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初の夜会
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カトリス侯爵夫人のご友人、ポートナー伯爵家の夜会に来た。
パートナーはクリストファー様じゃない。
どうやら婚約者が私の存在に難色を示したようだ。
だから一人で来た。
ポートナー伯爵家から迎えの馬車を寄越してくださったので来やすかった。
「いらっしゃい」
「お招きいただきありがとうございます。
お迎えの馬車まで用意していただいて」
「気になさらないで。
主人のイアン・ポートナーよ」
「初めまして。アイリーン・ウィンターと申します。
奥様にお世話になっております」
「話は聞いていますよ。良い出会いがあるといいですね」
「ありがとうございます」
「あそこにいる赤いドレスの子がうちの娘ジュディよ。息子はまだ夜会には出られる歳じゃないからいないけど。
さあ、行きましょう」
ポートナー夫人が何人か紹介してくださったけど、皆、パートナーと一緒の方は女性が“渡さない”と顔で言っているので、大した会話はしなかった。
一人で来ている人は、いかにもその場限りのお相手を探しているようなので諦めた。
「残念だわ」
「気長に探しますわ。ありがとうございました」
ポートナー邸を後にしてウィンター邸に戻ると、ピアがどうだったか聞いてきたので“不漁だったわ”と答えた。
次は招待状をいただいていた家門の夜会へ出掛けたが、ポートナー邸の夜会と同じ感じだった。
さすがに処女で一夜限りのお遊びに飛び込む気にはなれない。
まだ2回しか夜会に出掛けていないのに、気落ちしていた。
「旦那様がトリシア様と別れてやり直したいと仰ったらどうしますか?」
クッキーを片手にピアが質問をした。
「ないない。婚姻前夜の公爵を見たらピアだってそんなことは言えなくなるわよ。
私にとって公爵は誰よりも遠い異性ね」
「元鞘という言葉があるじゃないですか」
「ん~。
一度は収まっていたら使える言葉じゃない?
もっと具体的に人で当てはめて考えてみて?
例えていうなら公爵とトリシア様が刀と鞘よね。私は別の鞘だと思わない?だから収まらないわ。
ピアは公爵との橋渡しをしたいみたいだけど、無駄なことだから諦めてね」
「……」
そして例のお呼ばれに来た。
カトリス侯爵夫人の兄君で伴侶を亡くしたという方を紹介してくださる方だ。
「ようこそ、ウィンター夫人」
カトリス侯爵が出迎えてくださった。
「奥様には親切にしていただき感謝しております」
「どうぞ。妻と義兄がおりますのでご案内します」
ダイニングへ行くと二人は立ち上がった。
「アイリーン様 いらっしゃい。
兄のルイ・ジャレッドよ」
「ルイ・ジャレッドと申します。ウィンター夫人」
「アイリーン・ウィンターと申します。
お会いできて光栄ですわ」
自己紹介をして座った。
第一印象は“警戒”だ。
一応ウィンター公爵家の妻だから警戒しなくてもいいだろうに。
ジャレッド……家門の暗記をすべきね。
全く分からないわ。
ル「え? 17歳!?」
私「はい」
ナ「あら、若いとは思っていたけど、そんなに若かったのね」
ル「息子よりも若いのか……本当に恋人探しを?」
私「はい。白い結婚、社交無し、恋人をつくるのは公認ですから。
この先の人生を考えたら恋人くらい作ってもいいかなと思いましたの」
侯「ウィンター公爵は若過ぎるのだな。
夫人のようなレディにそのような待遇をなさるとは」
私「構いませんわ。彼は愛人優先ですけど、私に妻の役目を求められる方が嫌ですもの。
徹底していて寧ろ良かったです。
最初は多少腹立たしく感じましたが、愛する人を一途に大切になさろうとする公爵を応援していますの」
ル「どのような恋人を探しているのかな」
私「会話をしていて苦痛ではない方で、知性を持って品のある方がいいですわ。
後は、パートナーがいないか、ウィンター家のように互いに愛人を許容しているか。
奥様か婚約者か恋人がいらっしゃって、お相手が関係を快く認めてくださらなければ無理です」
侯「ウィンター公爵の愛人はどんな女性なのでしょう」
私「関わるなと言われておりますので詳しくは分かりませんが、背が高くスレンダーな美女です。
元貴族で公爵より歳上だとメイドから聞いております。……あれ?同級生だったような」
ナ「そ、そうなのね」
私「存じ上げなくてお恥ずかしいのですが、ジャレッド様は恋愛結婚だったのでしょうか」
ル「政略結婚だろうか。母の友人の娘だった」
ナ「(兄は公爵よ)」
私「ジャレッド公爵様? 失礼いたしました。
何か趣味はございますか?今気になっていることでもかまいません」
ル「今気になっているのは君のことかな。
なかなか面白そうな状態のようだからね。
趣味は特にはないな。面白みがなくて悪いね」
私「そうなのですね。
私はお店の開拓が趣味のような気になっていることです。
こちらの国は初めてでしたので見て回るお店がたくさんあって楽しみです」
ナ「まあ。ではアイリーン様の国のお店は見て回ったのかしら」
私「主要な他領の大きな町のお店には回れました。
後は父達について行った場所でお店を覗きました」
侯「活発なのですね」
私「ベロノワの血ですかね。男に生まれていれば もっと自由に領地の端まで馬に乗って見に行けたのですが、馬車と護衛と父達がいいと判断した範囲でしか動けませんでしたので残念な気持ちになりました。
現地で情報を仕入れても、行っていい範囲から外れていたりして諦めることも多々ありましたので」
ナ「今度うちの領地で観光しましょう」
