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蘇る記憶
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私とお兄様が婚姻するために、ベロノワ家から一旦籍を抜きどこに移すか議論されていた。
元婚約者の子爵家が名乗りを上げた。
だけど隣国でお世話になったカトリス侯爵家も名乗りを上げた。
王家は断った。
王家は自国 隣国 実父の国の3つから話があった。
実父が会いたがっているそうだが拒否した。
だって、子ができるようなことをしておいて今まで何もしてこなかったのに今更?
腹立たしかった。
本当にいいのか?とベロノワ伯爵に聞かれたが、“私の父はベロノワ伯爵だけです”と答えたらお父様に泣かれた。お母様はしょんぼりしだしたので、“私のお母様はベロノワ伯爵夫人だけです。世界一優しいお母様です”と言った。機嫌が治った。
もちろん本音だ。
結局カトリス侯爵家にした。
子爵家は落ち着いているからそっとしておきたかった。
カトリス夫妻がベロノワ邸に来てくださって喜んでくださった。
「アイリーン様!」
「ナディア様!」
夫人と抱き合った。
「もうお母様と呼んで」
「アイリーンと呼んでください」
「可愛い娘が出来たのね!幸せだわ!
二週間いるからいっぱい遊びましょうね」
「すみません。ベロノワ伯爵、夫人。
妻はご令嬢を娘のように思っていて、少々興奮しているようです」
「婚姻中にとても良くしてくださったと聞いておりますわ」
「アイリーンの心の支えだったと聞いております」
「そんな。私達の方こそ楽しく過ごせましたわ」
領地を新しい両親と一緒に遊び回りながら案内して、次は婚姻式でと涙ながらにお別れをした。
ナディアお母様が泣くのでつられた。
半年後は婚姻だ。
お兄様に毎夜快楽を与えられ、ジュエルが休みであれば日中遊び回りながら領地を視察し、ジュエルが学校の日はお母様からベロノワ夫人としての勉強が始まった。
少し不安があった。
お兄様を受け入れたけど“愛してる”と言う言葉に 未だに返事ができなかった。
婚姻前日、海の側の教会で式を行うために近場の宿に泊まることになった。
散歩にでて、桟橋を歩いているときにヒールが隙間に挟まりバランスを崩して海に転落した。
服が重くて浮き上がれない。
どんどん沈んで水中から見える太陽が霞んできた。
そこに誰かの手が…。
『可愛い!どこから来たの?』
『遠い国から来たのよ。アイリーンというの。
ジュエルより一つ歳上よ』
『アイリーン、こっちの大きい子は長男のオベールよ』
『アイリーン、おいで。屋敷を案内するよ』
『はい』
『可愛いな。俺のお嫁さんにならないか?』
『僕のお嫁さんがいいよね?』
『……』
『安心していい。俺達がアイリーンを守るから。
アイリーンを守れるような男になる』
『どうして?』
『一目惚れだ』
『ひとめ…?』
『会った瞬間から大好きだと感じることだよ』
苦しい、押さないで!
