【完結】強面巨体の僕は家族に邪険にされたけど、いつの間にか美少女と婚約していた

長兄バンスとクリス

【 長兄バンスの視点 】　


私は伯爵家の長男として生まれ、大事に育てられてきた。

弟が２人生まれた。最初は可愛がっていたが、ある日 可愛い親戚の女の子が言った。

『何でクリス君の方が大きいの？』

鼻で笑われたように感じた。お前はチビだなと。
それ以来、気にしなかったことが気になってくる。

“クリス君の方が体格がいいわね”

“クリス君の方が背が高いな”

“クリス君の方が強そうだ”

“クリス君は前伯爵似だね。まるで跡継ぎみたいだ”

“クリス様は剣術に才がおありですね”

“クリス様は吸収する速度が早いですね。本気でやれば直ぐに皆を抜くでしょう”

みんな クリス！クリス！クリス！クリス！！
四つも歳下の弟に私が負けていると？


いつの間にかクリスを攻撃するようになった。苛立ちがおさまらず自分を止められなかった。
だってクリスは平気そうな顔をしていたから、投げつける言葉も酷くなってきて、手も足も出るようになった。

そしてヘンドリックも私と同じことをしていた。


クリスはよく小さな子や女の子に怖がられていた。
だから婚約者も見つけるのは大変だろうと話しているのを聞いて閃いた。確実に勝てるのはコレだと。

性格とか自分に合うかとかそんなことは放っておいて、候補の中で一番可愛い子を選んだ。

バーバラ・ポーツフル。伯爵家の四女で裕福ではない…というよりは困窮していて支援が必要な家門らしい。

彼女を選ぶなら伯爵家の予算はだいぶ抑えなくてはならなくなるがいいかと聞かれ、その時は対抗心と容姿に判断力が麻痺していたのだと今なら分かる。

実際に婚姻したら想像よりポーツフル家の借金が多く、削れるところは削って費用を用立てた。

私とヘンドリックが追い出した形になったクリスは寄宿学校に父が入れた。

年末年始に座られることのないクリスの椅子。
２年目までは罪悪感も少しあったが３年目からは慣れてしまった。

やっと金が溜まり年に一度家族で小旅行に出かけることで節約の虚しさを忘れたかった。そこにクリスがいなくても誰も気にもとめなかった。


そしてある日、親戚の集まりで聞いてしまった。
コンプレックスの元凶の話だった。