27 / 30
2人の娘、ルルーナ編
転落
しおりを挟む
痛い…こんな痛みは初めて。体が重い。
「ルルーナ!」
悲痛な声で呼ばれている。
でも目が開かない。
体が動かない…
「ん…」
「ルルーナ!」
「…エリアス様」
バン!
「医者を呼べ!!」
「エリアス様」
「ごめん、煩くして。ルルーナ。良かった」
「授業が…」
「医者の診察後に話をしよう。水を飲んで。まだ体が熱い」
お医者様の診察を受けている間も体が痛い。
「1日に何度か薬を塗ります。しばらくベッドで安静にしてください。
脚の腫れも引いていくでしょう。
腕はしばらくかかります。
胃薬と痛み止めを処方します。
看護師を側に待機させますから殿下は少しお休みください」
「食べ物はどうしたらいい」
「軽いものから食べさせてください。私から指示を出しておきます」
「ありがとう」
「デクスター公爵令嬢、安静にしてください。しばらく毎日診に参ります」
「あ、ありがとうございました」
どういうことなの。全身包帯だらけじゃない!
「デクスター公爵夫妻を呼んでくれ」
「かしこまりました」
「エリアス様」
「あの時…ルルーナの姿を見た時、心臓が止まるかと思った…あのまま君が目覚めなかったら私はもう生きていけないと思った…」
「泣かないで」
「………」
「ここは、もしかして王宮?」
「…ん」
「私は大怪我をしているの?」
「…ん…っ」
「ずっと側にいてくれたの?」
「…っ ……っ」
「泣かないで」
「ルナ…守れなくてごめん」
「ルナがどうしたの?」
「…っ」
「ルナに何があったの?」
「ルナは君だ」
バン!
「「ルルーナ!!」」
「お父様、お母様」
「良かったわ!」
「私…どうしたの?」
「別棟の二階と三階の途中辺りの外階段から転落したんだ。笛や教科書が落ちていたから間違いないはずだ。
木が落下速度を弱め、下が花壇だったから助かった。そうでなければ死んでいた可能が高い」
あっ、あの時…
「全身に打身と、木の枝でできた傷と、足首は重度の捻挫、左腕は骨折だ。
…それと…こめかみから側頭部にかけて裂傷がある」
「そう」
「何も考えなくていいのよ。治して元気になることだけを考えましょう」
「…どうして王宮に?」
「ロイズ伯爵令嬢が殿下に知らせてくださったの。
殿下が王宮へ運んでくださったのよ。
学園から近いし、王宮医が在中しているから、手厚い治療が受けられると言って」
「エリアス様、ありがとうございました。
お母様、屋敷に帰ります」
「駄目だ!とても動かせる状態じゃない!
絶対ここからださないぞ!」
「…お医者様のお許しが出たら帰ります」
「絶対に出さない!リアスも連れてきてもらっているから帰らなくていい」
「今はそんなことを言い合っている時ではない。
大事なことを聞く。
ルルーナ。突き落としたのはギュゼール侯爵家の次男だな」
「えっ」
「証言があるんだ」
「違います!彼じゃありません!」
「動機もある」
「彼は前のギュゼールさんじゃないんです。ちょっと不器用なだけの親切な人なのです。
あの時も、困っている私に声をかけて助けてくれました」
「作戦かもしれない」
「令嬢です」
「令嬢?」
「三階手前の階段で最後にすれ違ったのは、制服を着た令嬢でした。
少しクセのある赤い髪の令嬢です。巻いたのかもしれませんが」
「そうか。あいつか」
「在籍の生徒で赤髪の女は1人しかいない」
「だけど、カツラということも考えられます」
「顔は?」
「顔までは…」
「失礼するよ」
「陛下!」
「怪我人はそのままで。意識が戻って良かった。2日も目覚めなかったから不安になったが……ここでゆっくり治せ。完治するまでだ。これは王命だ」
「…感謝いたします」
「エリアス」
「私は離れません」
「分かってるから、湯浴みをしろ。嫌われるぞ」
「!!」
「報告も受けたい」
「ルルーナ。湯浴みをしたらすぐ戻るから。
ほら、ぬいぐるみだよ。可愛いだろう?
