20 / 30
2人の娘、ルルーナ編
ルルーナ8歳
しおりを挟む
私はデクスター公爵の長女。
異母兄様達とはだいぶ歳が離れている。
長男のクリストフ兄様は敷地内の別棟に、お嫁さんと男の子2人と暮らしている。
だいたい朝食以外は本邸で一緒に食べる。
次男のハミエル兄様は、まだ婚約もせず私にベッタリだ。
超過保護で時々困る。でも大好きだ。
父は美しい母にベッタリだ。仕事から戻ると母を離さず、隙あらば顔や頭にキスをしている。
家の中なのに手を繋いで歩いているし、姿が見えないとソワソワしだす。病気だ。
意外なのが母の一目惚れだということだった。
正直、美男子とまでは言えない父の何処に一目惚れする要素があったのか。
しかも親子ほど歳が離れている。
母の実家に遊びに行った時に、母が一時期第二王子に一目惚れされて婚約者だったことを聞かされた。泣いて嫌がったらしい。
王子は不細工なの?
そうじゃないらしい。美少年だったようだ。
美少年の王子の後ろに座る父に一目惚れ?
母の瞳は私と一緒だけど、きっと私とは違う風に見えるのかもしれない。
ハミエル兄様は今日も届いた縁談申し込みの絵姿を庭に持っていくと的に貼り付け、遠くから弓を引いて射抜く。
鼻、口、両目、額…きっと最後の額を射抜くことで成敗しているのだろう。
満足すると、的から外し燃やしていた。
最初のうちは絵姿を紙吹雪にしていたらしいが、ある時、思い立ったように外に的を作らせ、弓を買ってきて練習し始めた。
クリストフ兄様は、ルルのおかげでハミエルは弓の名手になったなと笑っていた。
お嫁さんは苦笑いしていた。
デクスター家の教育は母が行う。
時々専門の先生を呼んで一緒に授業を受ける。
メイドがするようなことから外国語まで幅広い。専属メイドは2人いて、ひとりはペルル王国出身。もうひとりはルフレール王国出身。
ある程度日常会話ができるようになると、それぞれ母国語で私に話すようになる。
私の部屋は3カ国語が飛び交っている。最初は不服だったが今は慣れた。
どうやらペルル王国の王妃は母の姉のようだ。遊びに行ってみたいから大人しく習っている。
そんなある日、王宮の茶会に呼ばれた。
何故か招待状には、
“令嬢が望まぬ限り婚約者にしないと誓う”
と書いてあった。
今の王様は、母が婚約していた王子の兄らしい。その人の直筆だとか。
ハミエル兄様は付き添うと言って譲らない。
でも、母と3人で行ったら、ハミエル兄様が父親に見られてしまう。
父も察したのか猛反対して、結局父と母と私で行くことになった。
会場に着くと、令息、令嬢がたくさんいた。
伯爵家以上で10歳以上らしい。
何で8歳の私を呼んだのよ…。
国王夫妻と王子が2人入って来た。
「よく来てくれた。今日は顔合わせだから気楽にお茶を飲み、菓子を食べ、友達を作って帰って欲しい」
「息子のエリアスと、滞在中のルフレール王国の第三王子、ウィリアム殿下が参加します。仲良くしてくださいね」
「エリアスです。10歳になりました。よろしくお願いします」
「ウィリアムです。10サイです。よろしくお願いします」
ルフレールの王子はまだあまり他国の言葉を話せなさそうね。
2人の王子がテーブルを一周し終わると、皆が動き出す。
「お父様、私は此処にいてもいいですか」
「友達はいらないのか?」
「無理に作らずとも、学園に行けばできます」
「好きにするといい」
はぁ…
「お父様、こんなところでイチャイチャしないで!私は見慣れていますが、他の子供達には刺激が強いです!」
「…すまん」
「ハハッ、相変わらずだなデクスター公爵」
「陛下、娘のルルーナです」
「見ればわかる。2人によく似ている。賢そうだ。ルルーナ嬢、息子達と仲良くしてやってくれ。絶対に其方の望まぬ婚約は許さないから安心してくれ」
「? どういうことですか」
「公爵、彼女は知らないのか」
「はい。詳細は話していません。ただ昔、第二王子と婚約していた時期があったとだけ」
「ルルーナ嬢。
昔、弟が其方の母君に一目惚れをして我儘を通した。嫌がる伯爵家を父上達が脅しに近いかたちで無理矢理婚約者にした。
それなのに弟は蔑ろにして浮気三昧。
自ら婚約破棄をして、結果平民となった」
うわぁ…。
「ククッ 素直そうな令嬢だ。
エリアス!ウィリアム!」
呼ばなくていいのに…。
「ウィリアムは2週間前から滞在している。1年いる予定だ。仲良くしてあげてくれ。
まだ簡単な言葉しか話せないから友達作りに難航しているんだ」
…同性の方がいいんじゃないの?