「ゲホッ ゲホッ」
「アイリーン様!!」
「アイリーン様!良かった」
私…
「セイビアン…私、どうしたの?」
「海に落ちて溺れたんです。心臓も呼吸も止まっていたんです!」
「ロザリーナ…」
そこに彼が現れた。
「アイリーン!!」
「ベル」
「……病院に運ぼう」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃない!」
「オベール様、落ち着いてください。医者を呼びましょう」
彼に抱き上げられ宿に運ばれた。
医師は海水も吐き出したし大丈夫と言ってくれた。
婚姻式をどうするか両親達が相談し出したので、予定通りにしたいと告げた。
そして翌日式を挙げた。
その夜、彼は私を抱かなかった。
まあ、初夜はもう済ませている。
だけど私を避けるように告げた。
“溺れたばかりだから”と。
それは2ヶ月も続いた。
「お母様、ローランド王子殿下の結婚式は一人で参列します」
以前から届いていたロランの婚姻式の招待状は私の名しか書いていなかった。
だけど婚姻したから夫と行きなさいとお父様達から言われていた。
「オベールは連れて行かないの?」
「はい」
「……その代わりジュエルを連れて行きなさい」
「ジュエルに迷惑じゃ」
「尻尾振って付いて行くわよ」
それを告げると彼は反対したけど
「私が決めることです」
そう言うと、悲しそうな顔をして引き下がった。
ジュエルと一緒に国境を越えてカトリス侯爵邸に到着した。
「本当にアイリーンが妹になった」
クリストファー様が固まってる。
「そうよ、クリストファー。
婚姻しちゃったけどね」
「おめでとう」
「ありがとう。長続きするか分からないけど」
「姉様?」
「彼はジュエルでベロノワ家の次男よ」
「初めまして。兄になったクリストファーです。よろしくお願いします」
「弟のジュエルです。よろしくお願いします」
「変な挨拶になったわね。さあ、お部屋へ案内するわ」
「後でジュエルと王都のお店に行きます」
「あまり遠くへ行ってはダメよ」
「分かりました」
荷解きした後にジュエルと投資した店を回った。
途中、公園に立ち寄り休憩した。
「兄上と何かあったの」
「さあ。私にもよく分からないわ。
もう私に飽きたのよ」
「そんなはずは、」
「実際に避けられてるもの」
「……」
「短い間でいろいろあったわ。
クリスの死、学校、ウィンター公爵との婚姻、恋人探し、離縁、出生の秘密、再婚……」
「姉様」
「もういいわ」
「姉様?」
「やっぱり婚姻せず独立すべきだったわ」
「そのときは僕もついて行くよ」
「ごめんね、ジュエル。
もう異性は信用できそうにないの。例え弟でも」
「アイリーン!」
「兄だった人が…私に愛してると囁いてきた人が…」
「分かった。分かったから。僕は一生姉様の味方だよ。だから泣かないで」
「ベロノワ家で領地を支えて。私、あそこにすごく投資しているのよ」
「僕の侍従宛に手紙を出して。彼の自宅に」
「分かったわ。消える時は教えない。
お兄様には嘘がバレてしまうから」
「いいよ。殴られたって口を割らないよ。殴り返すから」
「ジュエル、ありがとう」
元婚約者の子爵家が名乗りを上げた。
だけど隣国でお世話になったカトリス侯爵家も名乗りを上げた。
王家は断った。
王家は自国 隣国 実父の国の3つから話があった。
実父が会いたがっているそうだが拒否した。
だって、子ができるようなことをしておいて今まで何もしてこなかったのに今更?
腹立たしかった。
本当にいいのか?とベロノワ伯爵に聞かれたが、“私の父はベロノワ伯爵だけです”と答えたらお父様に泣かれた。お母様はしょんぼりしだしたので、“私のお母様はベロノワ伯爵夫人だけです。世界一優しいお母様です”と言った。機嫌が治った。
もちろん本音だ。
結局カトリス侯爵家にした。
子爵家は落ち着いているからそっとしておきたかった。
カトリス夫妻がベロノワ邸に来てくださって喜んでくださった。
「アイリーン様!」
「ナディア様!」
夫人と抱き合った。
「もうお母様と呼んで」
「アイリーンと呼んでください」
「可愛い娘が出来たのね!幸せだわ!
二週間いるからいっぱい遊びましょうね」
「すみません。ベロノワ伯爵、夫人。
妻はご令嬢を娘のように思っていて、少々興奮しているようです」
「婚姻中にとても良くしてくださったと聞いておりますわ」
「アイリーンの心の支えだったと聞いております」
「そんな。私達の方こそ楽しく過ごせましたわ」
領地を新しい両親と一緒に遊び回りながら案内して、次は婚姻式でと涙ながらにお別れをした。
ナディアお母様が泣くのでつられた。
半年後は婚姻だ。
お兄様に毎夜快楽を与えられ、ジュエルが休みであれば日中遊び回りながら領地を視察し、ジュエルが学校の日はお母様からベロノワ夫人としての勉強が始まった。
少し不安があった。
お兄様を受け入れたけど“愛してる”と言う言葉に 未だに返事ができなかった。
婚姻前日、海の側の教会で式を行うために近場の宿に泊まることになった。
散歩にでて、桟橋を歩いているときにヒールが隙間に挟まりバランスを崩して海に転落した。
服が重くて浮き上がれない。
どんどん沈んで水中から見える太陽が霞んできた。
そこに誰かの手が…。
『可愛い!どこから来たの?』
『遠い国から来たのよ。アイリーンというの。
ジュエルより一つ歳上よ』
『アイリーン、こっちの大きい子は長男のオベールよ』
『アイリーン、おいで。屋敷を案内するよ』
『はい』
『可愛いな。俺のお嫁さんにならないか?』
『僕のお嫁さんがいいよね?』
『……』
『安心していい。俺達がアイリーンを守るから。
アイリーンを守れるような男になる』
『どうして?』
『一目惚れだ』
『ひとめ…?』
『会った瞬間から大好きだと感じることだよ』
苦しい、押さないで!
「ゲホッ ゲホッ」
「アイリーン様!!」
「アイリーン様!良かった」
私…
「セイビアン…私、どうしたの?」
「海に落ちて溺れたんです。心臓も呼吸も止まっていたんです!」
「ロザリーナ…」
そこに彼が現れた。
「アイリーン!!」
「ベル」
「……病院に運ぼう」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃない!」
「オベール様、落ち着いてください。医者を呼びましょう」
彼に抱き上げられ宿に運ばれた。
医師は海水も吐き出したし大丈夫と言ってくれた。
婚姻式をどうするか両親達が相談し出したので、予定通りにしたいと告げた。
そして翌日式を挙げた。
その夜、彼は私を抱かなかった。
まあ、初夜はもう済ませている。
だけど私を避けるように告げた。
“溺れたばかりだから”と。
それは2ヶ月も続いた。
「お母様、ローランド王子殿下の結婚式は一人で参列します」
以前から届いていたロランの婚姻式の招待状は私の名しか書いていなかった。
だけど婚姻したから夫と行きなさいとお父様達から言われていた。
「オベールは連れて行かないの?」
「はい」
「……その代わりジュエルを連れて行きなさい」
「ジュエルに迷惑じゃ」
「尻尾振って付いて行くわよ」
それを告げると彼は反対したけど
「私が決めることです」
そう言うと、悲しそうな顔をして引き下がった。
ジュエルと一緒に国境を越えてカトリス侯爵邸に到着した。
「本当にアイリーンが妹になった」
クリストファー様が固まってる。
「そうよ、クリストファー。
婚姻しちゃったけどね」
「おめでとう」
「ありがとう。長続きするか分からないけど」
「姉様?」
「彼はジュエルでベロノワ家の次男よ」
「初めまして。兄になったクリストファーです。よろしくお願いします」
「弟のジュエルです。よろしくお願いします」
「変な挨拶になったわね。さあ、お部屋へ案内するわ」
「後でジュエルと王都のお店に行きます」
「あまり遠くへ行ってはダメよ」
「分かりました」
荷解きした後にジュエルと投資した店を回った。
途中、公園に立ち寄り休憩した。
「兄上と何かあったの」
「さあ。私にもよく分からないわ。
もう私に飽きたのよ」
「そんなはずは、」
「実際に避けられてるもの」
「……」
「短い間でいろいろあったわ。
クリスの死、学校、ウィンター公爵との婚姻、恋人探し、離縁、出生の秘密、再婚……」
「姉様」
「もういいわ」
「姉様?」
「やっぱり婚姻せず独立すべきだったわ」
「そのときは僕もついて行くよ」
「ごめんね、ジュエル。
もう異性は信用できそうにないの。例え弟でも」
「アイリーン!」
「兄だった人が…私に愛してると囁いてきた人が…」
「分かった。分かったから。僕は一生姉様の味方だよ。だから泣かないで」
「ベロノワ家で領地を支えて。私、あそこにすごく投資しているのよ」
「僕の侍従宛に手紙を出して。彼の自宅に」
「分かったわ。消える時は教えない。
お兄様には嘘がバレてしまうから」
「いいよ。殴られたって口を割らないよ。殴り返すから」
「ジュエル、ありがとう」
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