ルナとリアスはそこのベビーベッドにいるからね」
「「「 …… 」」」
「お父様、心当たりがあるのですね」
「トリス公爵令嬢だ。あの家は娘を王子妃にしたがっていた。
長女は第一王子の同級生で、正妃の座を望んだが、第一王子が選んだのは4つ歳下の別の令嬢だった。
第一王子の婚姻は22の時だった。
正妃の家は三姉妹だった。だからトリス公爵家の長女は、正妃が孕まないかもしれない、もしくは男児を産めないかもしれないと第二妃を狙って待っていたが、正妃は懐妊し男児を産んだ。
もう25歳手前だった。
年齢の合う令息達は既に皆結婚していて、下位貴族の貧しい跡取りしか残っていなかった。
隣国も難しく、打診をしている間に25歳になってしまった。
最終的にルフレールの辺境伯の妾という名の夜伽専用の女として貰われた。
当時の貴族達の間では失敗例として話題になった。
今度は次女が第二王子を狙っていた。
彼女がエリアス殿下を好きかどうかは知らないが、家ではものすごい重圧なのだろう。
トリス公爵家から何度も縁談の打診があった。
先日の誕生日パーティで殿下の色のドレスを纏ってエスコートされ、ダンスを踊るルルーナを見て邪魔だと思ったのだろう」
「殿下の色?白と私の色でしたわ」
「一見な。
暗がりに移動すると白地のドレス全体に施された刺繍が青く見える。強い照明の場所では光ってルルーナのアイスブルーに見える。言うこと無しのドレスだった」
「ネックレスやイヤリング、髪飾りも青かったじゃない」
「…」
「しかも殿下は刺繍も使う宝石も全てアイスブルーだったわ。貴女の瞳と同じ色」
「…殿下に求婚されました」
「知っている。エリアス殿下が毎週末、知り合う時間を設ける許可をもらいに来たからな」
「でも、どちらにしても辞退します。
私は傷者ですわ」
「そんなことで諦めるくらいなら、眠らず食事も取らず、ルルーナに付きっきりになったりしない。
泣いていたじゃないか」
「……。
お父様からもギュゼールさんが解放されるように無実を訴えてください」
「分かった。リリアーヌ、ルルーナの側にいてくれ。宰相のところへ行ってくる」
「ルルーナ」
「はい、お母様」
「貴女の心のままに気持ちを伝えなさい。
あれこれ考えず、好きなら好きと伝えなさい。
好きな人からの贈り物は高価で気が引けても笑顔で受け取りなさい。
好きな人の誘いは躊躇わず受けなさい。
食事でも、観劇でも、お泊りでも」
「お母様…」
「見える傷はほんのちょっとよ。その為に身を引いたら相手を傷付けるわ。
その程度の肝の小さい男だと言っているようなものですからね。
好きな人から望まれたのなら受けなさい」
「…」
「昔、私が公爵様に片思いをしていた時、私なんかと、逃げ腰だったの。
母が今の私のように助言を下さったお陰で今があるの。
閨でも、どんなに恥ずかしいことでも口にして伝えなさい。
可愛がってくださるわ」
「もっとお母様の実家に行ってお話を聞きたいわ」
「そうしましょう」
トリス公爵令嬢と、ギュゼールさんだと証言した者は拘束されて尋問を受けているようだ。
解放されたギュゼールさんがお見舞いに来てくれた。
「ギュゼールさん。私のせいでごめんなさい」
「冤罪だと、君が強く言ってくれたと聞いた。
…そんな包帯だらけで謝られたら、俺が悪いことをしている気になるな」
「包帯が取れたら改めて謝るわ」
「必要ない。俺のせいだ。
