【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

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各々 /ローランド

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【 ローランドの視点 】


お茶を用意させて庭園のガゼボでアイリーンと競争していた。

「アイリは下手だったんだな」

「だって、花冠はお兄様かジュエルが作ってのせてくれていたから」

立派なシロツメクサの花冠を仕上げたローランドはアイリーンに罰ゲームの内容を伝えようとした。

「俺の勝ちだな」

「見方の問題よ。これだって傑作だわ……あっ」

俺の背後に誰か立った。
影ができたのとアイリーンの表情が変わったからだ。

オ「何をしているんだ?」

ア「お兄様」

俺は立ち上がり、挨拶をした。

俺「初めまして。ローランドと申します」

オ「アイリーンの兄のオベールと申します」

ジュ「アイリーンの弟のジュエルと申します」

オ「で、何をしているんだ?」

ア「花冠を上手に作れなかった方が、罰ゲームを受ける賭けをしていたのですが、私の花冠は傑作ですよね?」

オ「アイリーンの負けだな。作り方を教えてやっておくべきだったな。

それで殿下。アイリーンに何をさせようと?」

俺「そうだな……アイリ、この間の怒った侍女長の真似をしてもらおうか」

ア「え~」

俺「ほら、恥ずかしがらずにやってくれ」

様々な顔をした挙句、アイリーンは真似をした。

ア「ローランド王子殿下!アイリーン様!
まだおやつのお時間ではありません!
摘み食いなどはしたない!」

独特のイントネーションで言い切った。

俺「合格!」

ア「恥ずかしい!」

ジュ「本当にそれ、似てるの? 姉様」

ア「怒ると故郷の訛りがでるの。しかも、故郷の訛りと前侍女長の訛りが合わさってオリジナルになってるのよ」

オ「だけど、悪意はなくとも訛りを揶揄しては可哀想だ。次からは他のことをしなさい」

俺「すみません」

ア「ごめんなさい」

オ「可愛い天使はまだ摘み食いをしているのか?」

ア「美味しいし、楽しいもの」

兄君はアイリーンの隣に座り 肩に腕を回して額にキスをした。 

オ「ローランド王子殿下はチャンスがあれば王太子になる気はありますか?」

え?

俺「ありません」

オ「どうしてでしょう」

俺「国を統べる器ではありませんし、こうやって友人と遊べませんから」

ア「随分と時間がかかりましたね。楽しかったのですか?」

オ「ああ。楽しかったよ。
王太子殿下を引き摺り降ろしたからな」

俺「え?」

ア「え?」

ジュ「不相応にも姉上を第二妃に欲しいと言ったので仕方なく」

ア「お兄様!何をしたのですか!」

オ「アイリーンの価値を分からずに望めば娶れると思った勘違い王太子が選んだ賭け事で剥奪した。
チェスも柔術も剣術も全く話にならない。

王太子の第二妃なんて嫌だろう?
天使を穢そうとしてるだけの男だ。気に病むな」

ジュ「そうだよ姉様。井の中の蛙の典型的な例だったよ。そのくせに僕たちの姉様を簡単に娶れると思っていたから天罰だよ」

俺「ほ、本当にレジス兄上が王太子ではなくなったと仰るのですか」

オ「賭けをして負けたんですよ。
彼に好きに選ばせて、三つのうち 一つでも勝てれば第二妃の話を父にすると約束したのですが、彼の賭けるものは王太子の座でした。

もし国王陛下が反故になさっても必ず

ベロノワ伯爵家とは一体……



彼らが去ると、侍従が呼びに来た。

「国王陛下がお呼びです」


父上の元へ行くとレジス兄上が荒れていた。

「本気で私を降ろすのですか!」

「王太子であるお前が約束したことだ。守らねば信用が失くなり支持を得られない」

「相手は隣国の伯爵家ですよ!
弟の方も不敬だったが、兄も不敬です!」

「なら賭けななければ良かっただろう」

「まさかあんなに強いだなんて」

「相手を知らずに勝負するなど愚かだな。
これが戦争なら敗戦国になっていたのだぞ!」

「ですが、」

「ここで居座れば、大きな代償を払うことになる」

「何故そんなに伯爵家如きの顔色を伺うのですか!」

「無知とは怖いものだ」

「港と鉱山は知ってます!」

「だとしたら、尚更まずい。

彼らがうちへの荷を停止させたらどうなると思う?
それがお前のせいだと分かったら?
国境を使えないのがお前のせいだと知られたら?
お前は広場で民衆か貴族達によって処刑されるだろう」

「そんな!」

「ボワンの港から出航して海上事故が起きても助けてもらえなかったら?

輸出品をベロノワ港から出している家門も少なくない。お前の私財で買い取り続けるか?」

武力ちからで捩じ伏せればいいではありませんか!」

「お前は近衛騎士から習っていて伯爵家の令息に負けたんだ。

好きに選べと言ったのだから、弓術でも乗馬でもお前に勝つ自信があったということだ。

最前線に立ち、自ら戦うか?

お前の無謀な賭けが元で兵士の命を散らすのか?
上手くいかなければ敗戦国になり平民達もどうなるか分からない。

そんなお前を民衆はどうするだろうか。
騎士や兵士達は貴族籍の者や元貴族も多くいる。
家族が命を落としたり大怪我をしたり、領地が焼け野原になったらどうするだろうか。

例え勝ったとしても、その間のベロノワ封鎖に耐え凌ぐことができるか?

船が焼かれ海図が焼かれたら?

どう考えてもお前を王太子に残す価値はない」

「父上!」

「ローランド。どうする」

「私は…」

「分かった。テオフィルに打診をする」


兄上は監視を付けられ、当面は謹慎となった。
その夜のうちに王太子妃にも伝えられ、翌朝にレジス兄上が降ろされたことを発表した。



その後1ヶ月しないうちにテオフィル兄上は妻子連れで戻ってきた。

「義父母の元にベロノワ家から手紙が来たからな。
戻るしかないだろう」

苦笑いをしていた。
兄上の妻で公爵家の出身のレイラ様は気難しそうな方だったが、俺と会っているアイリーンの姿を見ると“天使~!”と言ってアイリーンを愛で始めた。

ベロノワ家の娘だと知って目が泳いだが、直ぐに我に返りアイリーンにべったり張り付いた。
妃教育が始まると呼びに来た侍女に連行された。

テオフィル兄上の子は男児だった。
2歳になるところで元気いっぱいだ。

もう、レジス兄上から狙われることはない。
父上がレジス贔屓の母上に警告したからだ。



「で? ローランドはウィンター公爵夫人に、“俺を愛して”と言わないのか?」

「なっ!何を!」

「顔が真っ赤だぞ」

「今のままでいいのです。友人契約書がありますから」

「ローランドが夫人を好きになってはいけないとか 求婚してはいけないとか書いてないじゃないか。
好きな人ができたら申告するんだろう?
“君が好きだ”って言わない方が違反じゃないのか?」

「そ、それは。
でも、避けられるくらいならこのままがいいです」

「他の男が現れて、今度こそ白い結婚じゃなくなっても後悔しないか?
ローランドだってもうすぐ卒業じゃないか。

私が王太子になって、男児は既にいる。
つまり近いうちにローランドの婚約者選定が始まって妻にしなくてはならなくなるぞ。
その時の選定は間違いなく独身令嬢の中から行う」

「婚約者…」

「今まで通りに会って過ごせないだろうな」











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