【完結】私が見つめていたのは貴方ではありません

ユユ

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2人の娘、ルルーナ編

友達

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翌日、父と母と一緒に出勤した。

「宰相様、おはようございます。
いつも父が心労をおかけしております」

「ルルーナ嬢だけだ。私の気持ちを分かってくれるのは。
今日は王子が呼び出したんだって?
つまらなかったらすぐ戻って来なさい。
お菓子もジュースも用意させるからね」

「はい!宰相様」

「可愛いなぁ。おじさんは仕事するけど、いつでも話しかけていいからね」

「ありがとうございます」




時間になり、連れてこられた部屋は小さな自習室のようになっていた。
騎士様が立っている。

ジーッ

『ルルーナ、おはよう。
騎士が気になるの?』

『ルフレールの騎士様ね』

『そうだよ。騎士服が違うから分かるか』

『弓が得意でいらっしゃるのですね』

『!!』

『分かるの?デレクが驚いているよ』

『弓胼胝がね。兄も始めて4年になるわ』

『兵士なの?』

『一方的に届く私への釣書と姿絵を射抜いているの。上達が早かったわ』

『ブッ』

『…デレク』

『失礼しました』

『私も興味あるけど兄様が許してくれないの』

『どちらにしても、まだ君には早いよ。
子供で女の子だから、特殊な弓でなければ駄目だ』

『子供用ってこと?』

『子供用でも厳しいと思う。腕や指を痛めては困るからね』

『なんか損した気分だわ。男の子だったら習えたのに』

『…ご両親が許可なされば教えますよ』

『デレク』

『これも縁です。
しっかりとした革手袋も必要ですね。許可を貰えたら用意しますよ』

『デレク様!ありがとうございます!』

『…デレク』




「待たせた。先生を連れてきた」

「ドノバンと申します。
さぁ、席についてください。
今日は足し算、引き算、掛け算、割り算を合わせた少し長い計算式を解いてもらいます」

デクスター公爵令嬢…大丈夫ですか?」

「はい」

「では、問題用紙を配りますので解いてください。
終わったら答え合わせをして、間違えた部分を解説します」



数分して、やることがなくなってしまった。
外を眺めていると先生が来て答案の確認をした。

「最後の数学の授業内容はなんでしたか?」

「確率を始めました」

「…なるほど。どうでしたか」

「少し頭がごちゃごちゃしました。母はそのうち慣れると言っていました」

「母君が教えておられるのですか」

「はい、場合によりますが」

「分数も終わっているのですね?図形は」

「立方体の面積の求め方や展開図もやりました」

「厳しいのですね」

「そうでもありません。できなくても構わないと母は言っていますから。
流石に普通の計算で躓いたら駄目でしょうけど」

「そうですか」

「苦手な分野はありますか」

「歴史と地理です。
何年に何が起きたという覚え方が苦手です。出来事は覚えられますが何年というのはちょっと。

あと国内の領境地図が覚えられません」




お父様の執務室にウィリアムを連れてきた。

「もう終わったのか」

「簡単な小テストをやったのですけど、殿下が集中したいそうなので退散してきました」

『殿下、エリアス殿下は大丈夫ですか』

『実は、彼だけが間違えてしまって…』

『なるほど。殿下は母国で勉強はしっかりなさったのですね』

『生き残るために勉強しました。
それに他にやることもないですから』

『事情を話してくださらない?』

『…』

『ウィリアム』

ギュッ

『大丈夫。大丈夫だよ。この部屋は安全』

『うぅっ…うっ…』

ウィリアムをハグして背中を摩るとウィリアムが泣き出した。
体を震わせて涙を止めようとしていた。

『大丈夫。泣いたって怒られないわ。
友達の前でそんな我慢なんてしなくていいの』

『うううううっ…』





それから暫く泣き続けた後、語り出した。

『第三王子と言っても名ばかりなんです。

父は母と婚約していました。
母は伝統ある旧家の公爵令嬢でしたが、貧しかったのです。領地で天災が続いた為です。

