【完結】些細な呪いを夫にかけ続けている妻です

ユユ

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泥濘む足元

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【 リオネルの視点 】


セシルが感情的になると彼女を包む空気が揺らいだ。

『駄目だ!落ち着け!感情を抑えろ!!』

アレクセイがかなり焦っている。

セシルの髪や服が靡き 瞳が金色に光った後、赤く染まり、一気に室温が上昇していく。

『私も殿下も死んでしまう!!』

アレクセイが宥めようと必死になるその横で私は上半身裸になり呪いを見せた。

『私は呪われた忌わしい存在だ』

室温は元に戻り、セシルの瞳も元の色に戻った。


ドンドンドンドン!!

〈殿下!入りますよ!〉

ドアの向こうで護衛騎士達が騒いでいた。

「何でもない。入るな。無事だ。寧ろ気分がいい」

〈かしこまりました〉


外の者達を落ち着かせ、セシルにも座ってもらった。

「私の呪いの話をしよう」

私に呪いが現れた頃から今までの話をした。

「知りませんでした。友人もいませんし、私に話しかける人もいませんから」

ハーゼル子爵家では私の話題を出さなかったのだな。

「何故 君の魔力判定をしたのか。それは君といると呪いの苦しみが和らぐからだ。
助けて欲しくて君の気持ちを後回しにしてしまった。申し訳なかった」

しっかりと頭を下げた。

「私も…辛くてつい…申し訳ございません。殿下もお辛かったのですね」

「いいんだ。私が最初に自分のことを説明すれば良かった。私の呪いこれを知らないとは思わなかったんだ。
アレクセイ。セシルはどうなっているんだ」

「先程の通り、魔導具での判定は発現無しだった。だが1年と少し前 高熱を出した後 魔法が使えることに気付き 私に相談に来た。
属性は全て持っていて、魔力量が多いため制御を重点に教えてきました。最初から器用で些細な魔法をジワジワと効果を出すことができます」

「例えば?」

セシルはイタズラがバレた子供のような顔をして説明した。

「は?光魔法で毛根を刺激して伯爵の鼻毛を伸ばした!?」

「愛人のパーティ会場で伸びたみたいです」

そして

「は?下顎に氷魔法!?」

「感覚が鈍ってワイン垂れ流しです」

更に

「…氷魔法で靴の裏を凍らせてツルツル滑るようにしたと?」

「雨の日に泥だらけで帰って来ました」

「あとは?」

「今日は靴に土魔法と微量の闇魔法をかけました」

「何をやっているんだよ」

「実験です。後は火魔法と風魔法と水魔法を試してみます」

「そ、そうか。結果を教えてくれ」

アレクセイはセシルを見た。

「セシル。殿下の呪いが消えるよう願いながら魔力を使ってみてくれないか」

「危険です。使い方なんて分かりません」

だとすると、勝手に漏れてるのか?

「結果に責任を問わないし、内密にする」

私は深々と頭を下げた。

「セシル」

「では、私の魔法のことは内緒にしてください」

「分かった。ありがとう」

2人が帰り、判定道具を箱にしまった。

何故反応しないのだろう。

とにかくセシルは規格外だ。
アレクセイが命の危険を感じる魔力量、悪戯とも呪いともとれるような繊細な魔法の使い方。全属性と絶滅したと思われていた氷魔法を使っている。徐々に効果をもたらすなど時間を操っているとしか思えない。時を操る属性があるのではないか…。


神殿を訪問して判定道具について聞いてみた。

「殿下は不思議なことを仰いますな。記録では4属性が最高で 数度しか現れていません。今の魔力研究所のナンバー1は例外です。数度しか現れていない内の一人ですから。
ですので3属性が最高だとお考えください。それに光と闇を一緒に持つ者はおりません」

「もし、全属性が現れたら、判定道具はどのように反応するのだ?」

「壊れるのか、…どうなのでしょう」

「無反応ということはないのか?」

「事例が無いので分かりません」

「魔力持ちが判定道具を反応させないことはあるのだろうか」

「魔力を抑え込んでいる場合はあり得るかもしれませんね。それも完璧に」

「魔法の発動を調整することは可能だろうか」

「どのようにですか?」

「例えば30分かけてゆっくり効果を出すとか、30分後に発動するとか。つまり時を操っているような」

「時属性と仰りたいのですか?それはお伽話ですよ」

「そうか。ありがとう」


城に戻り日中のセシルを思い出した。
アレクセイが歯が立たないのだから 彼女に敵う者はいない。
つまり、光の魔法使いのように任命して側に置くなんてことはできない。彼女の心をどうにかして掴むしかない。

それにはあの夫は邪魔でしかない。



【 ハミエルの視点 】


今日はガロップ子爵令嬢とバラ園に来ている。招待チケットが送られて来たので誘った。

エスコートしながら豊かな胸を堪能する。
背が高くて良かった。

「こちらの品種はとても香りが強いのですね」

令嬢は俺から少し離れて香りを嗅いだ。

よし、この後 宿にと誘おう。近寄りながら手を伸ばした。

「まるで令嬢のように、うわぁ!!」

「キャアアッ!!」

グニュっとした土の抵抗を感じると少し沈むような感覚が伝わりバランスを崩した。
そのまま彼女を巻き添えに薔薇の垣根に倒れてしまった。

彼女に大した怪我はなかったがドレスが棘で何箇所もほつれてしまった。
俺も服が台無しで、傷が何箇所も出来ていた。

「大丈夫ですか」

園の者に助け起こされた。

「ここの管理はどうなっているんだ!足元が取られるなんて危険だろう!」

「…お客様、どの辺りでしょう」

「この辺りだ!」

指を刺すも土が丁寧に整備された道だった。どこを見ても何の凹みも泥濘も無く、石もない。
這いつくばり、手で確認しても地面はしっかりしていた。

「伯爵。帰らせていただきます」

「ガロップ嬢!」

周囲の客からもヒソヒソと何か言われているのが分かり、急いで屋敷に戻った。


セシルにバラ園での事を話し、ガロップ嬢に詫びの品を送りたいと言ったら 快く承諾してくれた。

最近おかしな事ばかりだ。

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