「ルルーナ嬢、友達になりたい。
あまり話せない。勉強する」
「…男の子じゃ、幼くて王子殿下に合わせてあげられないのですね。
ルルーナ。助けてあげて。ひとりで心細い思いをしているの」
「お母様…」
仕方ない。
『本気で友達になりたいの?』
『!!』
『返事は?』
『なりたい。頼む。何処に行っても僕は孤独だ』
『友達ならウィリアムと呼んでいいわよね。ルルーナよ。2歳下だし、過保護な家族に囲まれてるから、面倒なこともあると思うけど、好きに遊びに来ればいいわ』
『ルルーナ。ありがとう。
君のルフレール語は流暢だね』
『母の教育方針なの。父も母も私もルフレール語とペルル語は話せるわ。
私がある程度話せるようになるとルフレール出身のメイドとペルル出身のメイドを専属に付けて、母国語のみで話させたの。
しばらくキツかったけど、慣れたわ』
『それは…キツそうだね。
だけど、そのおかげで、今僕は救われている』
『大袈裟ね。
犬は大丈夫?』
『大丈夫だよ』
『うちの大きな犬はアルゴスって名前なんだけど、私の乳母でもあるから常に側にいようとするの。苦手だと大変だから良かったわ』
『ウィリアム殿下、ルルーナは王宮は初めてですの。庭園のお花を見せに連れて行ってくださるかしら』
『喜んで!
ルルーナ、行こう!猫も住み着いているんだ』
『猫!』
「凄いな。夫人、とんでもない英才教育をしているのだな。ペルル語もあんな感じか?」
「はい。姉の嫁いだ国でもありますから。
そのうち遊びに連れて行こうと思っています」
「駄目だ。そんなに長く休みを取れない」
「…公爵もついて行くつもりか」
「当然です。リリを私抜きで外に出しません」
「はぁ…重症だな。それで、今日もついて来たのか。あそこで宰相が呆れているぞ」
「いつものことですから大丈夫です」
「分かった、分かった。
その時は私が許可をしよう。
其方達はペルル王妃の妹夫婦だ。
外交扱いにするから事前に言ってくれ」
「「ありがとうございます」」
「エリアス、誰かいい令嬢はいたか?」
「それどころではありません。
2歳下の令嬢より劣っていることがわかりました。私は先程の会話の半分も理解できませんでした」
「エリアス殿下。ルルーナと比べる必要はありませんわ。王子教育は幅広いはずです。
殿下には剣術や馬術、公務もお有りでしょう」
「明日、ルルーナ嬢を10時によこしてくれ」
「エリアス!」
「数学の先生が来る。自分の位置を確かめたい」
「すまない。こんなに負けず嫌いだとは思わなかった。エリアス、駄目だ」
「明日10時ですね。主人と登城しますので10時になったら指定の部屋へ着くように、主人の執務室へ誰か迎えをお願いします」
「公爵…」
「私と一緒に登城するならいいですよ」
「…手配しよう」
「ありがとうございます」
「エリアス、他の席へ行って来なさい」
「はい」
異母兄様達とはだいぶ歳が離れている。
長男のクリストフ兄様は敷地内の別棟に、お嫁さんと男の子2人と暮らしている。
だいたい朝食以外は本邸で一緒に食べる。
次男のハミエル兄様は、まだ婚約もせず私にベッタリだ。
超過保護で時々困る。でも大好きだ。
父は美しい母にベッタリだ。仕事から戻ると母を離さず、隙あらば顔や頭にキスをしている。
家の中なのに手を繋いで歩いているし、姿が見えないとソワソワしだす。病気だ。
意外なのが母の一目惚れだということだった。
正直、美男子とまでは言えない父の何処に一目惚れする要素があったのか。
しかも親子ほど歳が離れている。
母の実家に遊びに行った時に、母が一時期第二王子に一目惚れされて婚約者だったことを聞かされた。泣いて嫌がったらしい。
王子は不細工なの?
そうじゃないらしい。美少年だったようだ。
美少年の王子の後ろに座る父に一目惚れ?
