどは両方の記憶でやっています」

「噂のピアノ…聞きたい」

「対価をください」

「え?」

「神様が対価を払っているのに王太子殿下は払えないと?……ファラル様~!!」

「分かった!分かった!!神様を呼ぶな!」

ニヤリ。

「で、何を望む」

「私の意思を優先することです」

「そんなことでいいのか?」

「はい。ではもう一枚誓約書をお願いします」

カリカリ カリカリカリカリ カリカリ………

「…王太子殿下のために3曲弾いたら 王家はメイ・モヴィーの意思を優先し続けなければならない……これはメイちゃんのことに限ってだよな?」

「はい」

「分かった」

王太子殿下は署名をしてくれた。

「では、ピアノのある部屋に案内してください」

「今から?」

「はい」

「じゃあ、母上を」

「これは私と王太子殿下の取り引きです」

「もう少しパーティを不在にしても大丈夫か」


そして部屋を移り3曲弾き終わった。

「メイちゃん、すごいな」

「それほどでもございません」

「知らない曲ばかりだった」

「私はこちらの世界の曲を知りません。モヴィー家は音楽とは無縁でしたし」

「そうか。では、明日にでもみんなの前で弾いてくれ」

「嫌です」

「え?…」

「もう王太子殿下の前で弾きました」

「だって、」

契約は発動しています。私の意思を王家がずっと尊重するのですよね?

「え?」

ドレスのポケットから誓約書を出して広げて見せた。

「ご覧ください。
王太子殿下お一人に3曲弾いてしまえば、は尊重しことになります」

「ず、狡いぞ!」

「兄弟そっくりですね。
王太子殿下と男爵家の娘という私との格差と歳の差を考慮しても、私は狡いですか?
それとも書面の意味を噛み砕いて考えなかった王太子殿下の迂闊さうっかりでしょうか」

「……ニコラと似てる?」

「言葉選びや話し方がよく似ています」

「そうか」

王太子殿下は嬉しそうに笑っていた。





※ 見辛いかもしれませんが、
 〔 〕 は雷皇国の言葉、
[ ]はバラン王国の言葉です。

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