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異母兄の交流
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翌日、特別室に行き朝食を食べていると冊子が見えた。
“ペルラン王国へようこそ”
観光案内のようだ。
お父様が?ジュエルが?
「アレはどうしたのですか?」
「借りたんだ」
ジュエルだった。
「行きたいの?」
「知ってはおきたいと思うかな」
お父様の顔を見ても微笑むだけ。
「ジュエルが遠くにいっちゃうのね」
悲しそうに言うとジュエルが慌てた。
「ひとりでは行かないよ!」
「ふうん?」
「…姉様と行きたいなって」
「ペルランに?」
「僕だって姉様と一緒に旅したいって言ったじゃないか。
たまたまコンドラー公爵家は害はないようだけど、いつもそうとは限らない。
もうコンドラー港は仕上がりを待つだけなんだろう?次の旅先を検討しているはずだ。
つまりもっと遠くに行こうとしてるよね」
「ジュエル」
「僕はもう卒業したよ。姉様がいないうちに試験を受けたから縛りはない。
美しい姉様をよく分からない土地に行かせるならペルランの方がマシだと思ったんだ」
「あの人に何か言われたの」
「王太子殿下?言われてないよ。
よく考えて。姉様に危険が及ぶということは、セイビアンやロザリーナはもっと危険だ。
二人しか護衛がいないんだから。
今なら王太子殿下達にくっついてきた護衛騎士達を使って移動できる。帰りだって僕達だけで帰したりしないはずだ。
父上はどう思いますか」
「ジュエルの言う通りだな。ペルランなら王太子殿下が守ってくださるだろう」
「お父様」
「なんてことはない。私達とアイリーンの絆は永遠だ。見た目だってアイリーンはベロノワ家の娘だ。そうだろう?
ベロノワに帰って来て欲しいが、まだ無理で旅を続けるならジュエルの言う通りだと私も思う。
それにジュエルには剣術を中心に武術を習わせているから安心だ。
ペルランに行ったら、視察してきてくれ。
オベールが伯爵になったら私達を家族旅行に連れて行ってくれないか」
「お父様とお母様を?」
「娘と旅行なんて贅沢か?」
「分かりました。
ごめんね ジュエル。疑っちゃって」
「酷いよ。僕はいつも姉様の味方だし、姉様が大好きなのに」
「ごめんね」
野性の勘か、図々しいのか。
「なあ、ジュエル。特別室っていいな」
「譲りませんよ」
「見ろよ、この眺め。
このバルコニーでティータイムなんて贅沢だと思わないか?」
「贅沢だと思うならコンドラー邸に戻ってください」
「ジュエル。兄弟じゃないか」
「……兄弟」
「ダメダメダメダメ!ジュエル、リアム殿下に絆されちゃダメ!」
朝食を終えて一時間程でリアム殿下は特別室に押しかけてきた。
「ジュエルは可愛いな」
「何言ってるんですか!
可愛いのは確かですけど愛でていいのは私とお父様達だけです!」
「いいじゃないか。アイリーンの弟なら 私の弟だろう。な、ジュエル」
「……」
「ちょっと!ジュエルを返してください!」
「嫌だよ。
ジュエル。温泉があるんだって。一緒に行こう」
「え?」
「大浴場だ。兄弟で絆を深めよう」
「じゃあ、私はお父様と、」
「「駄目に決まってるだろう!」」
「なんか息ぴったり。ジュエル、こっちにおいで。
ほら。お姉様のお膝に頭を乗せたら撫でてあげるわ。ジュエルは好きだったでしょう?」
「うん!」
「なら、先に私が」
「何でですか」
「何でこんなに煩いんだ。幼い子供が三人集まったみたいだ」
「リアム殿下はお父上と一緒にいないのですか?」
「ライアン王弟殿下と仕事の話をしてるから こっちに来たんだ。よっと」
「何してるんですか!」
「早く撫でてよ」
殿下が私の膝の上に頭を乗せた。
「ジュエル。水差しと布を持ってきて」
ガバッ!
リアム殿下は急いで体を起こした。
「拷問じゃないか!」
「正解」
「よし、悪い子にはお仕置きだ!」
「きゃあ!」
リアム殿下は私を横抱きにしてグルグル回り始めた。
「ちょっと!や、」
「殿下、危ないですよ」
お父様の制止も虚しく
「うわっ」
「ひゃあっ!」
リアム殿下がバランスを崩して倒れた。
私はその上に倒れたのであまり痛くは無かったけど
「あ~」
ジュエルが近寄って私を抱き上げながら殿下を見下ろした。
「姉上、何かした?」
「したというか、倒れたときに柔らかいモノが当たったような」
「潰したか?」
「どうでしょう」
お父様とジュエルは呑気なことを言っているが、当の本人は股間を押さえて踞り悶絶していた。
念のために往診を頼んだ。
「潰れていませんよ」
そう言ってお医者様は帰って行った。
「アイリーンのせいでお婿に行けない」
「何を言ってるんですか。元々行かないくせに」
第一王子だからね。
「アレくらいでバランスを失うなんて軟弱ですよ」
「ジュエルは鍛えているものね」
そう言ってジュエルの胸筋や腹筋を撫で回していたが、
「アイリーン。ジュエルが恥ずかしがっているからその辺で止めてやりなさい」
ジュエルの顔を見ると、彼は顔を背けて赤くなっていた。
「何で恥ずかしいの?昔だって触ってたのに」
「ね、姉様」
「私も触ってくれ」
「変態」
「何でだよ」
「ジュエル、真似しちゃ駄目ですよ」
ジュエルの腕に絡みついて肩に頭を預けた。
すると殿下も私の隣に座り、自分の肩を叩いた。
「ほら、こっちの肩もあるぞ」
「可愛いジュエルがいいのです」
「いいなぁ ジュエルは」
“ペルラン王国へようこそ”
観光案内のようだ。
お父様が?ジュエルが?
