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対のロケットペンダント
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部屋から例のロケットペンダントを持って来て、絵が見えるようにルシアン様の前に置いた。ルシアン様もご自身のロケットペンダントを取り出して、絵が見えるように隣に置いた。
「本当に対だ! チェリーに開いた穴も鳥の嘴の角度もピッタリ合う!ひとつの絵を半分にしたものだ!」
ルシアン様は興奮し大喜びだった。
「なるほど、これは面白い」
「素敵ですわ」
お父様もお母様も興味津々だ。
「画家モーガンの作品で、これはわかりやすい対の絵ですけど、ロケットペンダントに入るサイズの作品は聞いたことがありません。知らないだけかもしれませんが」
「問い合わせてみよう。何人かにあたって意見を聞いてみるよ」
実家には3日滞在した。ルシアン様の熱弁に感化されたお父様は、“やっとおまえとアレックスのことがわかってきた”とボヤいた。
今回の帰省で、お父様は姉と私に無関心なのではなく、不器用だったのだと悟った。あんなことになっても姉のことを悪く言ったことはないし、今も結婚に失敗した私に帰る場所を与えようとしてくれている。
私達はロケットペンダントを手に王都へ向かい、専門家に見せた。3人に見せたが、モーガンの最小作品だと認定してくれた。この対のロケットペンダントはとんでもない高値を提示されたが、今は売るつもりはないと断った。
そして私の鳥の絵の入ったロケットペンダントと、ルシアン様のチェリーの絵のロケットペンダントを交換した。女の私がチェリーの絵を持っていた方が似合うと言われたから。
そして集まった証言録をじっくり読んで、間違いなくヘンリー様に復讐できると確信した。
「エリン、父君から手紙が届いているよ」
「ありがとうございます」
封を開けて手紙を読むと、ヘンリー様がシトロス邸に戻っていて、私の泊まっている宿はどこか尋ねる手紙を二度もお父様宛に送ってきたようだ。
いつも私と叔父様は“買い付けに行く”と言って出かけても、半月以上戻らなかったことはなかった。行き先はいつも大雑把に使用人に告げていた。今回は“王都”とだけ言って出発した。いつも行き先の土地の名前で滞在先ではない。
今思えば詳しく聞かれることが無いほど私に興味がなかったと言える。
叔父様が手紙を読んで笑った。
「宿は私の名前でとっているからエリン・シトロスの名で探しても無駄だ。同行者は姪エリンと書いたしな。買い付けで旅に出る時、エリンが親戚の誰と一緒にいるのかも覚えていないんだろうな」
「今頃請求書が集まっているでしょうから、お金になる情報か転売品をもらいたいのに私がいないことで焦っているのでしょう。いつも通りの楽な収入を見込んでモリーンに注ぎ込みましたからね」
「あいつはモリーンと次に会う約束をして宿の予約をして屋敷に戻っただろうから、気が気じゃないな。最悪は情報とは別に金を要求するんじゃないか?」
「戻ったら、大きな買い付けをしたからお金がないと言います」
「え? シトロス邸に帰るのか? 夫婦円満のフリをするのか?」
「荷物もありますし、油断させないと」
「夜はどうするつもりだ、受け入れるのか?」
「あ、それは嫌ですね。ルシアン様、こちらは?」
彼は読んだ後の手紙などを乱雑に置いていた。その一番上にキラキラしたメッセージカードが置いてあった。
「ああ、宝石店の案内だよ。創業90周年記念に限定品を販売するらしい。特別な客に先行予約の案内を送って来たんだ。母がよくその店を使っていたよ」
ルシアン様のご両親は流行病で亡くなったと聞いている。
「ルシアン様はご購入なさいますか?」
「欲しいのか?」
「父が渡す母へのプレゼント用に購入したいなと思いまして」
「では行こうか」
「いいのですか?」
「もちろんだ」
お店に行くと商談ルームに通してもらえて、ルシアン様が予約をしてくれた。ネックレスなのでサイズは関係ない。石は選ぶことができた。
「他には限定品はないのか?」
「今はお申し込みいただいた記念のネックレスのみでございます」
「そうか?」
「そ、そういえばございました。少しお待ちください。おい、誰か新人のデザイン画を持ってこい。全部だ」
今のは脅し? ルシアン様と目が合うと微笑み返された。
少し待つとたくさんのデザイン画がテーブルの上に置かれた。
「お気に召すデザインがございましたらフォーソード大公閣下だけの限定品にさせていただきます」
「気が利くな、さすがだ」