入学当初、妬んで君に絡んでいなければ、冤罪をかけられずにすんだ。天罰だったんだ。
だけど君は、俺を信じてくれた。
不器用なだけで優しい人だと」
「…」
「不器用は余計だ」
「ふふっ」
「…勉強、教えてくれないか」
「私が?」
「療養が長くなると聞いた。
授業内容を教える代わりにルルーナ式勉強法を伝授してくれ」
「なにそれ」
「独学の部分が多いと聞いた」
「苦手な部分もあるわよ」
「あるのか?」
「もちろんよ」
「同じ人間なんだな。安心した」
「失礼ね」
「ロイズ伯爵令嬢が心配のあまり痩せこけ出したぞ。手紙を書いてやれ」
「ふふっ。昔の殿下に似てるわ」
「えっ」
「愛犬が死んで寝込んでしまった時があったの。
突然お見舞いに来てくれて、
“ルルーナ!ぼやぼやしていると、追い抜くぞ!早く元気出せ!”って言いながら、たくさんのお菓子とフルーツと愛犬の好物を置いていったのよ」
「何を追い抜くんだ?」
「勉強の事を言っていたみたい」
「本当に幼馴染で勉強のライバルなんだな」
「そうね。
ギュゼールさんも殿下も言い方で損をしているわ。
“ロイズ伯爵令嬢が心配のあまり痩せこけ出したぞ。手紙を書いてやれ” じゃなくて、
“ロイズ伯爵令嬢が心配し過ぎていて可哀想だから手紙を書いて安心させてくれたら僕も嬉しい” と言った方がいいわ」
「なっ!」
「エレノア様は素敵な人よ。傷だらけで血が流れている私を見て、すぐ殿下の元に走って行ってくれた。
状況判断もできて、素早く行動を起こせる、面倒見のいいご令嬢だわ」
「騒ぎで外に出たら君が倒れていた。悲鳴をあげたり失神する令嬢とは違い、彼女はすぐ行動を起こした。だが…」
「あのね、さっき手紙を書いてやれと言った時、顔真っ赤だったわよ!?
誤魔化しきれないからね!?」
「えっ」
「多分本人の前でも知らずに赤くなってるんじゃないの?」
「止めろ!話しかけられなくなるだろう!」
「手遅れだから赤いまま話すのね。
大丈夫。明日からクラスの公認よ」
「バカ! 心配して損した!
勉強教えろよ!」
「ハハッ、本当だったんだな」
「殿下っ!先程はありがとうございました」
「冤罪だということがよく分かったよ。
確かに不器用なだけの優しい男のようだ」
「でしょ!」
「通行許可を取っておくから。もちろん私も同席するけどな」
「お、お願いします」
数年後、ギュゼールさんとエレノア様は婚約をして、ギュゼールさんはロイズ伯爵家の婿になる。
「ルルーナ!」
悲痛な声で呼ばれている。
でも目が開かない。
体が動かない…
「ん…」
「ルルーナ!」
「…エリアス様」
バン!
「医者を呼べ!!」
「エリアス様」
「ごめん、煩くして。ルルーナ。良かった」
「授業が…」
「医者の診察後に話をしよう。水を飲んで。まだ体が熱い」
お医者様の診察を受けている間も体が痛い。
「1日に何度か薬を塗ります。しばらくベッドで安静にしてください。
脚の腫れも引いていくでしょう。
腕はしばらくかかります。
胃薬と痛み止めを処方します。
看護師を側に待機させますから殿下は少しお休みください」
「食べ物はどうしたらいい」
「軽いものから食べさせてください。私から指示を出しておきます」
「ありがとう」
「デクスター公爵令嬢、安静にしてください。しばらく毎日診に参ります」
「あ、ありがとうございました」
どういうことなの。全身包帯だらけじゃない!
「デクスター公爵夫妻を呼んでくれ」
「かしこまりました」
「エリアス様」
「あの時…ルルーナの姿を見た時、心臓が止まるかと思った…あのまま君が目覚めなかったら私はもう生きていけないと思った…」
「泣かないで」
「………」
「ここは、もしかして王宮?」
「…ん」
「私は大怪我をしているの?」
「…ん…っ」
「ずっと側にいてくれたの?」
「…っ ……っ」
「泣かないで」
「ルナ…守れなくてごめん」
「ルナがどうしたの?」
「…っ」
「ルナに何があったの?」
「ルナは君だ」
バン!
「「ルルーナ!!」」
「お父様、お母様」
「良かったわ!」
「私…どうしたの?」
「別棟の二階と三階の途中辺りの外階段から転落したんだ。笛や教科書が落ちていたから間違いないはずだ。
木が落下速度を弱め、下が花壇だったから助かった。そうでなければ死んでいた可能が高い」
あっ、あの時…
「全身に打身と、木の枝でできた傷と、足首は重度の捻挫、左腕は骨折だ。
…それと…こめかみから側頭部にかけて裂傷がある」
「そう」
「何も考えなくていいのよ。治して元気になることだけを考えましょう」
「…どうして王宮に?」
「ロイズ伯爵令嬢が殿下に知らせてくださったの。
殿下が王宮へ運んでくださったのよ。
学園から近いし、王宮医が在中しているから、手厚い治療が受けられると言って」
「エリアス様、ありがとうございました。
お母様、屋敷に帰ります」
「駄目だ!とても動かせる状態じゃない!
絶対ここからださないぞ!」
「…お医者様のお許しが出たら帰ります」
「絶対に出さない!リアスも連れてきてもらっているから帰らなくていい」
「今はそんなことを言い合っている時ではない。
大事なことを聞く。
ルルーナ。突き落としたのはギュゼール侯爵家の次男だな」
「えっ」
「証言があるんだ」
「違います!彼じゃありません!」
「動機もある」
「彼は前のギュゼールさんじゃないんです。ちょっと不器用なだけの親切な人なのです。
あの時も、困っている私に声をかけて助けてくれました」
「作戦かもしれない」
「令嬢です」
「令嬢?」
「三階手前の階段で最後にすれ違ったのは、制服を着た令嬢でした。
少しクセのある赤い髪の令嬢です。巻いたのかもしれませんが」
「そうか。あいつか」
「在籍の生徒で赤髪の女は1人しかいない」
「だけど、カツラということも考えられます」
「顔は?」
「顔までは…」
「失礼するよ」
「陛下!」
「怪我人はそのままで。意識が戻って良かった。2日も目覚めなかったから不安になったが……ここでゆっくり治せ。完治するまでだ。これは王命だ」
「…感謝いたします」
「エリアス」
「私は離れません」
「分かってるから、湯浴みをしろ。嫌われるぞ」
「!!」
「報告も受けたい」
「ルルーナ。湯浴みをしたらすぐ戻るから。
ほら、ぬいぐるみだよ。可愛いだろう?
