【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

文字の大きさ
51 / 69

次の旅へ

しおりを挟む
ユ「え? ペルランへ!?」

公爵邸の庭園でお父様がみんなに説明をした。

父「見たところ、コンドラー港の改革は終わっているようです。建設中や改装中の建物待ちなどは図面や仕様書に従って建てればいいだけで、アイリーンには建物の建て方などは分かりません。
公子、アイリーンが見守る必要はありません」

ユ「……」

公「ベロノワへ連れ戻すのですか」

父「アイリーンは元々別の地へ向かっていました。
一年以上もコンドラーに尽力したのですからそろそろ旅を続けてもよろしいですね?」

公「はい」

ユ「父上!」

公「ユーリ。伯爵の仰る通りだ」

父「レナード王太子殿下。ペルランへ帰国する際にアイリーンとジュエルを観光に連れて行っていただけませんか」

レ「え?」

父「アイリーンが帰りたいと言ったら、ベロノワの船が停泊する港まで送り届けてくださると約束していただけるのであればの話ですが」

レ「アイリーン」

私「ジュエルが行きたいみたいなので」

レ「分かりました。その条件でお預かりします」

父「ジュエルにはいかなる場所にも帯剣させ、アイリーンのためにそれを使うこともお許しください」

レ「アイリーンの身に危険が及んだ時だけ抜くことを承諾します。
伯爵はいらっしゃらないのですか」

父「私はベロノワで仕事がありますから」

レ「残念です」

父「引退祝いの旅行で訪問させてください」

レ「それは楽しみです。夫人にもよろしくお伝えください」

私「コンドラー家の皆様、お世話になりました」

公「我々が世話になったんだ。心より感謝申し上げます」

ユ「感謝…します」



翌日の夜に公爵邸から荷物を引き上げた。
増えた荷物はお父様が船で持って帰ってくれる。

そして翌朝。コンドラー港に停泊していたベロノワ行きの大型客船に乗る父を見送りに来た。

「アイリーン。本当に離縁届を出していいんだね?」

「はい」

「オベールには妻が必要だ。他の令嬢と婚姻させてもいいんだね?」

「はい」

「ベロノワに到着したらすぐに手続きをしよう。
籍はカトリス家のままにするのか」

「はい。ペルランから戻ったら考えます」

「ベロノワに戻るまではベロノワを名乗りなさい。
ジュエル。アイリーンを頼んだぞ」

「お任せください」

「お父様」

お父様に抱きつくと力強く抱きしめてくれた。

「私の天使」

「お父様が大好きです」

「私もアイリーンを愛してるよ。…アイリーン。泣くことはない。今度は一年もかからずに再会できる」

「はい」



お父様とエリス達を乗せた船を見送り、ホテルに戻るとペルランの一行が待っていた。

リ「行こうか」


カポっ カポっ カポっ カポっ

リ「ねえ~。なんで?」

私「気持ちいいからです」

セイビアンの乗る馬に乗せてもらって景色を見て日差しを感じて空気を吸っている。

リ「お兄様が乗せてあげようか」

私「自分で自分をお兄様なんて言わないでください」

リ「じゃあアイリーンが呼んでよ」

私「セイビアン。あっちに熊いるわね」

セ「本当ですね。馬車に乗りますか」

私「リアム兄様、私達と変わりませんか?」

リ「私を熊の生贄にするつもりだな」

私「仕方ないわね」

私がそう言うとセイビアンがポケットから笛を出して吹いた。

ガサガサガサっ

熊は逃げて行った。

リ「熊が逃げた」

私「熊が不快に思う音が出る笛です」

リ「凄いなソレ!何処で売ってるんだ!」

私「ベロノワです」

リ「くれ」

私「嫌です」




【 実父レナードの視点 】


アイリーンが私を怨んでいるのは一応想定していたが、“会いたかった”と抱き付いてもらえる妄想をしていた。

実際にイレーネにそっくりの自分娘に責め立てられるのは堪える。

王太子になってから側にいる護衛にも言われた。

「聞けば聞くほど酷いですね。言い訳せず、仰る通りですと平謝りに徹して怒りが和らぐのを待つしかありません。アイリーン様がこれまで生きてきた年数分、殿下はアイリーン様のしもべとなるのです。本当になっては駄目ですよ?それくらい心を低姿勢にしましょうという話です」

別の護衛からも呆れられた。

「いっそ、気が済むまでボコボコにして貰えばよろしいのでは?」

「馬鹿。アイリーン様の手が傷むだろう」

「道具を渡しますか?」

「血なんて出てみろ。アイリーン様のトラウマになってしまうだろう!」

「じゃあ、踏んでもらうとか」

「違う意味で避けられるじゃないか」

この二人はもう面白がってるな。

念のために今回連れてきた女騎士に聞いてみた。

「え?私ですか?……私でしたらボッコボコにします」

「ほら~」

「ほらじゃない」

聞いた相手がまずかった。


だが、この子を連れて来て正解だった。

あれだけ頑なだったアイリーンを落としたのはリアムだった。

リアムはジュエルに焦点を絞った。

「ジュエルはひたすらアイリーンのために生きてきたような子です。その子が行きたいと言い出せばアイリーンは無視できません。
私の提案は彼の信念からも外れません」

そしてリアムは子供に戻ったかのようにアイリーン達と楽しく騒ぐ。

ペルランでの滞在を失敗させられない。
必ずベロノワ伯爵夫妻を来させたいと思ってもらわないとならない。


ペルラン城まであと二日というところで一人先触れに行かせた。

「絶対に失敗できない要人を連れていくと伝えて準備させてくれ。
二人の性別や年齢も伝えて部屋は隣にしてやって欲しい」

「お任せください」

「陛下に今回の旅の報告を上げておいて欲しい」

「かしこまりました」


最愛の娘に話しかけては貰えないが、側でリアム達と笑ってくれているのを見ることができる。

リアム。ありがとう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。  読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。 「私は君を愛することはないだろう。  しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。  これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」  結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。  この人は何を言っているのかしら?  そんなことは言われなくても分かっている。  私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。  私も貴方を愛さない……  侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。  そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。  記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。  この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。  それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。  そんな私は初夜を迎えることになる。  その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……    よくある記憶喪失の話です。  誤字脱字、申し訳ありません。  ご都合主義です。  

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。

クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」 平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。 セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。 結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。 夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。 セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。 夫には愛人がいた。 愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される… 誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました

よどら文鳥
恋愛
 ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。  ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。  ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。  更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。  再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。  ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。  後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。  ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。

処理中です...