【完結】私が見つめていたのは貴方ではありません

ユユ

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2人の娘、ルルーナ編

婚約

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ルルーナの眠るベッドに沿ってソファを並べた。エリアス殿下はそこで座ってルルーナに寄り添う。夜もソファに身を預ける。

ルルーナが痛みで目を覚ませば薬を飲ませ、体の角度を少しづつ変えたり飲み物を飲ませ、食べ物を食べさせ、勉強の手助けをしていた。

ルナとリアス(本名リアム)の世話をして、雑用係に散歩に行かせるとベビーベッドのタオルを取り替える。



ルルーナを不安にさせないために、そして、エリアス殿下自身が生きているルルーナを見て安心したいがために夜も側に居る。




「ルルーナ、痛いんだろう。
少しだけ何か食べてから鎮痛剤を飲もう」

「怖い夢をみただけだから大丈夫」

「どんな夢?」

「転落して土の冷たさを感じて、体の熱が奪われて、体が動かなくなるの」

エリアス殿下はメイドに茶を入れさせて、ルルーナの体を少し起こすと飲ませた。

「あったかい。

ずっとついていてくれなくてもいいのよ。忙しいでしょう。ここにいる分滞っているんじゃないの?

ソファで寝てたら疲れも取れないし、学園だって行かないと」

「仕事は回ってこないよ。学園もルルーナと一緒に休みを取っている。

事情が事情だし、私もルルーナも上位の成績だから、半数以上出席できて進級試験に受かればいいことになっている。

私とルルーナだったら楽勝だろう。

ソファは高級ソファだから大丈夫だよ。
それにルルーナの側でないと眠れないんだ。
ルルーナの姿を見て、ルルーナの寝息を聞いていないと落ち着かないんだ」

「足、ただの捻挫では無い気がするわ。それにこの傷…。腕も元の通りに動くかどうか。

だから無かったことにして欲しいの。
エリアス様がどうこうではなくて、私が気がひけるの」

「私は諦めるつもりはない。
君を失うかもという恐怖を味わって再認識した。私はルルーナがいなければ生きていけない。

例え顔に大きな傷があろうと、車椅子になろうとルルーナへの愛は変わらない。

私が聞きたいのはそんなことじゃない」

「体にも枝でできた傷があるわ。消えるかどうかわからないもの」

「賢い君が私の言葉の意味もわからないのか?

ルルーナが許してくれるなら今日から毎日抱いて、傷の有無など関係ない事を証明しよう。

それとも私との結婚が嫌で口実にしているならそう言ってくれ。別の角度から攻めることにしよう」

「私は…わからない。
好きか嫌いかと聞かれれば好きだけど、愛しているかと聞かれたらわからない」

「今は愛してくれていなくてかまわない。
好きだと言ってくれるだけで充分だ。

それに、嫌ではないんだな。私との結婚が」

「そもそも結婚自体ピンとこないわ。家庭を作るなんて考えられない」

「ルルーナ。
まだ1年生だからそう思うかもしれないが、すぐ2年生、3年生となって意識するはずだ。
愛していなくとも、この人ならと思える人を婚約という形で確保しておかないと、普通相手は待っていてはくれない。