ルナとリアスはそこのベビーベッドにいるからね」
「「「 …… 」」」
「お父様、心当たりがあるのですね」
「トリス公爵令嬢だ。あの家は娘を王子妃にしたがっていた。
長女は第一王子の同級生で、正妃の座を望んだが、第一王子が選んだのは4つ歳下の別の令嬢だった。
第一王子の婚姻は22の時だった。
正妃の家は三姉妹だった。だからトリス公爵家の長女は、正妃が孕まないかもしれない、もしくは男児を産めないかもしれないと第二妃を狙って待っていたが、正妃は懐妊し男児を産んだ。
もう25歳手前だった。
年齢の合う令息達は既に皆結婚していて、下位貴族の貧しい跡取りしか残っていなかった。
隣国も難しく、打診をしている間に25歳になってしまった。
最終的にルフレールの辺境伯の妾という名の夜伽専用の女として貰われた。
当時の貴族達の間では失敗例として話題になった。
今度は次女が第二王子を狙っていた。
彼女がエリアス殿下を好きかどうかは知らないが、家ではものすごい重圧なのだろう。
トリス公爵家から何度も縁談の打診があった。
先日の誕生日パーティで殿下の色のドレスを纏ってエスコートされ、ダンスを踊るルルーナを見て邪魔だと思ったのだろう」
「殿下の色?白と私の色でしたわ」
「一見な。
暗がりに移動すると白地のドレス全体に施された刺繍が青く見える。強い照明の場所では光ってルルーナのアイスブルーに見える。言うこと無しのドレスだった」
「ネックレスやイヤリング、髪飾りも青かったじゃない」
「…」
「しかも殿下は刺繍も使う宝石も全てアイスブルーだったわ。貴女の瞳と同じ色」
「…殿下に求婚されました」
「知っている。エリアス殿下が毎週末、知り合う時間を設ける許可をもらいに来たからな」
「でも、どちらにしても辞退します。
私は傷者ですわ」
「そんなことで諦めるくらいなら、眠らず食事も取らず、ルルーナに付きっきりになったりしない。
泣いていたじゃないか」
「……。
お父様からもギュゼールさんが解放されるように無実を訴えてください」
「分かった。リリアーヌ、ルルーナの側にいてくれ。宰相のところへ行ってくる」
「ルルーナ」
「はい、お母様」
「貴女の心のままに気持ちを伝えなさい。
あれこれ考えず、好きなら好きと伝えなさい。
好きな人からの贈り物は高価で気が引けても笑顔で受け取りなさい。
好きな人の誘いは躊躇わず受けなさい。
食事でも、観劇でも、お泊りでも」
「お母様…」
「見える傷はほんのちょっとよ。その為に身を引いたら相手を傷付けるわ。
その程度の肝の小さい男だと言っているようなものですからね。
好きな人から望まれたのなら受けなさい」
「…」
「昔、私が公爵様に片思いをしていた時、私なんかと、逃げ腰だったの。
母が今の私のように助言を下さったお陰で今があるの。
閨でも、どんなに恥ずかしいことでも口にして伝えなさい。
可愛がってくださるわ」
「もっとお母様の実家に行ってお話を聞きたいわ」
「そうしましょう」
トリス公爵令嬢と、ギュゼールさんだと証言した者は拘束されて尋問を受けているようだ。
解放されたギュゼールさんがお見舞いに来てくれた。
「ギュゼールさん。私のせいでごめんなさい」
「冤罪だと、君が強く言ってくれたと聞いた。
…そんな包帯だらけで謝られたら、俺が悪いことをしている気になるな」
「包帯が取れたら改めて謝るわ」
「必要ない。俺のせいだ。
入学当初、妬んで君に絡んでいなければ、冤罪をかけられずにすんだ。天罰だったんだ。
だけど君は、俺を信じてくれた。
不器用なだけで優しい人だと」
「…」
「不器用は余計だ」
「ふふっ」
「…勉強、教えてくれないか」
「私が?」
「療養が長くなると聞いた。
授業内容を教える代わりにルルーナ式勉強法を伝授してくれ」
「なにそれ」
「独学の部分が多いと聞いた」
「苦手な部分もあるわよ」
「あるのか?」
「もちろんよ」
「同じ人間なんだな。安心した」
「失礼ね」
「ロイズ伯爵令嬢が心配のあまり痩せこけ出したぞ。手紙を書いてやれ」
「ふふっ。昔の殿下に似てるわ」
「えっ」
「愛犬が死んで寝込んでしまった時があったの。
突然お見舞いに来てくれて、
“ルルーナ!ぼやぼやしていると、追い抜くぞ!早く元気出せ!”って言いながら、たくさんのお菓子とフルーツと愛犬の好物を置いていったのよ」
「何を追い抜くんだ?」
「勉強の事を言っていたみたい」
「本当に幼馴染で勉強のライバルなんだな」
「そうね。
ギュゼールさんも殿下も言い方で損をしているわ。
“ロイズ伯爵令嬢が心配のあまり痩せこけ出したぞ。手紙を書いてやれ” じゃなくて、
“ロイズ伯爵令嬢が心配し過ぎていて可哀想だから手紙を書いて安心させてくれたら僕も嬉しい” と言った方がいいわ」
「なっ!」
「エレノア様は素敵な人よ。傷だらけで血が流れている私を見て、すぐ殿下の元に走って行ってくれた。
状況判断もできて、素早く行動を起こせる、面倒見のいいご令嬢だわ」
「騒ぎで外に出たら君が倒れていた。悲鳴をあげたり失神する令嬢とは違い、彼女はすぐ行動を起こした。だが…」
「あのね、さっき手紙を書いてやれと言った時、顔真っ赤だったわよ!?