母の瞳は私と一緒だけど、きっと私とは違う風に見えるのかもしれない。
ハミエル兄様は今日も届いた縁談申し込みの絵姿を庭に持っていくと的に貼り付け、遠くから弓を引いて射抜く。
鼻、口、両目、額…きっと最後の額を射抜くことで成敗しているのだろう。
満足すると、的から外し燃やしていた。
最初のうちは絵姿を紙吹雪にしていたらしいが、ある時、思い立ったように外に的を作らせ、弓を買ってきて練習し始めた。
クリストフ兄様は、ルルのおかげでハミエルは弓の名手になったなと笑っていた。
お嫁さんは苦笑いしていた。
デクスター家の教育は母が行う。
時々専門の先生を呼んで一緒に授業を受ける。
メイドがするようなことから外国語まで幅広い。専属メイドは2人いて、ひとりはペルル王国出身。もうひとりはルフレール王国出身。
ある程度日常会話ができるようになると、それぞれ母国語で私に話すようになる。
私の部屋は3カ国語が飛び交っている。最初は不服だったが今は慣れた。
どうやらペルル王国の王妃は母の姉のようだ。遊びに行ってみたいから大人しく習っている。
そんなある日、王宮の茶会に呼ばれた。
何故か招待状には、
“令嬢が望まぬ限り婚約者にしないと誓う”
と書いてあった。
今の王様は、母が婚約していた王子の兄らしい。その人の直筆だとか。
ハミエル兄様は付き添うと言って譲らない。
でも、母と3人で行ったら、ハミエル兄様が父親に見られてしまう。
父も察したのか猛反対して、結局父と母と私で行くことになった。
会場に着くと、令息、令嬢がたくさんいた。
伯爵家以上で10歳以上らしい。
何で8歳の私を呼んだのよ…。
国王夫妻と王子が2人入って来た。
「よく来てくれた。今日は顔合わせだから気楽にお茶を飲み、菓子を食べ、友達を作って帰って欲しい」
「息子のエリアスと、滞在中のルフレール王国の第三王子、ウィリアム殿下が参加します。仲良くしてくださいね」
「エリアスです。10歳になりました。よろしくお願いします」
「ウィリアムです。10サイです。よろしくお願いします」
ルフレールの王子はまだあまり他国の言葉を話せなさそうね。
2人の王子がテーブルを一周し終わると、皆が動き出す。
「お父様、私は此処にいてもいいですか」
「友達はいらないのか?」
「無理に作らずとも、学園に行けばできます」
「好きにするといい」
はぁ…
「お父様、こんなところでイチャイチャしないで!私は見慣れていますが、他の子供達には刺激が強いです!」
「…すまん」
「ハハッ、相変わらずだなデクスター公爵」
「陛下、娘のルルーナです」
「見ればわかる。2人によく似ている。賢そうだ。ルルーナ嬢、息子達と仲良くしてやってくれ。絶対に其方の望まぬ婚約は許さないから安心してくれ」
「? どういうことですか」
「公爵、彼女は知らないのか」
「はい。詳細は話していません。ただ昔、第二王子と婚約していた時期があったとだけ」
「ルルーナ嬢。
昔、弟が其方の母君に一目惚れをして我儘を通した。嫌がる伯爵家を父上達が脅しに近いかたちで無理矢理婚約者にした。
それなのに弟は蔑ろにして浮気三昧。
自ら婚約破棄をして、結果平民となった」
うわぁ…。
「ククッ 素直そうな令嬢だ。
エリアス!ウィリアム!」
呼ばなくていいのに…。
「ウィリアムは2週間前から滞在している。1年いる予定だ。仲良くしてあげてくれ。
まだ簡単な言葉しか話せないから友達作りに難航しているんだ」
…同性の方がいいんじゃないの?
「ルルーナ嬢、友達になりたい。
あまり話せない。勉強する」
「…男の子じゃ、幼くて王子殿下に合わせてあげられないのですね。
ルルーナ。助けてあげて。ひとりで心細い思いをしているの」
「お母様…」
仕方ない。
『本気で友達になりたいの?』
『!!』
『返事は?』
『なりたい。頼む。何処に行っても僕は孤独だ』
『友達ならウィリアムと呼んでいいわよね。ルルーナよ。2歳下だし、過保護な家族に囲まれてるから、面倒なこともあると思うけど、好きに遊びに来ればいいわ』
『ルルーナ。ありがとう。
君のルフレール語は流暢だね』
『母の教育方針なの。父も母も私もルフレール語とペルル語は話せるわ。
私がある程度話せるようになるとルフレール出身のメイドとペルル出身のメイドを専属に付けて、母国語のみで話させたの。
しばらくキツかったけど、慣れたわ』
『それは…キツそうだね。
だけど、そのおかげで、今僕は救われている』
『大袈裟ね。
犬は大丈夫?』
『大丈夫だよ』
『うちの大きな犬はアルゴスって名前なんだけど、私の乳母でもあるから常に側にいようとするの。苦手だと大変だから良かったわ』
『ウィリアム殿下、ルルーナは王宮は初めてですの。庭園のお花を見せに連れて行ってくださるかしら』
『喜んで!