棚に並べられた一点物の商品と同じだ。一点物なのだから店にある中で一番だと思うものを手に取って確保しなくては誰かが買ってしまう」

そう言われればそうね。
こんなに大事にしてくれる人はいないかも。

「傷だらけでもいいの?」

「かまわない」

「歩けなくても、腕が動かなくても?」

「かまわない」

「愛していなくても?」

「今はかまわない。いつか手に入れる」

「結婚はだいぶ後になるけど」

「契約書に署名してくれたらいくらでも待つ」

「…子供ができなかったら」

「要らない。
賜る公爵は領地は無いし継がせなきゃいけないものではない。
王族の血は兄がしっかり残しているから問題ない。

私はルルーナが欲しいんだ。ルルーナだけを。子が欲しいわけではない。

ルナの産んだ仔犬を育てることになるから忙しくなるだろう」

「本当に?」

「一生子供ができないように処置してもらってくれば信じてくれるか?」

「わかったわ。婚約するわ」

「すぐ処置してもらってくる」

「違う違う!そんなことしないで!」

「ルルーナ。明日、公爵夫妻を呼ぶよ。いいね?」

「はい」





その夜、ルルーナが眠ると契約書を作り始めた。

己に課すものも厳しくして、ルルーナが逃げられないようにした。

ルルーナが逃げるには、どちらかが死ぬか、エリアス殿下が他の女に手を付けた時だけだ。




翌日、

「ルルーナ、本当にエリアス殿下でいいの?」

「なんだか傷付きますよ義母上」

「一点物ですから」

「「??」」

「もっとゆっくり考えてからでいいんだぞ。治って日常を取り戻してからでも」

「一点物ですから」

「何を言っているんだ?」

「ルルーナはこの世でひとり。私もこの世でひとり。逃してしまえば二度と同じ相手とは巡り会えないということです」

「ルルーナ、洗脳されてない?」

「義母上…私が気に入りませんか」

「そうじゃないけど、コレに署名してしまったら逃げられないようになってるじゃないの」

「ハハッ、署名しなくても逃しませんから同じことです」

「お母様。エリアス様なら安心です」

「わかったわ。嫌になったら母娘おやこでアルシュへ行けばいいものね」

「義母上、酷いですよ」

「エリアス殿下、私はリリアーヌから離れませんからアルシュ行きになったらついて行きます。宰相のお小言を殿下が一生聴く羽目になることをお忘れなく」

「その時は私もアルシュへ行きますからご安心ください」

「「「……」」」



この日、私とエリアス様の婚約が成立した。

5日後、ウィリアムが戻って来た。





父達に連れられてお見舞いに来たウィリアムは顔を歪めた。

「これでも治った方なのよ。最初は全身包帯で巻かれて身動き取れなかったの」

「…犯人は」

「学園の令嬢だ。既に処刑されている。
ルルーナに嫉妬したようだ」

「こんなことになっているとは知らずに…」

「ルフレールはどうだった?」

「実は、今の女王夫妻には、王子と王女がひとりずついたが、王女は既に他国へ嫁ぎ、王子ひとりだったんだけど、病死した。流行病だったようなんだ。

そうなると、私か兄2人から次期国王を選ばなくてはならない」

「ウィルに決まったのね。もうウィルとは呼ばないわ」

「ルルーナ、私の妃になってくれないか」

「…私、婚約したの」

「は!?」

「5日前にエリアス様と」

「…離れるべきじゃなかった。
僕はルルーナを愛しているのに…国に戻っている間にルルーナが死に目にあって婚約までしただなんて」

「ウィリアム様は素晴らしい王になるわ」

「君を誰かに取られるくらいなら継承権など放棄したのに…エリアス殿下を狙う女にやられたんだろう…なのに何で」

「ウィリアム。エリアス殿下は誠意をみせてくださった。だから私達も反対しなかった。
何よりルルーナへの愛が強く伝わった。国中にな。
時間は戻らない。ルルーナのことは諦めてルフレールで前を向いて頑張って欲しい」

「…結婚はいつですか」

「最低でも2年は後だ。卒業させたいからな」

「分かりました」





ウィリアムはルフレールへ帰っていった。
学園は退学した。王太子教育があるから仕方がなかった。

私はエリアス様とシリウス様とエレノアの4人でよく勉強会を開いている。

ギュゼールさんのことをシリウス様と呼ぶようになった。

「いつまでギュゼールさんなどと余所余所しく呼ぶつもりだ!友人にもしたくないか!」

「はいはい。“友人だからシリウスと呼んでくれたら嬉しい”と言っているのね」

「すごいわルルーナ!通訳になれるわ!」

「エレノア!同じ言語を話しているだろう!」

「煩いよ。時間までに問題解けないとケーキは無しだからね。全員」

「うわっ!ちょっと!シリウス様、早く解いて」

「なら教えろ」

「エレノアの後でね」

「クッ」





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