【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

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いつもの二人

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【 ジュエルの視点 】


国境で待つと、久しぶりに会ったアイリーンは抱き付いて涙を溢した。
その元凶のクソ公爵を懲戒破門へ追い込んだ。

公爵は二度と教会に立ち入ることができない。
教会が関わる一切の建物に脚を踏み入れることもできないし、行事にも参加できない。廃嫡されるだろう。

アイリーンとの平和な日々を取り戻したと思ったのに、兄上の嫁が養女の件をバラしてしまった。
アイリーンはまた政略結婚したいと言い出した。

ベロノワはソフィアをクビにして、兄上がアイリーンを手に入れた。

僕だってアイリーンが欲しい。
だけどベロノワ伯爵家の跡継ぎである兄上と婚姻した方が彼女のためだと気持ちを飲み込んだ。


ソフィアを片付けに行った。

侯爵領で子を産んだ後、平民に戻ったと報告を受けた。最後にいた場所から近い町に行くとソフィアが宿を取っていた。早朝、宿に忍び込み 宿帳を確認して部屋へ行った。ノックするとソフィアがドアを開けた。

『ジュエル様』

『ベロノワ家からの提案がある』

ソフィアの顔は生気を取り戻し、部屋の中に入れた。ドアを閉め、ソフィアに荷物を纏めるように命じた。窓を開けて支度を待つ。

『終わったわ』

『念のため忘れ物がないか再確認してくれ。ベロノワから取りに戻るには此処は遠いからな』

ソフィアが後ろを向いた瞬間、細紐を首に巻きつけ 背負うように持ち上げた。
ソフィアの脚がバタバタと宙を掻く。

やがて静かになると降ろしてベッドの脚に細紐を巻き付け、ソフィアを窓から吊るした。
バックを見るとかなり金を持っていたので全部ベッドの上に宿への迷惑料のつもりで出しておいた。

宿を後にしてベロノワ邸へ戻った。
これでアイリーンの憂いは薄まるだろう。


だが、アイリーンと婚姻した幸運の兄上おとこが彼女を傷付けた。
アイリーンが去る準備をしている。
だけど僕から逃す気はない。

セイビアンとロザリーナを呼び出して任務を伝えた。

『姉様がベロノワから距離を置きたがっている。
実際には違うが退職したと言って旅について行き、姉様を守って欲しい。
そして時々報告の手紙を送ってくれ』


一年間、アイリーンからの手紙とセイビアン達からの報告の手紙だけが生き甲斐だった。だがやっと会えるときが来た。

早速兄上がアイリーンとよりを戻したと思ったがそうではなかった。アイリーンは心までは許さなかった。

父上と一緒にサルフェト王国のコンドラー港を改革しているアイリーンに会いに来た。
ユーリ・コンドラー公子がくっついてはいたが恋敵となるレベルではないと判断して放置した。


アイリーンの本当の血縁である異母兄のリアム殿下は、アイリーンの不信感が根深いと判ると僕に接触してきた。
賢い男だ。僕の気持ちも勘付いているしアイリーンの弱点を理解している。
この男が赤の他人なら 直ぐに引き離してベロノワへアイリーンを連れ戻しただろう。だが兄妹だ。


父上に相談した。

「その話に乗ってみるのも悪くない」

「姉様をペルランへ?」

「レナード王太子殿下の愛情は本物だ。
他に娘がいない上に 愛した王女との一人娘でそっくりのアイリーンにどう対応していいのか分からない不器用な面を持つが善良な方だろう。
リアム殿下の仰る通り、この先のアイリーンのために関係を改善することは良いことだ。

それにオベールが駆けつけることができるサルフェトでは駄目だ」

「兄上と離縁させるのですか」

「オベールにはチャンスをやったし、アイリーンがオベールを受け入れきれないでいる以上は仕方ない。
アイリーンはまだまだ若い。時間をかけて自分の将来を決めたっていいはずだ。だからアイリーンが望むなら離縁させる。
スッキリとした気持ちで旅をするのも良いだろう。
レナード王太子殿下一行が共に移動してくださるなら安心だ」

「僕も姉様に着いて行っても構いませんか」

「お前には苦労をかけたからな」

「ありがとうございます」

「ジュエル」

「はい」

「お前が最後の砦だ」

「分かっています」



離縁を決めたアイリーンと一緒にペルラン王国へ到着した日の夜、姉弟間で決めたノックの音がした。
開けるとアイリーンが立っていた。

眠れないというアイリーンと一緒に寝ようとしたが拒否された。

「お願い」

膝をついて見上げるとアイリーンは葛藤して負けた。未だにこうやってお強請りするとアイリーンは断れない。

アイリーンは僕を寝かし付けて自分の客室に戻ろうとしているけど、僕の方が寝かし付け方を心得ているんだよ。


「すーっ すーっ」

小さな寝息が聞こえる。

寝顔を見ていると、アイリーンが少しずつこっちに寄ってくる。胸に頬を付けて腕を乗せて抱き付くアイリーンの首の下に腕を通して抱きしめた。

肌寒くなりだすと、温もりを求めて抱き付いてくるのは昔から変わらない。



モゾモゾと動き始めたことで目覚めると朝だった、アイリーンは恥ずかしそうな顔をしていた。

「ごめんね、寝ちゃって」

しっかり抱き寄せて額にキスをした。

「いつものことだろう。遠慮することはないよ」

「でも」

「眠れて良かった。他所の国で体調を崩す方が問題だからね。体調は大丈夫?」

「うん。ジュエルは?」

「大好きな姉様と一緒だからすごく元気だよ」

「ジュエルは相変わらずあったかいわね」

「姉様を温めるためだよ」

「重くない?」

「重くないよ」

30分くらい そんな時間を過ごした後に朝食を運んでもらい食べた。








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