ルルーナ、行こう!猫も住み着いているんだ』
『猫!』
「凄いな。夫人、とんでもない英才教育をしているのだな。ペルル語もあんな感じか?」
「はい。姉の嫁いだ国でもありますから。
そのうち遊びに連れて行こうと思っています」
「駄目だ。そんなに長く休みを取れない」
「…公爵もついて行くつもりか」
「当然です。リリを私抜きで外に出しません」
「はぁ…重症だな。それで、今日もついて来たのか。あそこで宰相が呆れているぞ」
「いつものことですから大丈夫です」
「分かった、分かった。
その時は私が許可をしよう。
其方達はペルル王妃の妹夫婦だ。
外交扱いにするから事前に言ってくれ」
「「ありがとうございます」」
「エリアス、誰かいい令嬢はいたか?」
「それどころではありません。
2歳下の令嬢より劣っていることがわかりました。私は先程の会話の半分も理解できませんでした」
「エリアス殿下。ルルーナと比べる必要はありませんわ。王子教育は幅広いはずです。
殿下には剣術や馬術、公務もお有りでしょう」
「明日、ルルーナ嬢を10時によこしてくれ」
「エリアス!」
「数学の先生が来る。自分の位置を確かめたい」
「すまない。こんなに負けず嫌いだとは思わなかった。エリアス、駄目だ」
「明日10時ですね。主人と登城しますので10時になったら指定の部屋へ着くように、主人の執務室へ誰か迎えをお願いします」
「公爵…」
「私と一緒に登城するならいいですよ」
「…手配しよう」
「ありがとうございます」
「エリアス、他の席へ行って来なさい」
「はい」
708
あなたにおすすめの小説
【完結】六歳下の幼馴染に溺れた夫。白い結婚を理由に離縁を申し立てたら、義弟(溺愛)に全力で求婚されました
恋せよ恋
恋愛
夫が愛でるのは、守ってあげたくなるような「可憐な少女」。
夫が疎むのは、正論で自分を追い詰める「完璧な妻」。
「シンシア、君はしっかりしているから、大丈夫だろう?」
六歳年下の幼馴染ジェニファー子爵令嬢を気遣う貴方。
私たちは、新婚初夜さえ済ませていないのよ?
完璧な家政、完璧な社交。私が支えてきたこの家から、
ニコラス、貴方って私がいなくなったらどうなるか……。
考えたこともないのかしら?
義弟シモンは、学生時代の先輩でもあるシンシアを慕い
兄ニコラスの態度と、幼馴染ジェニファーを嫌悪する。
泣いて縋るあざとい少女と、救世主気取りの愚かな夫。
そして、義姉であるシンシアを慕うシモン。
これは、誇り高き伯爵夫人、シンシアの物語である。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです
藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。
――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。
妹は父の愛人の子。
身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、
彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。
婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、
当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。
一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。
だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。
これは、誰かが罰した物語ではない。
ただ、選んだ道の先にあった現実の話。
覚悟のなかった婚約者が、
自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました
鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」
そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。
王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。
私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。
けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。
華やかな王宮。
厳しい王妃許育。
揺らぐ王家の威信。
そして――王子の重大な過ち。
王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。
離縁を望んでも叶わない義妹。
肩書きを失ってなお歩き直す王子。
そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。
ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。
婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。
妹の方が好きらしい旦那様の前からは、家出してあげることにしました
睡蓮
恋愛
クレアとの婚約関係を結んでいたリビドー男爵は、あるきっかけからクレアの妹であるレイアの方に気持ちを切り替えてしまう。その過程で、男爵は「クレアがいなくなってくれればいいのに」とつぶやいてしまう。その言葉はクレア本人の耳に入っており、彼女はその言葉のままに家出をしてしまう。これで自分の思い通りになると喜んでいた男爵だったのだが…。
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる