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女神と接触
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【 ユーリ・コンドラーの視点 】
夜になり父上が帰ってきた。
『ユーリの友達だって?』
居間に入った父上はアイリーンを見て固まった。
誰も忠告しなかったのか!?
『アイリーンちゃん。主人のフィリップよ。
あなた。アイリーンちゃんよ』
『アイリーン・ベロノワと申します。
突然の訪問をお許しください』
『父上、私が誘ったんです。初めての令嬢の友達と離れたくなくて』
『本当にユーリと友達に? 酷いことを言われてないかい?』
『父上っ』
『船でユーリに助けていただきました。
素敵なご子息ですわ。賢くて思いやりがあって凛とした強さがあります。お友達になれて光栄です』
『ありがとう。初めて聞く言葉ばかりだよ』
父上!!!!!
『ふふっ』
『笑顔も可愛いな』
『そうなのよ。アイリーンちゃんは可愛過ぎるわ。
何か食べている時が一番可愛いのよ』
『犬や猫じゃないんだから』
『本当なのよ。美味しそうに食べるのよ』
『実際に美味しかったですから』
『そろそろ夕食だな。見てみよう』
『父上、そんなことをしたらアイリーンが緊張するじゃないですか!見ないでください!』
『番犬になったな……。
分かった分かった。睨むな。
そういえばベロノワって、栄えた港を持つベロノワ伯爵家のご令嬢?』
『ちょっと複雑で。今のところはベロノワ伯爵家の長男の妻です』
え!?
『まあ、結婚なさってるの!?』
『しかも2回目です』
『どうしよう。気になって眠れないわ』
母上!
『確かに気になるな』
『気になったからといって聞いていいとは限りません!私の友達に止めてください!』
『分かったよ。牙を隠せ』
『こんなに凶暴になって』
アイリーンがこっちを向いたから微笑んだ。
『?』
夕食では、二人はチラチラとアイリーンを見ながら笑いを堪えているし。
作りすぎだよ。アイリーンが困ってるじゃないか!
『アイリーンがこんなに食べるわけないだろう。
張り切りすぎだ。
アイリーン。食べれるだけでいいからね』
『もう限界が何回か来ました』
『そ、そうか』
食事が終わり立ち上がると、アイリーンのお腹がポッコリ膨らんでいた。
父上達はナプキンで顔を隠して肩を震わせていた。
『アイリーン、疲れたろう。今日は部屋でゆっくり休んで。送るよ』
『ありがとう、ユーリ。
ごちそうさまでした。お先に失礼いたします』
アイリーンを部屋に送り食堂へ戻った。
『父上!母上!』
『だって……可愛過ぎるんだもの…ぷっ』
『可愛いお腹だったな。お前達の小さい頃を思い出したよ…ククッ』
確かに可愛いかった。
『しかし、人妻に見えないな』
『ベロノワ家の令嬢じゃなくて令息の妻?』
『明日、王城へ行って聞いてくる。ベロノワ家ほどの家門なら外交部門が把握しているかもしれない。
戻りは明後日になるから、アイリーンを頼んだぞ』
『もちろんよ』
翌日、
『ユーリ。そんな高級な服じゃダメ。もっと安くて清潔感があって飾り気のない服に着替えて』
『分からないよ』
『ユーリの部屋に行くわよ』
アイリーンは私の手を掴んだ。
そのままアイリーンを私の部屋に連れて来た。
ブツブツ言いながら衣装を漁ると溜息を吐いた。
『買わなくちゃ』
町に出て平民向けの服屋に来た。
『いらっしゃい……これは公子様』
『服を探しに来たんだ』
『おじ様、ユーリのサイズで平凡だけど品のある服を探しているの。協力してくださる?』
『どんな感じですか』
『ほら、なんか抜けきらない貴族感。
こんなんじゃ緊張しちゃいますよね』
『ま、まあ』
『おじ様の若い頃のデート前日を思い出してください。清潔で嫌味がなくて』
彼は悩みながらスラックスと麻のシャツを持って来た。
『そうです。こんな感じです。
靴はありませんか。彼の靴では話になりません』
なんだか心が抉られる。
店の主人に用意してもらった服に着替えた。
