【完結】私が見つめていたのは貴方ではありません

ユユ

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2人の娘、ルルーナ編

ルルーナ8歳

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私はデクスター公爵の長女。

異母兄様達とはだいぶ歳が離れている。


長男のクリストフ兄様は敷地内の別棟に、お嫁さんと男の子2人と暮らしている。
だいたい朝食以外は本邸で一緒に食べる。


次男のハミエル兄様は、まだ婚約もせず私にベッタリだ。
超過保護で時々困る。でも大好きだ。


父は美しい母にベッタリだ。仕事から戻ると母を離さず、隙あらば顔や頭にキスをしている。
家の中なのに手を繋いで歩いているし、姿が見えないとソワソワしだす。病気だ。

意外なのが母の一目惚れだということだった。
正直、美男子とまでは言えない父の何処に一目惚れする要素があったのか。
しかも親子ほど歳が離れている。


母の実家に遊びに行った時に、母が一時期第二王子に一目惚れされて婚約者だったことを聞かされた。泣いて嫌がったらしい。

王子は不細工なの?
そうじゃないらしい。美少年だったようだ。

美少年の王子の後ろに座る父に一目惚れ?

母の瞳は私と一緒だけど、きっと私とは違う風に見えるのかもしれない。



ハミエル兄様は今日も届いた縁談申し込みの絵姿を庭に持っていくと的に貼り付け、遠くから弓を引いて射抜く。
鼻、口、両目、額…きっと最後の額を射抜くことで成敗しているのだろう。
満足すると、的から外し燃やしていた。

最初のうちは絵姿を紙吹雪にしていたらしいが、ある時、思い立ったように外に的を作らせ、弓を買ってきて練習し始めた。

クリストフ兄様は、ルルのおかげでハミエルは弓の名手になったなと笑っていた。
お嫁さんは苦笑いしていた。


デクスター家の教育は母が行う。
時々専門の先生を呼んで一緒に授業を受ける。
メイドがするようなことから外国語まで幅広い。専属メイドは2人いて、ひとりはペルル王国出身。もうひとりはルフレール王国出身。