「アレはどうしたのですか?」
「借りたんだ」
ジュエルだった。
「行きたいの?」
「知ってはおきたいと思うかな」
お父様の顔を見ても微笑むだけ。
「ジュエルが遠くにいっちゃうのね」
悲しそうに言うとジュエルが慌てた。
「ひとりでは行かないよ!」
「ふうん?」
「…姉様と行きたいなって」
「ペルランに?」
「僕だって姉様と一緒に旅したいって言ったじゃないか。
たまたまコンドラー公爵家は害はないようだけど、いつもそうとは限らない。
もうコンドラー港は仕上がりを待つだけなんだろう?次の旅先を検討しているはずだ。
つまりもっと遠くに行こうとしてるよね」
「ジュエル」
「僕はもう卒業したよ。姉様がいないうちに試験を受けたから縛りはない。
美しい姉様をよく分からない土地に行かせるならペルランの方がマシだと思ったんだ」
「あの人に何か言われたの」
「王太子殿下?言われてないよ。
よく考えて。姉様に危険が及ぶということは、セイビアンやロザリーナはもっと危険だ。
二人しか護衛がいないんだから。
今なら王太子殿下達にくっついてきた護衛騎士達を使って移動できる。帰りだって僕達だけで帰したりしないはずだ。
父上はどう思いますか」
「ジュエルの言う通りだな。ペルランなら王太子殿下が守ってくださるだろう」
「お父様」
「なんてことはない。私達とアイリーンの絆は永遠だ。見た目だってアイリーンはベロノワ家の娘だ。そうだろう?
ベロノワに帰って来て欲しいが、まだ無理で旅を続けるならジュエルの言う通りだと私も思う。
それにジュエルには剣術を中心に武術を習わせているから安心だ。
ペルランに行ったら、視察してきてくれ。
オベールが伯爵になったら私達を家族旅行に連れて行ってくれないか」
「お父様とお母様を?」
「娘と旅行なんて贅沢か?」
「分かりました。
ごめんね ジュエル。疑っちゃって」
「酷いよ。僕はいつも姉様の味方だし、姉様が大好きなのに」
「ごめんね」
野性の勘か、図々しいのか。
「なあ、ジュエル。特別室っていいな」
「譲りませんよ」
「見ろよ、この眺め。
このバルコニーでティータイムなんて贅沢だと思わないか?」
「贅沢だと思うならコンドラー邸に戻ってください」
「ジュエル。兄弟じゃないか」
「……兄弟」
「ダメダメダメダメ!ジュエル、リアム殿下に絆されちゃダメ!」
朝食を終えて一時間程でリアム殿下は特別室に押しかけてきた。
「ジュエルは可愛いな」
「何言ってるんですか!
可愛いのは確かですけど愛でていいのは私とお父様達だけです!」
「いいじゃないか。アイリーンの弟なら 私の弟だろう。な、ジュエル」
「……」
「ちょっと!ジュエルを返してください!」
「嫌だよ。
ジュエル。温泉があるんだって。一緒に行こう」
「え?」
「大浴場だ。兄弟で絆を深めよう」
「じゃあ、私はお父様と、」
「「駄目に決まってるだろう!」」
「なんか息ぴったり。ジュエル、こっちにおいで。
ほら。お姉様のお膝に頭を乗せたら撫でてあげるわ。ジュエルは好きだったでしょう?」
「うん!」
「なら、先に私が」
「何でですか」
「何でこんなに煩いんだ。幼い子供が三人集まったみたいだ」
「リアム殿下はお父上と一緒にいないのですか?」
「ライアン王弟殿下と仕事の話をしてるから こっちに来たんだ。よっと」
「何してるんですか!」
「早く撫でてよ」
殿下が私の膝の上に頭を乗せた。
「ジュエル。水差しと布を持ってきて」
ガバッ!
リアム殿下は急いで体を起こした。
「拷問じゃないか!」
「正解」
「よし、悪い子にはお仕置きだ!」
「きゃあ!」
リアム殿下は私を横抱きにしてグルグル回り始めた。
「ちょっと!や、」
「殿下、危ないですよ」
お父様の制止も虚しく
「うわっ」
「ひゃあっ!」
リアム殿下がバランスを崩して倒れた。
私はその上に倒れたのであまり痛くは無かったけど
「あ~」
ジュエルが近寄って私を抱き上げながら殿下を見下ろした。
「姉上、何かした?」
「したというか、倒れたときに柔らかいモノが当たったような」
「潰したか?」
「どうでしょう」
お父様とジュエルは呑気なことを言っているが、当の本人は股間を押さえて踞り悶絶していた。
念のために往診を頼んだ。
「潰れていませんよ」
そう言ってお医者様は帰って行った。
「アイリーンのせいでお婿に行けない」
「何を言ってるんですか。元々行かないくせに」
第一王子だからね。
「アレくらいでバランスを失うなんて軟弱ですよ」
「ジュエルは鍛えているものね」
そう言ってジュエルの胸筋や腹筋を撫で回していたが、
「アイリーン。ジュエルが恥ずかしがっているからその辺で止めてやりなさい」
ジュエルの顔を見ると、彼は顔を背けて赤くなっていた。
「何で恥ずかしいの?昔だって触ってたのに」
「ね、姉様」
「私も触ってくれ」
「変態」
「何でだよ」
「ジュエル、真似しちゃ駄目ですよ」
ジュエルの腕に絡みついて肩に頭を預けた。
すると殿下も私の隣に座り、自分の肩を叩いた。
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「可愛いジュエルがいいのです」
「いいなぁ ジュエルは」
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