父は母を政略結婚の相手としてしか見ておらず、お金が無くなった家の令嬢は価値がないと思ったようです。
しかし、母に何の非もないので婚約解消ができませんでした。

ある時、学園にいた見目のいい令嬢の家が富豪の仲間入りをしたのです。父は子爵令嬢を特別に扱ったようで、子爵家もその気になりました。

そして、父は既成事実で対抗したのです。
子爵令嬢が産んだのは男児でした。

父の姉にあたる王女は既に他国へとついでいて、残る子は父しかいなかったので、前王は受け入れざるを得ませんでした。

子爵令嬢なのに、側妃や妾ではなく、第二妃として迎えたのです。
母は名ばかりの王妃となりました。初夜もない、公務をこなすだけの王妃。

父にならって周囲も母を冷遇しました。

第二妃の男児出産から4年後、また身籠りました。悪阻が重くほとんど寝込んでいたようです。

その間に、母は閨の相手をさせられました。
悪阻の間と、出産前後だけの奴隷として。
そして僕が産まれました』

『誰から聞いたのですか』

『第二妃と乳母です。

第二妃は聞かなくても嫌がらせのように話に来ます。
乳母には第二妃の話が本当かどうか確かめるために私から聞きました』

『2人の話は噛み合っていますか』

『重なる部分は同じです。見方次第な捉え方もありますが、出来事としては合っています』

『国王陛下はなんて仰っているのですか』

『母と乳母と僅かなメイドで私は育てられました。
父と話したのは数回です。
会話ではありません。命令です。
誕生日を祝ってもらうこともありません。
唯一与えられたのは教師でした。

父からは成績が悪ければ母子共に追い出すと言われてしまいました。

だから必死に勉強したのです。
兄弟や友人と過ごす時間も公務も何もありませんから、時間だけはあったので、教師を与えてもらって良かったです』

『今回の滞在の意図はなんですか』

『親交を深めて来いとだけ』

『王族籍に拘りますか』

『いえ。ですが、母の実家は頼れませんから、行き場がないのでしがみ付くしかありません。

ごめんね、ルルーナ。小さい君にこんな話を聞かせて。頼りなくてごめん』

ギュウウウウ

『はぁ…優しいね。人の温かみは久しぶりだ。母は伏せっていて、もう僕を抱きしめられない』

『起き上がれないのですか?』

『はい。医者は何処も悪くないと言うのです。気の病だと』

『…』

『捨ててこれたらいいのにね』

『えっ』

『王妃様が、王様を愛していないなら捨ててしまえばいいのに。

普通、離縁するなら財産分与があるはずだわ。公務をして、王子も産んだのだから私財があるはずよ。王族の法律書は読んだ?』

『いや、読んでない』

『どちらにしても読んでおくべきね。図書室には出入りできるのでしょう?』

『自由に出入りできる』

『ルフレールの王族で他国に嫁いだ人はいないのかな』

『王女が…父の姉がアルシュに嫁いでいる。王弟の妃だったはず』

『他には?』

『覚えがないな。あまり王女は産まれないんだ』

『この件は、一旦保留にしましょう』





これ以降、ウィリアムとよく一緒に過ごすことになった。
うちに来たり、私が行ったり。

エリアス殿下は私に負ける度に猛勉強の日々。
なんで私がライバル視されるのかは分からない。




デレクから弓を習ったり私も楽しい。

唯一、不満そうなのがミハエル兄様。

私といるウィリアムに態度が悪かった。
すぐ父に連れていかれ、戻った時にはウィリアムに謝罪をしていた。
それ以降は大人しいけど、ウィリアムが帰ると反動のようにベッタリしている。

穏やかに暮らすこと数ヶ月。
ウィリアムがこの国に来て10カ月が経とうとしていた。

先月から父と母は他国に出向いている。
2、3カ月かかると言っていた。
一応公務らしい。

今ではハミエル兄様とデレク様が仲良く令息の絵姿を的に競い合っている。
顔に黒子を付け足してどちらが近くを射抜いたかで騒いでいる。

その横で、ウィリアム嬉しそうに2人を眺める姿がデクスター家の庭の日常となっていた。





1カ月後、王宮で勉強をしていた私達が謁見の間に呼ばれた。



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