10 / 52
僕と近衛隊の副隊長
ガキッ
木刀の接触する音と同時に折れる音、
ドゴッ
すぐ防具に当たる音、
「グハッ」
ズサーッ
地面に体が擦れる音。
そして静まり返る訓練場に副団長の声が響く。
「副隊長は、サモール卿を無能呼ばわりして彼の名誉を貶めた。
サモール卿は近衛からも全辺境伯軍からも、全公爵家からも、全侯爵家からもオファーがあったほどの実力者だ。
他の新兵達と同じ扱いをして下積みをさせない理由は、近衛の副隊長でさえ敵わない実力があって不要だからだ。
手加減しないと相手を殺しかねない力の持ち主で、さっき見たように副隊長からの攻撃を防ぐこともできる。
だから補佐に就かせて荷物を持たせ、会話を聞かせて覚えさせているんだ。
さあ、もう1人居たな」
僕の陰口を言っていた、防具を着けている近衛は謝った。
「申し訳ありません!」
「他にもいるか?
不満があるなら今、決着をつけるぞ」
誰も名乗り出なかった。
「副団長。終わりでいいかな?」
「はい」
団長は倒れて痛みに苦しむ副隊長の側まで行くと、
「近衛隊、バード副隊長」
「…は…い」
「任を解く」
「そ…んな」
「副隊長の役割は部下を助け指導し、隊を纏め、団に貢献することであって、新人の陰口を言うことではない。卑怯者が。
不満があるなら堂々と言えばいいだろう」
「っ!」
「半年間、庭師になれ。
お前達の目にはサモール卿は庭師が向いてると映ったのだよな?お前達がしっかり体験するといい。
その後は騎士団の下働きを半年間。
その間の賃金は、今のサモール卿と同じ額になる。
彼に負けたのだから、本当はそれより安くないとならないが、サモール卿は補佐官の賃金ではなく新人騎士と同じ額しかもらっていない。
だから同額で許してやろう」
「そんな…妻と子が…」
「養うべき大事な家族がいるのなら慎重になるべきだったな。
妻と子に、新人イビリをして、その新人に負けて庭師見習いになったと正直に告げて、節約させるなり、金目の物を売るなり、実家に支援を頼むんだな。
ギャバエル卿。お前もだからな。
2人とも、騎士宿舎の荷物を使用人の部屋に移せ。後で案内のメイドを行かせる。
庭師見習いだからな。ほとんどが肉体労働だから、明日から汚れてもいい服を着ろよ。
身分証は差し替える。支給品と一緒に置いていけ。新しい身分証は部屋に置かせたから無くすなよ」
「申し訳ありませんでした…ですが息子が来月婚約式なのです」
「署名は?」
「婚約式の日に」
「そうか。なら先方に話して待ってもらうか、続けるか、無かったことにするか選んでもらえ」
「息子に罪はありません」
「相手にそう言えばいいだろう。其方には罪があるのだから仕方ない。
1年後の今日、近衛隊の入隊試験を行う。
受かれば2人とも近衛隊の新人だ。受からなかったら一般兵から頑張るんだな」
「あまりにも罰が重すぎます」
「私も彼を近衛隊へ誘った一人だ。
彼を無能呼ばわりするということは、私のことも、副団長のことも、辺境伯達や公爵達や侯爵達、その他オファーした者達に、お前達は見る目が無いと侮辱してるのも同じだと気付かないのか?」
「そんなつもりは…」
「つもりが無くても言ってしまったんだ。
不満なら城から去れ」
項垂れたギャバエル卿と立てないバード副隊長は連れていかれてしまった。
「サモール卿、すまなかったな。
監督不行き届きだった」
「いえ。私自身も迷いがありました。このままでいいのかと。その弱々しさが招いた結果です。ご迷惑をお掛けしました」
「こんな真っ直ぐな息子が欲しいものだ」
「止めてください。私の部下ですから」
「面白いものを見せてもらった」
王太子殿下が側まで歩いて来た。
「王太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「不自由はないか」
「ございません!」
「元気だな。頑張ってくれ」
「はっ!」
木刀の接触する音と同時に折れる音、
ドゴッ
すぐ防具に当たる音、
「グハッ」
ズサーッ
地面に体が擦れる音。
そして静まり返る訓練場に副団長の声が響く。
「副隊長は、サモール卿を無能呼ばわりして彼の名誉を貶めた。
サモール卿は近衛からも全辺境伯軍からも、全公爵家からも、全侯爵家からもオファーがあったほどの実力者だ。
他の新兵達と同じ扱いをして下積みをさせない理由は、近衛の副隊長でさえ敵わない実力があって不要だからだ。
手加減しないと相手を殺しかねない力の持ち主で、さっき見たように副隊長からの攻撃を防ぐこともできる。
だから補佐に就かせて荷物を持たせ、会話を聞かせて覚えさせているんだ。
さあ、もう1人居たな」
僕の陰口を言っていた、防具を着けている近衛は謝った。
「申し訳ありません!」
「他にもいるか?