『ユーリ。下向いて』
『わっ』
整えた髪をワシャワシャとアイリーンが乱した。
『前を向いて』
今度は簡単に手櫛で整えた。
アイリーンの顔が近い。彼女からいい香りがする。
うちの石鹸のはずなのに違う香りに感じる。
胸がドキドキしてきた。
『どうですか』
『これで歩いたらモテるでしょうね』
『でしょう? かっこいいわ』
『っ!!』
そして港町を一軒一軒入り、気さくに話しかけて話を聞き出す。
『そうなのよ。継いで欲しいのに古い店は嫌だって言うのよ』
『じゃあ綺麗になれば継ぐってことですね』
『そうかもしれないけど』
『言質とっておいてくださいね』
『うちは年配のお客さんが多いんだけど、段差がねえ。
若い子には大したことないんだろうけど』
『そんなことありません。
整備不良の桟橋で踵が挟まって海に落ちてしまったんです。心臓も呼吸も止まっていたらしいんです。
奇跡的に助けてもらって、今は元気ですけど。
若くたって足を取られたら危険だわ。
奥様の素敵なエプロン姿に目を奪われて段差に足を引っ掛けそうになりましたもの』
『まあ、段差のせいじゃなくて あたしのせいかい。
全く…可愛い顔をしてお世辞なんて使うんじゃないよ』
『お世辞じゃないですよ。さっき出て行ったおじ様は奥様狙いですよ』
『やっぱり…やたらと店に来るんだよ』
『“素敵です”って褒めてあげればお金を落としますよ』
『あのオヤジがかい?』
『あのおじ様はちゃんとお金を持っています。
しつこくなったら、“貴方はカッコ良すぎて落ち着かない”とか褒めながら…』
その先は聞こえなかった。
アイリーンが耳打ちをしてしまったから。
『それ、本当かい?』
『奥様なら使えます』
店から出ると何を言ったのか聞いた。
『さっきの店に通っているおじ様は指輪の日焼けの跡がしっかり付いていました。
憔悴してはいませんし、もしかしたら既婚者です。
何かの拍子に指をよく見れば、店に入る前に外したのか、最近急な別れがあったのかが分かります。
何ヶ月か経っても白さが同じなら店の前で指輪を外す不届者でしょう。
だから、おじ様と進展するつもりがないのなら、“不倫は嫌だ”というか、“代わりにはなれない”と断ればいいのです』
こわっ
夜になり父上が帰ってきた。
『ユーリの友達だって?』
居間に入った父上はアイリーンを見て固まった。
誰も忠告しなかったのか!?
『アイリーンちゃん。主人のフィリップよ。
あなた。アイリーンちゃんよ』
『アイリーン・ベロノワと申します。
突然の訪問をお許しください』
『父上、私が誘ったんです。初めての令嬢の友達と離れたくなくて』
『本当にユーリと友達に? 酷いことを言われてないかい?』
『父上っ』
『船でユーリに助けていただきました。
素敵なご子息ですわ。賢くて思いやりがあって凛とした強さがあります。お友達になれて光栄です』
『ありがとう。初めて聞く言葉ばかりだよ』
父上!!!!!
『ふふっ』
『笑顔も可愛いな』
『そうなのよ。アイリーンちゃんは可愛過ぎるわ。
何か食べている時が一番可愛いのよ』
『犬や猫じゃないんだから』
『本当なのよ。美味しそうに食べるのよ』
『実際に美味しかったですから』
『そろそろ夕食だな。見てみよう』
『父上、そんなことをしたらアイリーンが緊張するじゃないですか!見ないでください!』
『番犬になったな……。
分かった分かった。睨むな。
そういえばベロノワって、栄えた港を持つベロノワ伯爵家のご令嬢?』
『ちょっと複雑で。今のところはベロノワ伯爵家の長男の妻です』
え!?
『まあ、結婚なさってるの!?』
『しかも2回目です』
『どうしよう。気になって眠れないわ』
母上!
『確かに気になるな』
『気になったからといって聞いていいとは限りません!私の友達に止めてください!』
『分かったよ。牙を隠せ』
『こんなに凶暴になって』
アイリーンがこっちを向いたから微笑んだ。
『?』
夕食では、二人はチラチラとアイリーンを見ながら笑いを堪えているし。
作りすぎだよ。アイリーンが困ってるじゃないか!