私「嬉しいです。本当に行っても構いませんか?」
ナ「もちろんよ」
侯「ぜひ来てください」
下調べしなくちゃ。
パートナーはクリストファー様じゃない。
どうやら婚約者が私の存在に難色を示したようだ。
だから一人で来た。
ポートナー伯爵家から迎えの馬車を寄越してくださったので来やすかった。
「いらっしゃい」
「お招きいただきありがとうございます。
お迎えの馬車まで用意していただいて」
「気になさらないで。
主人のイアン・ポートナーよ」
「初めまして。アイリーン・ウィンターと申します。
奥様にお世話になっております」
「話は聞いていますよ。良い出会いがあるといいですね」
「ありがとうございます」
「あそこにいる赤いドレスの子がうちの娘ジュディよ。息子はまだ夜会には出られる歳じゃないからいないけど。
さあ、行きましょう」
ポートナー夫人が何人か紹介してくださったけど、皆、パートナーと一緒の方は女性が“渡さない”と顔で言っているので、大した会話はしなかった。
一人で来ている人は、いかにもその場限りのお相手を探しているようなので諦めた。
「残念だわ」
「気長に探しますわ。ありがとうございました」
ポートナー邸を後にしてウィンター邸に戻ると、ピアがどうだったか聞いてきたので“不漁だったわ”と答えた。
次は招待状をいただいていた家門の夜会へ出掛けたが、ポートナー邸の夜会と同じ感じだった。
さすがに処女で一夜限りのお遊びに飛び込む気にはなれない。
まだ2回しか夜会に出掛けていないのに、気落ちしていた。
「旦那様がトリシア様と別れてやり直したいと仰ったらどうしますか?」
クッキーを片手にピアが質問をした。
「ないない。婚姻前夜の公爵を見たらピアだってそんなことは言えなくなるわよ。
私にとって公爵は誰よりも遠い異性ね」
「元鞘という言葉があるじゃないですか」
「ん~。
一度は収まっていたら使える言葉じゃない?
もっと具体的に人で当てはめて考えてみて?
例えていうなら公爵とトリシア様が刀と鞘よね。私は別の鞘だと思わない?だから収まらないわ。
ピアは公爵との橋渡しをしたいみたいだけど、無駄なことだから諦めてね」
「……」
そして例のお呼ばれに来た。
カトリス侯爵夫人の兄君で伴侶を亡くしたという方を紹介してくださる方だ。
「ようこそ、ウィンター夫人」
カトリス侯爵が出迎えてくださった。
「奥様には親切にしていただき感謝しております」
「どうぞ。妻と義兄がおりますのでご案内します」
ダイニングへ行くと二人は立ち上がった。
「アイリーン様 いらっしゃい。
兄のルイ・ジャレッドよ」
「ルイ・ジャレッドと申します。ウィンター夫人」
「アイリーン・ウィンターと申します。
お会いできて光栄ですわ」
自己紹介をして座った。
第一印象は“警戒”だ。
一応ウィンター公爵家の妻だから警戒しなくてもいいだろうに。
ジャレッド……家門の暗記をすべきね。
全く分からないわ。
ル「え? 17歳!?」
私「はい」
ナ「あら、若いとは思っていたけど、そんなに若かったのね」
ル「息子よりも若いのか……本当に恋人探しを?」
私「はい。白い結婚、社交無し、恋人をつくるのは公認ですから。
この先の人生を考えたら恋人くらい作ってもいいかなと思いましたの」
侯「ウィンター公爵は若過ぎるのだな。
夫人のようなレディにそのような待遇をなさるとは」
私「構いませんわ。彼は愛人優先ですけど、私に妻の役目を求められる方が嫌ですもの。
徹底していて寧ろ良かったです。
最初は多少腹立たしく感じましたが、愛する人を一途に大切になさろうとする公爵を応援していますの」
ル「どのような恋人を探しているのかな」
私「会話をしていて苦痛ではない方で、知性を持って品のある方がいいですわ。
後は、パートナーがいないか、ウィンター家のように互いに愛人を許容しているか。
奥様か婚約者か恋人がいらっしゃって、お相手が関係を快く認めてくださらなければ無理です」
侯「ウィンター公爵の愛人はどんな女性なのでしょう」
私「関わるなと言われておりますので詳しくは分かりませんが、背が高くスレンダーな美女です。
元貴族で公爵より歳上だとメイドから聞いております。……あれ?同級生だったような」
ナ「そ、そうなのね」
私「存じ上げなくてお恥ずかしいのですが、ジャレッド様は恋愛結婚だったのでしょうか」
ル「政略結婚だろうか。母の友人の娘だった」
ナ「(兄は公爵よ)」
私「ジャレッド公爵様? 失礼いたしました。
何か趣味はございますか?今気になっていることでもかまいません」
ル「今気になっているのは君のことかな。
なかなか面白そうな状態のようだからね。
趣味は特にはないな。面白みがなくて悪いね」
私「そうなのですね。
私はお店の開拓が趣味のような気になっていることです。
こちらの国は初めてでしたので見て回るお店がたくさんあって楽しみです」
ナ「まあ。ではアイリーン様の国のお店は見て回ったのかしら」
私「主要な他領の大きな町のお店には回れました。
後は父達について行った場所でお店を覗きました」
侯「活発なのですね」
私「ベロノワの血ですかね。男に生まれていれば もっと自由に領地の端まで馬に乗って見に行けたのですが、馬車と護衛と父達がいいと判断した範囲でしか動けませんでしたので残念な気持ちになりました。
現地で情報を仕入れても、行っていい範囲から外れていたりして諦めることも多々ありましたので」
ナ「今度うちの領地で観光しましょう」
私「嬉しいです。本当に行っても構いませんか?」
ナ「もちろんよ」
侯「ぜひ来てください」
下調べしなくちゃ。
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