誤魔化しきれないからね!?」
「えっ」
「多分本人の前でも知らずに赤くなってるんじゃないの?」
「止めろ!話しかけられなくなるだろう!」
「手遅れだから赤いまま話すのね。
大丈夫。明日からクラスの公認よ」
「バカ! 心配して損した!
勉強教えろよ!」
「ハハッ、本当だったんだな」
「殿下っ!先程はありがとうございました」
「冤罪だということがよく分かったよ。
確かに不器用なだけの優しい男のようだ」
「でしょ!」
「通行許可を取っておくから。もちろん私も同席するけどな」
「お、お願いします」
数年後、ギュゼールさんとエレノア様は婚約をして、ギュゼールさんはロイズ伯爵家の婿になる。
747
あなたにおすすめの小説
【完結】六歳下の幼馴染に溺れた夫。白い結婚を理由に離縁を申し立てたら、義弟(溺愛)に全力で求婚されました
恋せよ恋
恋愛
夫が愛でるのは、守ってあげたくなるような「可憐な少女」。
夫が疎むのは、正論で自分を追い詰める「完璧な妻」。
「シンシア、君はしっかりしているから、大丈夫だろう?」
六歳年下の幼馴染ジェニファー子爵令嬢を気遣う貴方。
私たちは、新婚初夜さえ済ませていないのよ?
完璧な家政、完璧な社交。私が支えてきたこの家から、
ニコラス、貴方って私がいなくなったらどうなるか……。
考えたこともないのかしら?
義弟シモンは、学生時代の先輩でもあるシンシアを慕い
兄ニコラスの態度と、幼馴染ジェニファーを嫌悪する。
泣いて縋るあざとい少女と、救世主気取りの愚かな夫。
そして、義姉であるシンシアを慕うシモン。
これは、誇り高き伯爵夫人、シンシアの物語である。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです
藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。
――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。
妹は父の愛人の子。
身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、
彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。
婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、
当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。
一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。
だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。
これは、誰かが罰した物語ではない。
ただ、選んだ道の先にあった現実の話。
覚悟のなかった婚約者が、
自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました
鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」
そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。
王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。
私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。
けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。
華やかな王宮。
厳しい王妃許育。
揺らぐ王家の威信。
そして――王子の重大な過ち。
王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。
離縁を望んでも叶わない義妹。
肩書きを失ってなお歩き直す王子。
そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。
ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。
婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。
妹の方が好きらしい旦那様の前からは、家出してあげることにしました
睡蓮
恋愛
クレアとの婚約関係を結んでいたリビドー男爵は、あるきっかけからクレアの妹であるレイアの方に気持ちを切り替えてしまう。その過程で、男爵は「クレアがいなくなってくれればいいのに」とつぶやいてしまう。その言葉はクレア本人の耳に入っており、彼女はその言葉のままに家出をしてしまう。これで自分の思い通りになると喜んでいた男爵だったのだが…。
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる