【完結】双子の公子様に執着された貧乏モブ令嬢になりました

ユユ

文字の大きさ
35 / 42

卒業

しおりを挟む
妊娠騒動からから1年以上が過ぎた。
今日は卒業パーティ。みんなと過ごす最後の日だ。

今年はパートナーはあえて作らずに個々で出席するという、独り身に優しい仕組みになった。
おかげで卒業生とその親だけなので混雑も緩和されたらしい。

ライヤーさんは退学になった。
産まれた子は副学園長にそっくりの男児だった。髪や瞳の色も同じで、言い逃れることができないほどだ。
副学園長の顔は少し特徴があって、馬に似ている。顔が長く少し目が離れがちで鼻の穴が大きい。
ライヤーさんはどうして副学園長と寝たのか。しかも一度ではないらしい。
もしかして、Aクラスでいられたのは副学園長から試験内容を教えてもらっていた?

とにかく、副学園長は解雇。
どこかの子爵の弟らしいし、妻も子も孫もいる。
ライヤーさんと子は元副学園長に引き取られた。

ニコラ殿下は安堵した。


「メイ、卒業おめでとう」

「ニコラ殿下、卒業おめでとうございます」

「約束を覚えてる?」

「もちろんです。ファーストダンスですよね?」

1ヶ月前、ニコラ殿下から愛の告白を受けた。
丁重にお断りをしたら泣かれた。
ニコラ殿下という人のことは好きだ。美男子だし頭もいい。優しいし 真面目な部分もあり気さくな部分もあって、この人とならいいかなと思える。
だけど忘れてはいけない。ニコラ殿下は王子様なのだ。私は極貧男爵家の娘。しかも物乞いと同じレベルの三世代の男付き。メイが王子妃になったら迷惑をかける気しかしない。ニコラ殿下は優しいから、モヴィー家というたんこぶを除去したりせずに我慢するだろう。きっとニコラ殿下は気にするなと言うだろうけど私は嫌だ。

正直にそう話したら、いろいろと提案されたけど、どうしても迷惑をかける想像しかできない。
私の意思が固いことを知って、殿下は引き下がってくれた。
せめてと 想い出に卒業パーティのファーストダンスを頼みこまれた。
ニコラ殿下は王子様。卒業したら会わないだろうし、楽しかったから了承した。

「かっこよく踊れたら、メイがイエスと言ってくれるかもしれないだろう」

「……」

「冗談だからそんな顔をするな。
私はいい男のはずだから、すぐ出会いがあるよ」

「確かに」

「毎日一緒にいる奴には敵わないからな」

「……」

「あっちにセレスがいるぞ。挨拶に行こう」

「でも」

「そのくらい双子に許可を得なくても大丈夫だよ。
あいつらはしばらく教師達から放してもらえないだろうから気にするな。行くぞ」

殿下は私の手を繋ぎ、セレス様のところまで手を引いた。

セレス様とも話をした後、双子が戻る前にダンスの時間になった。同伴者を強制しない分 踊りたい人が踊ればいいという方針になっているので、然程混み合ってはいない。

「私、下手ですからね」

「メイと踊ることに意味があるんだ。メイの近くにいられて、メイに見つめてもらえて、メイの想い出の中に私を少しでも残してもらえたら嬉しいよ」

「っ…」

「メイ、泣かないでくれ」

「っ…」

「メイ、泣いていたらダンスができなくなるだろう?
メイが負担に思うことはない。楽しく踊って欲しい」

「っ…」

「メイ…」

「だって…ニコラ」

「こんなときに呼び捨てなんて ずるいじゃないか。私まで泣けてくるだろう。
私が選ばれなかったのは王子だからだ。仕方のないことだ。王子でなければメイに選んでもらえたかもしれない。今はそれだけでも十分だと思うことにしている。メイが私を好きだと分かったから我慢するよ」

「うん」

「あいつのことが嫌になったら、私のところに来てくれ。指摘通り、私は妻を複数娶れるからな。
王族の務めとして正妻を迎えているだろうが、メイは寵妃にするから気にせずに飛び込んでくれ」

「うん」

「可愛いメイ…大好きだよ」


なんとか殿下とダンスを踊り終えた。その後 殿下はセレス様と、私は学園長と踊ることにした。

「モヴィーさんはニコラ殿下の求婚は断ったようだね」

何で知っているの!?

「学園長…どうして知っているのですか?」

「2人を見ていたら分かるよ。
ニコラ殿下は早い段階からモヴィーさんにぞっこんだったからね」

その千里眼を副学園長に向けていれば…

「……」

「で、どちらにすることにしたんだ?」

「……」

「決まっているのは間違いなさそうだね。
双子から選ぶのは心苦しいだろうが、引きずっては駄目だよ」

「……」

「もしエヴァンくんが旅に出たいと言ったら、お守りを作ってあげるといい」

「誰も選ばないという選択もできます」

「きっと その輪を壊しても君と一緒にいたいと思ったから、殿下もカルデック兄弟も君に愛を告げたのだろう?
曖昧にしたら3人が未来さきに進めないし、君の幸せはどうなるんだ?
ときには自分本位でいいときもある」

「はい」

学園長…そういうの、ライヤーさんに発揮できなかったのですか?まさか手に負えないとか面倒だとかで放置したとか?

「なんだい?その目は」

「なんでもございません」


学園長から解放された後は、双子とダンスをして卒業生と会話をして屋敷に帰った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜

平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。 レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。 冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

処理中です...