ある程度日常会話ができるようになると、それぞれ母国語で私に話すようになる。
私の部屋は3カ国語が飛び交っている。最初は不服だったが今は慣れた。

どうやらペルル王国の王妃は母の姉のようだ。遊びに行ってみたいから大人しく習っている。




そんなある日、王宮の茶会に呼ばれた。
何故か招待状には、
“令嬢が望まぬ限り婚約者にしないと誓う”
と書いてあった。

今の王様は、母が婚約していた王子の兄らしい。その人の直筆だとか。

ハミエル兄様は付き添うと言って譲らない。
でも、母と3人で行ったら、ハミエル兄様が父親に見られてしまう。

父も察したのか猛反対して、結局父と母と私で行くことになった。




会場に着くと、令息、令嬢がたくさんいた。
伯爵家以上で10歳以上らしい。
何で8歳の私を呼んだのよ…。

国王夫妻と王子が2人入って来た。

「よく来てくれた。今日は顔合わせだから気楽にお茶を飲み、菓子を食べ、友達を作って帰って欲しい」

「息子のエリアスと、滞在中のルフレール王国の第三王子、ウィリアム殿下が参加します。仲良くしてくださいね」

「エリアスです。10歳になりました。よろしくお願いします」

「ウィリアムです。10サイです。よろしくお願いします」


ルフレールの王子はまだあまり他国の言葉を話せなさそうね。



2人の王子がテーブルを一周し終わると、皆が動き出す。

「お父様、私は此処にいてもいいですか」

「友達はいらないのか?」

「無理に作らずとも、学園に行けばできます」

「好きにするといい」

はぁ…

「お父様、こんなところでイチャイチャしないで!私は見慣れていますが、他の子供達には刺激が強いです!」

「…すまん」

「ハハッ、相変わらずだなデクスター公爵」

「陛下、娘のルルーナです」

「見ればわかる。2人によく似ている。賢そうだ。ルルーナ嬢、息子達と仲良くしてやってくれ。絶対に其方の望まぬ婚約は許さないから安心してくれ」

「? どういうことですか」

「公爵、彼女は知らないのか」

「はい。詳細は話していません。ただ昔、第二王子と婚約していた時期があったとだけ」

「ルルーナ嬢。
昔、弟が其方の母君に一目惚れをして我儘を通した。嫌がる伯爵家を父上達が脅しに近いかたちで無理矢理婚約者にした。

それなのに弟は蔑ろにして浮気三昧。
自ら婚約破棄をして、結果平民となった」

うわぁ…。

「ククッ  素直そうな令嬢だ。

エリアス!ウィリアム!」

呼ばなくていいのに…。

「ウィリアムは2週間前から滞在している。1年いる予定だ。仲良くしてあげてくれ。
まだ簡単な言葉しか話せないから友達作りに難航しているんだ」

…同性の方がいいんじゃないの?

「ルルーナ嬢、友達になりたい。
あまり話せない。勉強する」

「…男の子じゃ、幼くて王子殿下に合わせてあげられないのですね。

ルルーナ。助けてあげて。ひとりで心細い思いをしているの」

「お母様…」

仕方ない。

『本気で友達になりたいの?』

『!!』

『返事は?』

『なりたい。頼む。何処に行っても僕は孤独だ』

『友達ならウィリアムと呼んでいいわよね。ルルーナよ。2歳下だし、過保護な家族に囲まれてるから、面倒なこともあると思うけど、好きに遊びに来ればいいわ』

『ルルーナ。ありがとう。
君のルフレール語は流暢だね』

『母の教育方針なの。父も母も私もルフレール語とペルル語は話せるわ。

私がある程度話せるようになるとルフレール出身のメイドとペルル出身のメイドを専属に付けて、母国語のみで話させたの。
しばらくキツかったけど、慣れたわ』

『それは…キツそうだね。
だけど、そのおかげで、今僕は救われている』

『大袈裟ね。
犬は大丈夫?』

『大丈夫だよ』

『うちの大きな犬はアルゴスって名前なんだけど、私の乳母でもあるから常に側にいようとするの。苦手だと大変だから良かったわ』

『ウィリアム殿下、ルルーナは王宮は初めてですの。庭園のお花を見せに連れて行ってくださるかしら』

『喜んで!

ルルーナ、行こう!猫も住み着いているんだ』

『猫!』






「凄いな。夫人、とんでもない英才教育をしているのだな。ペルル語もあんな感じか?」

「はい。姉の嫁いだ国でもありますから。
そのうち遊びに連れて行こうと思っています」

「駄目だ。そんなに長く休みを取れない」

「…公爵もついて行くつもりか」

「当然です。リリを私抜きで外に出しません」

「はぁ…重症だな。それで、今日もついて来たのか。あそこで宰相が呆れているぞ」

「いつものことですから大丈夫です」

「分かった、分かった。
その時は私が許可をしよう。
其方達はペルル王妃の妹夫婦だ。
外交扱いにするから事前に言ってくれ」

「「ありがとうございます」」


「エリアス、誰かいい令嬢はいたか?」

「それどころではありません。
2歳下の令嬢より劣っていることがわかりました。私は先程の会話の半分も理解できませんでした」

「エリアス殿下。ルルーナと比べる必要はありませんわ。王子教育は幅広いはずです。
殿下には剣術や馬術、公務もお有りでしょう」

「明日、ルルーナ嬢を10時によこしてくれ」

「エリアス!」

「数学の先生が来る。自分の位置を確かめたい」

「すまない。こんなに負けず嫌いだとは思わなかった。エリアス、駄目だ」

「明日10時ですね。主人と登城しますので10時になったら指定の部屋へ着くように、主人の執務室へ誰か迎えをお願いします」

「公爵…」

「私と一緒に登城するならいいですよ」

「…手配しよう」

「ありがとうございます」

「エリアス、他の席へ行って来なさい」

「はい」

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