【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

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ホームシック

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公爵邸の自室で“捨てネコのような哀愁を漂わせていますね”とロザリーナ達に言われたが その通り。

お兄様達が来て可愛がってもらい、10日ほど滞在して帰国してしまった。

すっかり里心がついて寂しくて仕方ない。
食欲も落ちてピアまで心配していた。


お茶でもとカトリス夫人に手紙を出したら里帰りしてるらしい。

「帰ろうかな」

「アイリーン様!私達を捨てるおつもりですか!」

ピアが私に縋り付いた。

「里帰りよ」

「お兄様方がいらしたではありませんか」

「父と母は来ていないわ」

「……」


それ以来公爵がうろついていた。
だけど部屋には入れないので無視だ。

そして最速?で王太子妃になったマガリー様にお呼ばれして、テオフィル王太子殿下とローランド殿下と4人で昼食を食べている。

マ「里帰り?」

私「はい。
兄達が帰ったら寂しくなってしまって」

ロ「どのくらい帰るんだ?」

私「できるだけ?
公爵家にいても役割無いですし、居なくても問題ありませんから」

ロ「……」

テ「ローランドもついて行ったらどうだ?」

ロ「流石に長期では学園を休めません。それに、」

テ「それは仕方ないな」

私「ロラン、何か言いかけなかった?」

テ「王族の務めもあると言いたかったんだよ」

私「そうですよね」


だけど直ぐにの意味が分かることになる。



お父様宛に里帰りを知らせる手紙を書き、久しぶりにクリストファー様に会った。

「え?」

「王太子殿下に男児がいるからローランド殿下も婚約できるんだ。
だから既に候補の選定が始まっているはずだよ。
前王太子妃が懐妊なさった時点で予備選定はしただろうから、直ぐに決まるんじゃないかな」

「政略結婚になるの?」

「どうだろう。単なるお見合い扱いの可能性もあるし、候補に上がった子と恋に落ちることもある。
今回は王太子妃が他国の令嬢だから範囲が広そうだ」

「そうなのね。

話は変わるけど、里帰りするの。ナディア様とは入れ違いになりそう」

「伝えておくよ」



ウィンター邸に戻ると公爵が話したいと連絡をよこした。

居間に出向くと公爵は立ち上がり私の腕を掴んだ。

「出来るだけ長くってどうして」

「頻繁に行き来する方がいいですか?」

「君は妻だろう。ウィンター公爵夫人なのだから、屋敷にいるのが普通だ」

「普通の婚姻にしなかったのは公爵です。
干渉しないという項目をお忘れですか?
私は何もしなくていい存在ですから長く不在にしても構わないじゃないですか」

「いい加減にしろ!
いつまでも契約契約って!

契約なんて白紙だ!
アイリーンには公爵夫人としての勤めを果たしてもらう!予算も渡してるだろう!」

「……」

「明日教会へ行って提出した契約書を戻してもらう!明日の夜は初夜にするからな!」


私は自室に戻り、ピアに用事を言い付けて部屋から出すとセイビアン達3人に告げた。

「明日、公爵が教会に出かけたら出発するわ。
旅に必要なものと、どうしてもというものは持っていくわ」

「何かあったのですか」

「公爵が契約を反故にして私に公爵夫人の勤めを果たせというの。明日の夜は初夜にすると言い出したわ」

「ご自分が言い出した契約なのにですか!?」

「絶対に嫌。急いで準備して。
ピアに気付かれないようにね」

「かしこまりました」


だけどそれでも荷物が多いので夜中のうちにセイビアン達に馬車に積み込んでもらった。

そして朝一番で教会へ向かう公爵を見届けて私達も軽装に着替えた。

「アイリーン様?」

「今日はローランド殿下とお忍びで街を探索するの。
朝市があるんですって」

「お供します」

「お忍びだから人数を抑えたいの。屋敷で休んでいて」

「かしこまりました」


ウィンター公爵邸を出ると配達屋に寄ってカトリス家とローランド殿下宛に、事情とベロノワに避難するといった内容の手紙を書いたので届けて欲しいと依頼した。 

それとは別に夜にピアと公爵宛の手紙を配達してもらえるように依頼をして国境を目指した。




【 ハロルドの視点 】

教会に行っても契約書を返してもらえなかった。
“奥様を連れていらしてください”と言われた。

だからアイリーンには取り消したことにして 初夜を済ませようと思ったが、夕刻になってもお忍びから戻って来なかった。

その代わりに夕食後に手紙が届いた。

“身の危険を感じましたので、ひとまず別居させていただきます。離縁については別途ご連絡をいたします。その間、予算の支払いは停止してくださって結構です。

アイリーン”

は?

慌ててアイリーンの部屋へ行くとピアが手紙を読んでいた。

取り上げて読んだ。

“ピア

ごめんなさい。

契約が守られず、閨事の強要があったの。
このまま公爵邸には居られなくなってしまったわ。

ピアは公爵に報告していたでしょう?
だから貴女に言えなかった。

本当にごめんなさい。
今までありがとう。

貴女の部屋にお礼を置いたから、自由に使ってね。

アイリーン”


棚やクローゼットなどを開けたがほとんど残っていた。だが宝石類は残っていなかった。

「そんな……」



その後は酒を飲んでいた。

「お酒だけでは身体に障りますわ」

そう言ってトリシアが酒のつまみを持ってきた。

飲んで食べているうちに身体が熱くなった。




【 トリシアの視点 】


メイド達が“若奥様に逃げられた”“自棄酒をのんでいる”と噂をしているのを耳にした。

だからつまみになるものを持って素敵なエッセンスを振り掛けてハロルドの部屋に運んだ。
彼は既に酩酊寸前だった。

30分もすると、ハロルドは私を押し倒していた。

薬棚にあった小さな箱に閨事に使う潤滑油や避妊薬、媚薬もあった。それを振りかけてハロルドに食べさせた。

性急にハロルドは私を抱いた。何度も。
そして薬が切れてハロルドが眠ると 震える足腰で自室に戻り着替えたり下着に当て布を入れたりした。
そして眠気に耐え、朝食の時間に食事をとり外出した。ハロルドはまだ起きて来なかった。
メイドには友人と会うから明日戻ると伝えた。

宿に泊まり翌日の昼に帰ると頬を叩かれた。

「薬を使ったな!」

「もう避妊薬は効きません」

「なんて事を! 絶対に認めないからな!」

「お義母様がなんと仰るか。

子作りをしたから孕むよう祈って欲しいと手紙をだしたので逃れることはできませんよ」

バチン! バチン!

その後も家令達が止めに入るまで殴られた。


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