不満があるなら今、決着をつけるぞ」
誰も名乗り出なかった。
「副団長。終わりでいいかな?」
「はい」
団長は倒れて痛みに苦しむ副隊長の側まで行くと、
「近衛隊、バード副隊長」
「…は…い」
「任を解く」
「そ…んな」
「副隊長の役割は部下を助け指導し、隊を纏め、団に貢献することであって、新人の陰口を言うことではない。卑怯者が。
不満があるなら堂々と言えばいいだろう」
「っ!」
「半年間、庭師になれ。
お前達の目にはサモール卿は庭師が向いてると映ったのだよな?お前達がしっかり体験するといい。
その後は騎士団の下働きを半年間。
その間の賃金は、今のサモール卿と同じ額になる。
彼に負けたのだから、本当はそれより安くないとならないが、サモール卿は補佐官の賃金ではなく新人騎士と同じ額しかもらっていない。
だから同額で許してやろう」
「そんな…妻と子が…」
「養うべき大事な家族がいるのなら慎重になるべきだったな。
妻と子に、新人イビリをして、その新人に負けて庭師見習いになったと正直に告げて、節約させるなり、金目の物を売るなり、実家に支援を頼むんだな。
ギャバエル卿。お前もだからな。
2人とも、騎士宿舎の荷物を使用人の部屋に移せ。後で案内のメイドを行かせる。
庭師見習いだからな。ほとんどが肉体労働だから、明日から汚れてもいい服を着ろよ。
身分証は差し替える。支給品と一緒に置いていけ。新しい身分証は部屋に置かせたから無くすなよ」
「申し訳ありませんでした…ですが息子が来月婚約式なのです」
「署名は?」
「婚約式の日に」
「そうか。なら先方に話して待ってもらうか、続けるか、無かったことにするか選んでもらえ」
「息子に罪はありません」
「相手にそう言えばいいだろう。其方には罪があるのだから仕方ない。
1年後の今日、近衛隊の入隊試験を行う。
受かれば2人とも近衛隊の新人だ。受からなかったら一般兵から頑張るんだな」
「あまりにも罰が重すぎます」
「私も彼を近衛隊へ誘った一人だ。
彼を無能呼ばわりするということは、私のことも、副団長のことも、辺境伯達や公爵達や侯爵達、その他オファーした者達に、お前達は見る目が無いと侮辱してるのも同じだと気付かないのか?」
「そんなつもりは…」
「つもりが無くても言ってしまったんだ。
不満なら城から去れ」
項垂れたギャバエル卿と立てないバード副隊長は連れていかれてしまった。
「サモール卿、すまなかったな。
監督不行き届きだった」
「いえ。私自身も迷いがありました。このままでいいのかと。その弱々しさが招いた結果です。ご迷惑をお掛けしました」
「こんな真っ直ぐな息子が欲しいものだ」
「止めてください。私の部下ですから」
「面白いものを見せてもらった」
王太子殿下が側まで歩いて来た。
「王太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「不自由はないか」
「ございません!」
「元気だな。頑張ってくれ」
「はっ!」
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
阿里
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています
もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。
ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。
庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。
全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。
なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。