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バレた
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婚姻してかれこれ五ヶ月が過ぎた。
知り合いも友人も増えた。
相変わらずウィンター公爵は私との関係を何とかしようとしている。
同時に、たまに見かけるトリシア様は生気が無くなってきたような。
お茶会も夜会も招待されて行くが、ジャレッド公爵とローランド第三王子殿下(ロラン)が必ず同伴するためか恋人探しは難航している。
ジャレッド公爵からははっきりと“恋人にはなれない”と言われた。
まあ、いいか。
「アイリーン様」
セイビアンが青ざめた顔で側に来た。
「どうしたの?」
「バレました」
「え?」
「大奥様からお手紙をいただきまして…オベール様が“しばらく留守にする”という書き置きを残して消えたそうです。
動員と持ち物から想定してもウィンター公爵邸に向かっているのではと」
「お、お兄様が!?」
「不在に気が付いたのは出発から2日後。
てっきり国内に仕事で出向いていると思っていたようで、気付かれたら渡せと言われた置き手紙をオベール様の側近から受け取ったそうです」
「え? じゃあ」
「いつ到着なさってもおかしくないかと」
「ひっ!」
そこにノックが。
「若奥様。先触れです」
手渡す執事も顔色が悪い。
“今夜そこに行く。
茶だけ出せ。
アイリーン。
説明を聞こう。
オベール”
「あぁ~逃げたい」
「恐れ入ります。念のため公爵様に、アイリーン様の兄君がアイリーン様に用があって訪問なさるとお伝え願えますか」
「かしこまりました。失礼いたします」
バタン
「さ、アイリーン様、ドレスを選んで可愛くしましょう。オベール様はアイリーン様の愛らしさに弱いですからね」
「う、うん」
そして夜。
呼んでもいないのに公爵まで屋敷の外まで出て来た。
ハ「ようこそお越しくださいました」
兄「突然の訪問をご容赦ください。
妹が私の心を弄ぶもので。
ベロノワ伯爵家の長男オベールと申します。
早速ですが妹と二人でじっくり話をさせていただきます」
ハ「客室にご案内いたします」
兄「いや、結構。ホテルを取ったので」
ハ「ホテル エストワールですか?」
兄「あそこは妹に無礼なことをしたようだからすぐ側のホテル エスポワにしました」
何でそこまで知ってるの!?
ハ「では、応せ、」
兄「エリス、茶を頼む。アイリーン、お前の部屋に連れて行ってくれ」
エ「かしこまりました」
兄「アイリーン?」
私「こっちです」
兄「では、公爵。失礼」
一週間くらい気を失いたい。
部屋に入ると お兄様はソファに座った。
「アイリーン。座りなさい」
靴を脱いでいつものようにソファの上に正座しようとした。
お兄様に怒られる時、弟は床だけど、私はソファの上だった。脚が痛むから。
「違う。ここだ」
お兄様は自身の膝の上をポンポンと叩いた。
「お膝ですか?」
早く来いと目で促された。
膝の上に座ると腰に腕を回され、髪や頬に軽くキスをされた。
「嫁になんか行かなくていいと言っていただろう」
「そういう訳には」
「誰にも文句を言わせないぞ?」
「知っていますが、それではダメです」
「だがな。ベロノワ家の宝にしていい仕打ちではない」
「私には都合がいいのです。
確かに失礼な経緯はありましたが、契約書にできましたし結果的にこちらの都合によい内容になりました。
入籍しているだけで衣食住とお金が支給されるのです。素敵でしょう?何もしなくてもですよ?
ベロノワ家との繋がりを期待していたお義母様はがっかりなさっていましたね」
「恋人探しをしているときいたが?」
「まあ…そうですね」
「ジャレッド公爵とはどうなんだ」
何で知ってるの?
チラッと3人を見たが全員首を振った。
「子供が二人とも私より若いのですが、そういう気にならないそうです」
「ふ~ん。
第三王子と王太子は?」
ぐっ!全部知ってるのね。
「ローランド王子殿下は友人です。
王太子殿下は何回かお茶をしましたが、よく分かりません」
「ジュエルの帰りを待つか」
え!?
「ジュエルが来ているのですか!?」
「王城に挨拶に行かせた」
「お兄様が行くところなのでは?」
「その分アイリーンを独り占めできるからな」
お兄様に抱きついて、撫でてもらい待つこと一時間半
「姉様!」
「ジュエル!」
お兄様の膝の上から降りて弟に駆け寄ると ジュエルが抱きしめてくれた。
「寂しかった!」
「また大きくなったのね」
「背も伸びたし筋肉も増えたよ」
「お母様の相手をしてくれてる?」
「してるよ」
「聞かせてくれる?」
ジュエルから五ヶ月の間のベロノワ家の話を聞いた。その後 王城へ挨拶に行った際の報告を始めた。
「入国したら挨拶に伺うと文を送ったのが出発と同時でしたのでどうなるかわかりませんでしたが、名を告げると通して貰えました。
国王陛下は会議をしているらしく、王太子殿下が応対してくれました。
“アイリーンを第二妃に”などと言っていましたので、“そのつもりはありません”と返しました。
10分後くらいに第三王子殿下が現れました。
“アイリーンが寂しがっているだろうから早く屋敷に行ってあげて欲しい”と言って挨拶だけしました」
「分かった」
「王太子殿下が兄上に会いたいそうです」
「牽制しておくか。
アイリーンは第二妃は嫌だろう?」
「魅力はないですね」
「アイリーン。ローランド王子はどんな感じだ?」
「兄弟間でも警戒があるようで、次期国王の座を脅かさないようにしているみたいです。
もしかしたら第二王子は、目立って他国の貴族に婿入りさせられた可能性があります。
実際は分かりません。
ローランド王子殿下は全てに手を抜くといいますか、全力を出さないようにしている感じです。
婿入りの他に毒も懸念しています」
「そうか。
エリス。支度をしてくれ。
数日から一週間ほどアイリーンを連れてホテルに泊まる」
「かしこまりました」
私達は、ホテルに移動した。
知り合いも友人も増えた。
相変わらずウィンター公爵は私との関係を何とかしようとしている。
同時に、たまに見かけるトリシア様は生気が無くなってきたような。
お茶会も夜会も招待されて行くが、ジャレッド公爵とローランド第三王子殿下(ロラン)が必ず同伴するためか恋人探しは難航している。
ジャレッド公爵からははっきりと“恋人にはなれない”と言われた。
まあ、いいか。
「アイリーン様」
セイビアンが青ざめた顔で側に来た。
「どうしたの?」
「バレました」
「え?」
「大奥様からお手紙をいただきまして…オベール様が“しばらく留守にする”という書き置きを残して消えたそうです。
動員と持ち物から想定してもウィンター公爵邸に向かっているのではと」
「お、お兄様が!?」
「不在に気が付いたのは出発から2日後。
てっきり国内に仕事で出向いていると思っていたようで、気付かれたら渡せと言われた置き手紙をオベール様の側近から受け取ったそうです」
「え? じゃあ」
「いつ到着なさってもおかしくないかと」
「ひっ!」
そこにノックが。
「若奥様。先触れです」
手渡す執事も顔色が悪い。
“今夜そこに行く。
茶だけ出せ。
アイリーン。
説明を聞こう。
オベール”
「あぁ~逃げたい」
「恐れ入ります。念のため公爵様に、アイリーン様の兄君がアイリーン様に用があって訪問なさるとお伝え願えますか」
「かしこまりました。失礼いたします」
バタン
「さ、アイリーン様、ドレスを選んで可愛くしましょう。オベール様はアイリーン様の愛らしさに弱いですからね」
「う、うん」
そして夜。
呼んでもいないのに公爵まで屋敷の外まで出て来た。
ハ「ようこそお越しくださいました」
兄「突然の訪問をご容赦ください。
妹が私の心を弄ぶもので。
ベロノワ伯爵家の長男オベールと申します。
早速ですが妹と二人でじっくり話をさせていただきます」
ハ「客室にご案内いたします」
兄「いや、結構。ホテルを取ったので」
ハ「ホテル エストワールですか?」
兄「あそこは妹に無礼なことをしたようだからすぐ側のホテル エスポワにしました」
何でそこまで知ってるの!?
ハ「では、応せ、」
兄「エリス、茶を頼む。アイリーン、お前の部屋に連れて行ってくれ」
エ「かしこまりました」
兄「アイリーン?」
私「こっちです」
兄「では、公爵。失礼」
一週間くらい気を失いたい。
部屋に入ると お兄様はソファに座った。
「アイリーン。座りなさい」
靴を脱いでいつものようにソファの上に正座しようとした。
お兄様に怒られる時、弟は床だけど、私はソファの上だった。脚が痛むから。
「違う。ここだ」
お兄様は自身の膝の上をポンポンと叩いた。
「お膝ですか?」
早く来いと目で促された。
膝の上に座ると腰に腕を回され、髪や頬に軽くキスをされた。
「嫁になんか行かなくていいと言っていただろう」
「そういう訳には」
「誰にも文句を言わせないぞ?」
「知っていますが、それではダメです」
「だがな。ベロノワ家の宝にしていい仕打ちではない」
「私には都合がいいのです。
確かに失礼な経緯はありましたが、契約書にできましたし結果的にこちらの都合によい内容になりました。
入籍しているだけで衣食住とお金が支給されるのです。素敵でしょう?何もしなくてもですよ?
ベロノワ家との繋がりを期待していたお義母様はがっかりなさっていましたね」
「恋人探しをしているときいたが?」
「まあ…そうですね」
「ジャレッド公爵とはどうなんだ」
何で知ってるの?
チラッと3人を見たが全員首を振った。
「子供が二人とも私より若いのですが、そういう気にならないそうです」
「ふ~ん。
第三王子と王太子は?」
ぐっ!全部知ってるのね。
「ローランド王子殿下は友人です。
王太子殿下は何回かお茶をしましたが、よく分かりません」
「ジュエルの帰りを待つか」
え!?
「ジュエルが来ているのですか!?」
「王城に挨拶に行かせた」
「お兄様が行くところなのでは?」
「その分アイリーンを独り占めできるからな」
お兄様に抱きついて、撫でてもらい待つこと一時間半
「姉様!」
「ジュエル!」
お兄様の膝の上から降りて弟に駆け寄ると ジュエルが抱きしめてくれた。
「寂しかった!」
「また大きくなったのね」
「背も伸びたし筋肉も増えたよ」
「お母様の相手をしてくれてる?」
「してるよ」
「聞かせてくれる?」
ジュエルから五ヶ月の間のベロノワ家の話を聞いた。その後 王城へ挨拶に行った際の報告を始めた。
「入国したら挨拶に伺うと文を送ったのが出発と同時でしたのでどうなるかわかりませんでしたが、名を告げると通して貰えました。
国王陛下は会議をしているらしく、王太子殿下が応対してくれました。
“アイリーンを第二妃に”などと言っていましたので、“そのつもりはありません”と返しました。
10分後くらいに第三王子殿下が現れました。
“アイリーンが寂しがっているだろうから早く屋敷に行ってあげて欲しい”と言って挨拶だけしました」
「分かった」
「王太子殿下が兄上に会いたいそうです」
「牽制しておくか。
アイリーンは第二妃は嫌だろう?」
「魅力はないですね」
「アイリーン。ローランド王子はどんな感じだ?」
「兄弟間でも警戒があるようで、次期国王の座を脅かさないようにしているみたいです。
もしかしたら第二王子は、目立って他国の貴族に婿入りさせられた可能性があります。
実際は分かりません。
ローランド王子殿下は全てに手を抜くといいますか、全力を出さないようにしている感じです。
婿入りの他に毒も懸念しています」
「そうか。
エリス。支度をしてくれ。
数日から一週間ほどアイリーンを連れてホテルに泊まる」
「かしこまりました」
私達は、ホテルに移動した。
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