本来の彼はこっちなのかしら。
「そうだな、これがいい。石はダイヤにしてくれ」
「かしこまりました」
「贈り物だから頼んだよ」
「お任せください」
“そうか?”だけで無しが有りに変わるなんて。さすが大公様ね。
「本当に対だ! チェリーに開いた穴も鳥の嘴の角度もピッタリ合う!ひとつの絵を半分にしたものだ!」
ルシアン様は興奮し大喜びだった。
「なるほど、これは面白い」
「素敵ですわ」
お父様もお母様も興味津々だ。
「画家モーガンの作品で、これはわかりやすい対の絵ですけど、ロケットペンダントに入るサイズの作品は聞いたことがありません。知らないだけかもしれませんが」
「問い合わせてみよう。何人かにあたって意見を聞いてみるよ」
実家には3日滞在した。ルシアン様の熱弁に感化されたお父様は、“やっとおまえとアレックスのことがわかってきた”とボヤいた。
今回の帰省で、お父様は姉と私に無関心なのではなく、不器用だったのだと悟った。あんなことになっても姉のことを悪く言ったことはないし、今も結婚に失敗した私に帰る場所を与えようとしてくれている。
私達はロケットペンダントを手に王都へ向かい、専門家に見せた。3人に見せたが、モーガンの最小作品だと認定してくれた。この対のロケットペンダントはとんでもない高値を提示されたが、今は売るつもりはないと断った。
そして私の鳥の絵の入ったロケットペンダントと、ルシアン様のチェリーの絵のロケットペンダントを交換した。女の私がチェリーの絵を持っていた方が似合うと言われたから。
そして集まった証言録をじっくり読んで、間違いなくヘンリー様に復讐できると確信した。
「エリン、父君から手紙が届いているよ」
「ありがとうございます」
封を開けて手紙を読むと、ヘンリー様がシトロス邸に戻っていて、私の泊まっている宿はどこか尋ねる手紙を二度もお父様宛に送ってきたようだ。
いつも私と叔父様は“買い付けに行く”と言って出かけても、半月以上戻らなかったことはなかった。行き先はいつも大雑把に使用人に告げていた。今回は“王都”とだけ言って出発した。いつも行き先の土地の名前で滞在先ではない。
今思えば詳しく聞かれることが無いほど私に興味がなかったと言える。
叔父様が手紙を読んで笑った。
「宿は私の名前でとっているからエリン・シトロスの名で探しても無駄だ。同行者は姪エリンと書いたしな。買い付けで旅に出る時、エリンが親戚の誰と一緒にいるのかも覚えていないんだろうな」
「今頃請求書が集まっているでしょうから、お金になる情報か転売品をもらいたいのに私がいないことで焦っているのでしょう。いつも通りの楽な収入を見込んでモリーンに注ぎ込みましたからね」
「あいつはモリーンと次に会う約束をして宿の予約をして屋敷に戻っただろうから、気が気じゃないな。最悪は情報とは別に金を要求するんじゃないか?」
「戻ったら、大きな買い付けをしたからお金がないと言います」
「え? シトロス邸に帰るのか? 夫婦円満のフリをするのか?」
「荷物もありますし、油断させないと」
「夜はどうするつもりだ、受け入れるのか?」
「あ、それは嫌ですね。ルシアン様、こちらは?」
彼は読んだ後の手紙などを乱雑に置いていた。その一番上にキラキラしたメッセージカードが置いてあった。
「ああ、宝石店の案内だよ。創業90周年記念に限定品を販売するらしい。特別な客に先行予約の案内を送って来たんだ。母がよくその店を使っていたよ」
ルシアン様のご両親は流行病で亡くなったと聞いている。
「ルシアン様はご購入なさいますか?」
「欲しいのか?」
「父が渡す母へのプレゼント用に購入したいなと思いまして」
「では行こうか」
「いいのですか?」
「もちろんだ」
お店に行くと商談ルームに通してもらえて、ルシアン様が予約をしてくれた。ネックレスなのでサイズは関係ない。石は選ぶことができた。
「他には限定品はないのか?」
「今はお申し込みいただいた記念のネックレスのみでございます」
「そうか?」
「そ、そういえばございました。少しお待ちください。おい、誰か新人のデザイン画を持ってこい。全部だ」
今のは脅し? ルシアン様と目が合うと微笑み返された。
少し待つとたくさんのデザイン画がテーブルの上に置かれた。
「お気に召すデザインがございましたらフォーソード大公閣下だけの限定品にさせていただきます」
「気が利くな、さすがだ」
本来の彼はこっちなのかしら。
「そうだな、これがいい。石はダイヤにしてくれ」
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