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2人の娘、ルルーナ編

エリアスの誕生日パーティ

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あの日以来、誰も絡まなくなった。
皆大人しく過ごしている。

あの後、謝罪の手紙をくれる令嬢もいた。
本当はいい子もいたんだな。

お花を摘みに行くと

「デクスターさん」

「ロイズさん」

「ありがとうございました」

「?」

「殿下に口添えしてくださったのですね。
先日、殿下が“ロイズさん、おはよう”と挨拶をしてくださいました」

「特別なことはしていないのです。
会話の流れでお手紙をいただいたと話しただけで」

「あのままでしたら、私は家にまで迷惑をかけるところでした」

「私と殿下は幼馴染でも、勉強のライバルでしかなかったので、本当に殿下のことを何も知らなかったのです。

みなさんに聞かれて、そのことに気付かされました。それでも知りたいとは思わなくて…」

「デクスターさん。もうだいぶ、興味を持ってあげてください。デクスターさんのためにあそこまでなさるのですから。興味無いなんて可哀想です」

「…すみません」

「私、エレノアと申します。エレノアと呼んでください」

「ルルーナです。ルルーナと呼んでください。エレノア様」






週末、王城に両親と来ている。父達は仕事。

「ロイズ伯爵令嬢と仲良くなったのか」

「はい。エレノア様は字がとても美しいの。羨ましい」

「人を羨ましがるなんて珍しいな」

「だって、綺麗な文字で書けた方がいいに決まっているじゃない」

「ルルーナがいくら酷い文字を書こうとも、読んでみせるよ」

「酷い!」

「“嬉しい”の間違いだろう」

「?」

「…こうやって話ができて嬉しいよ」

「ルナは自由ね。エリアス様にも私にもリアムにも興味を示さないわ」

「あぁ、そっくりだ。尚更可愛い」

母犬に?

「リアスはルルーナにしか興味を示さないな」

「リアムだけどね」

「来週末のパーティなんだけど」

「エリアス様の誕生日よね」

「エスコートはウィリアムか?」

「エスコートは無いの。兄様には婚約者を優先して欲しいし、父は母を離さないし、ウィリアムはお母様と会うらしいの」

「私がしよう」

「それはダメよ。やっと静かになったのに、また騒がしくなるわ」

「幼馴染をエスコートして何が悪い」

「しかも誕生日の主役よ?」

「だからプレゼントが欲しい。ルルーナ。
私にエスコートをさせてくれ。ファーストダンスをプレゼントしてくれ」

「イヤだ!みんなが見てるやつじゃない!」

「ルルーナは上手いよ」

「注目に耐えられるほどの実力はないわ」

「学生最後の誕生日だ。これからは多くの義務が生じる。お願いだ、ルルーナ」

「…分かったわ」

「ルルーナ。ドレスを用意した。必ず着て欲しい」

「えっ、何で準備してるの?今返事を出したのに」

「僅かな望みをかけて用意しておいた。私財で作ったドレスだ。着てくれるね」

「はい」

「午後にダンスの講師を呼んでおいた。
合わせてみよう」

「本当、用意がいいのね」

「まぁね。

…リアス、丸いな」

「わかる?催促がすごくてつい。
リアムだけどね」

「今から散歩させに行こう。少し引き締めないと」


この日は晩餐まで、ずっとエリアス様と過ごした。
リアムは馬車で眠ったまま。
よっぽど疲れたのね。

小さいのにイビキがすごい。

翌朝までリアムは起きなかった。





「緊張するわ」

「転んでも私がいるから大丈夫だ」

「不吉なことを言わないで」

私は今。王族専用の出入口にいる。

朝から王宮に来て磨き上げられ、エリアス様の誕生日パーティの開始を待っていた。

ウィリアムはあのままルフレールに一時帰国してしまった。女王様に呼ばれたらしい。



合図と共に会場入りすると響めきがすごい。
睨んでいる令嬢もいるわね。

挨拶を終えるとエリアス様が私の手を引いてダンスフロアの真ん中へエスコートする。

「ルルーナ。とても綺麗だ」

「お陰様で化けることができましたわ」

「ルルーナは昔から美しく可愛い。ドレスも宝石もよく似合っているよ。


「宝飾品は聞いてなかったわ」

「さぁ、いくよ」

先週の練習よりも力強く私の体を引き寄せるエリアス様は嬉しそうに微笑んでいる。

どうして急にエリアス様に異性を感じるのだろう。顔が熱い。

「ルルーナ。深呼吸して。すごく嬉しいけど頬を染めたルルーナを皆に見せたくない」

「こんなことになるなら分厚い化粧をして貰えばよかった」

「それは嫌だな」

「次、誰と踊るか決めてるの?」

「…ルルーナ。私は卒業迄に婚約者を絞らなくてはならない」

…そうよね。王子が今迄いなかったのが不思議だもの。

「いいご令嬢が見つかるといいわね」

「もう見つけているよ。何年も前に」

「そうなのね」

もう気軽に話せないわね。

ダンスが終わり、王族席に戻った。

「ルルーナは婚約者を作らないけどどうして?」

「さぁ。両親と兄で話が止まるの。ハミエル
兄様は絵姿を的にして弓で射抜いているしね」

「それは手強いな」

「でも兄様も婚約したし、私も20歳迄には嫁がないといけないなとは思っているの」

「その嫁ぎ先を私にしてくれないか」

「えっ」

「ルルーナに好きな男がいないなら、私と婚約して欲しい」

「気を遣わなくても大丈夫よ。私は、

「愛してる」

「えっ」

「ルルーナと会ったあの日から、会うたびに好きになって、今は一生側にいて守りたいくらい愛しているんだ」

「!!」

「好きな男はいないのだろう。
結婚するための男を探すなら私にしてくれ。
私はルルーナを愛しているから大事にする」

「でも…」

「私は第二王子だ。公爵位を貰う予定だ。ルルーナしか娶らない」

「エリアス様…」

「返事は今すぐでなくていい。その代わり私を知る時間をとってくれ」

「?」

「週末、私と過ごして欲しい。
ちゃんと考えて答えを出して欲しいからな」

「はい」

「迎えの馬車を送る」

「許可を取らないと」

「後で私から許可をとる」




しかし、2日後に事件は起こる。





週明け


「ルルーナ様、見つかった?」

「見つからないわ。エレノア様は先に行って席を取っておいてくれると嬉しいわ」

「分かったわ。今日は別棟の三階の音楽室よ」

「急いでいくわ」



次の授業で使う笛が見つからない。
机の中に入れたはずなのに。

「困ってるのか」

「ギュゼールさん」

「何を探しているんだ。急がないと始まるぞ」

「笛を机の中に入れたのに無くて」

「鞄からはみ出ているのは何だ」

「あっ!何で鞄に…」

「急げ。笛の専攻は三階だろう」

「ギュゼールさんは?」

「俺は打楽器だから一階だ。早く行け。転ぶなよ」

「ギュゼールさん、ありがとう!助かったわ!」


びっくりした!ギュゼールさんが助けてくれるなんて。



時間がないから近い外階段を使った。
ニ階と三階の間で誰かにぶつかった。

「ごめんなさ…











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