『アイリーンがこんなに食べるわけないだろう。
張り切りすぎだ。
アイリーン。食べれるだけでいいからね』
『もう限界が何回か来ました』
『そ、そうか』
食事が終わり立ち上がると、アイリーンのお腹がポッコリ膨らんでいた。
父上達はナプキンで顔を隠して肩を震わせていた。
『アイリーン、疲れたろう。今日は部屋でゆっくり休んで。送るよ』
『ありがとう、ユーリ。
ごちそうさまでした。お先に失礼いたします』
アイリーンを部屋に送り食堂へ戻った。
『父上!母上!』
『だって……可愛過ぎるんだもの…ぷっ』
『可愛いお腹だったな。お前達の小さい頃を思い出したよ…ククッ』
確かに可愛いかった。
『しかし、人妻に見えないな』
『ベロノワ家の令嬢じゃなくて令息の妻?』
『明日、王城へ行って聞いてくる。ベロノワ家ほどの家門なら外交部門が把握しているかもしれない。
戻りは明後日になるから、アイリーンを頼んだぞ』
『もちろんよ』
翌日、
『ユーリ。そんな高級な服じゃダメ。もっと安くて清潔感があって飾り気のない服に着替えて』
『分からないよ』
『ユーリの部屋に行くわよ』
アイリーンは私の手を掴んだ。
そのままアイリーンを私の部屋に連れて来た。
ブツブツ言いながら衣装を漁ると溜息を吐いた。
『買わなくちゃ』
町に出て平民向けの服屋に来た。
『いらっしゃい……これは公子様』
『服を探しに来たんだ』
『おじ様、ユーリのサイズで平凡だけど品のある服を探しているの。協力してくださる?』
『どんな感じですか』
『ほら、なんか抜けきらない貴族感。
こんなんじゃ緊張しちゃいますよね』
『ま、まあ』
『おじ様の若い頃のデート前日を思い出してください。清潔で嫌味がなくて』
彼は悩みながらスラックスと麻のシャツを持って来た。
『そうです。こんな感じです。
靴はありませんか。彼の靴では話になりません』
なんだか心が抉られる。
店の主人に用意してもらった服に着替えた。
『ユーリ。下向いて』
『わっ』
整えた髪をワシャワシャとアイリーンが乱した。
『前を向いて』
今度は簡単に手櫛で整えた。
アイリーンの顔が近い。彼女からいい香りがする。
うちの石鹸のはずなのに違う香りに感じる。
胸がドキドキしてきた。
『どうですか』
『これで歩いたらモテるでしょうね』
『でしょう? かっこいいわ』
『っ!!』
そして港町を一軒一軒入り、気さくに話しかけて話を聞き出す。
『そうなのよ。継いで欲しいのに古い店は嫌だって言うのよ』
『じゃあ綺麗になれば継ぐってことですね』
『そうかもしれないけど』
『言質とっておいてくださいね』
『うちは年配のお客さんが多いんだけど、段差がねえ。
若い子には大したことないんだろうけど』
『そんなことありません。
整備不良の桟橋で踵が挟まって海に落ちてしまったんです。心臓も呼吸も止まっていたらしいんです。
奇跡的に助けてもらって、今は元気ですけど。
若くたって足を取られたら危険だわ。
奥様の素敵なエプロン姿に目を奪われて段差に足を引っ掛けそうになりましたもの』
『まあ、段差のせいじゃなくて あたしのせいかい。
全く…可愛い顔をしてお世辞なんて使うんじゃないよ』
『お世辞じゃないですよ。さっき出て行ったおじ様は奥様狙いですよ』
『やっぱり…やたらと店に来るんだよ』
『“素敵です”って褒めてあげればお金を落としますよ』
『あのオヤジがかい?』
『あのおじ様はちゃんとお金を持っています。
しつこくなったら、“貴方はカッコ良すぎて落ち着かない”とか褒めながら…』
その先は聞こえなかった。
アイリーンが耳打ちをしてしまったから。
『それ、本当かい?』
『奥様なら使えます』
店から出ると何を言ったのか聞いた。
『さっきの店に通っているおじ様は指輪の日焼けの跡がしっかり付いていました。
憔悴してはいませんし、もしかしたら既婚者です。
何かの拍子に指をよく見れば、店に入る前に外したのか、最近急な別れがあったのかが分かります。
何ヶ月か経っても白さが同じなら店の前で指輪を外す不届者でしょう。
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