【完結】ずっと好きだった

ユユ

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オードリック・バルギル(初対面の失敗)

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その後はシオン殿下が視察に出てしまい、私はゴタゴタの後だったので残り殿下の代理をしていた。

王宮で当てがわれた側近用の部屋で就寝しようとするが気の昂りと疲れで眠れないでいた。


ある日、王太子になった第二王子殿下の側近が話しかけてきた。

「眠れていないのだろう。睡眠薬を処方してもらえ」

「最終手段で使おうと思います」

「なら、今夜ノックをしたら扉を開けて尋ねた者を中に入れろ」

「困ります」

「危険はないし問題もない。兎に角一度試せ」

そう言って肩を叩いて去っていった。


夜に訪ねてきたのは女だった。

「私達は側近の皆様や要職に就かれた方でご多忙により疲れていらっしゃるお身体を癒す為に存在します。

バルギル様は独身ですので嫌悪感さえなければ受け入れてくださいませ」

噂に聞いていた“夜のメイド”か。

「君はそれでいいのか」

「はい。光栄でございます」

「…では頼む」

女は目の前で避妊薬を飲み干し、服を脱いだ。

私の服を脱がせると好みを聞いてきた。

「疲れているから、上に乗ってくれるか」

「かしこまりました」

元気のないモノを咥え一生懸命勃たせると跨って腰を落とした。

馴染ませると腰を振り続け、私が果てるとベッドから降り、お湯で濡らしたタオルで局部を拭き上げると毛布を被せた。さっさと服を着て灯りを消し、ワゴンを押して部屋を出ていった。

去っていった扉を見つめぼーっとしていたらいつの間にか寝ていた。メイドに起こされるまでぐっすりと。


それから週に一度利用するようになった。


視察から戻ってきたシオン殿下はまた隣国へ行ってしまった。今度は縁談らしい。

帰ったら話すと言って旅立って行ったが3か月も城を空けるとは聞いていない!


陛下と王太子殿下や各側近達の苦労も知らずに笑顔で帰ってきた。

「父上!援護の手紙をありがとうございました! グラースの次期国王になります!」

話を聞いた国王夫妻は苦笑いだった。



一年後、卒業パーティーのエスコートに行くという。

今度は私も同行させられた。
お会いした王女殿下は美しく聡明な方だった。


パーティーでダンスを踊る2人を見届けた。その後は貴族達が挨拶をし始めたので離れ、酒を口にしながら外の空気を吸いに出た。

暗闇からの気配に驚いたが灯の下へ来た彼女はまさに妖艶だった。可愛さと美しさを兼ね備え、美の化身かと思わせるような身体に何処か庇護欲を沸き立たせる瞳。

一瞬で虜になった。

そのレディがベンチにひとりで座り誘いを待っていると思ったら居ても立っても居られなかった。

断られたが引き止めて強引に口付けをしようとしたら脛を蹴られた。

騒ぎを聞いて騎士が間に入り、待ち人の名前を告げた。

“テオドール・サックス”

途端に胸がムカムカしてきた。声がかかるのを待っていたのではなくて特定の男を待っていたのかと。


騎士に見張られて令嬢と別室で待つ間、彼女を見つめていた。
明るい室内でも見事に美しい。
王宮騎士でさえチラチラと令嬢を見ている。

少し待つと王女殿下と男が現れた。 
令嬢は抱きついて大泣きし始めた。

子供の様に泣くのでびっくりした。
すぐにシオン殿下もやってきた。

王女殿下がものすごく怒っている。
シオン殿下がタジタジだ。

は!?  17号歳!?
この色気で!?

しまった。大人の女として迫ってしまった。

令嬢が帰ってから令嬢と男のことを聞き出した。

従兄か……それにしては距離が近かった。
ゲラン伯爵令嬢は泣きながら従兄に甘えてくっついていたし、従兄の侯爵令息も頭を撫でたり肩をさすったり時折何故か頬を突いていた。思い出すだけで腹立たしい。

元妻が浮気をしたと気が付いた時でさえ微塵も嫉妬などしなかったのに、彼女が従兄に甘えて頼る姿を見るだけで腑が煮え繰り返るようだ。

王女の溺愛を逆手に取って提案してみたら同意とも取れる反応が返ってきた。

婚約者も居ないし恋人もいたことがない…
王女と従兄に守られた真っさらなレディ。
誰にも渡したくない!誰にも触れさせたくない!

婚姻後、仕事をしている間は王女に預けておけば安心だ。王宮に泊まるなら彼女と泊まればいいし、屋敷に戻っても彼女と一緒にいられる。
王女が後ろ盾なのだから問題ない。

まずは彼女の両親から攻略しないと。


翌日、彼女が王女に会いに来ている隙に伯爵邸へ訪ねた。前日の夜に謝罪と夫妻に話があると書いた手紙を送っておいた。

夫妻は会ってくれた。次期国王の側近だと思ったのだろう。

「ゲラン伯爵、夫人。
昨夜はご令嬢に大変失礼をいたしました。
あまりにも美しく気品ある方でしたのて16歳とは思わず大人のレディとして口説こうとしてしまいました。

こちらは私の経歴書です。何かご質問がございましたら何でもお答えします」

「つまり、アネットとの婚約を希望なさると?」

「はい」

「令息は次期公爵ではないのですか」

「ご令嬢と結婚できるなら、指示に従います。伯爵家に婿に来いと仰るのであればそうさせていただきますし、他の令息を養子に迎えて伯爵家を継がせてご令嬢は嫁に出したいということであれば爵位を与えてもらいます」

「短い婚歴があるようですね」

「政略結婚の妻が他所の男の子を身籠りました。しかも血の謀をした後に誠実さが見られず、元妻の両親も同類でしたので内々に処理することを諦めて告発しました。

裁判記録は後日取り寄せてお渡しします」

「継承権をお持ちなのですね」

「順位は低いですが血縁ですので。
ご令嬢と婚姻の際には放棄します」

「愛人などは」

「妾も愛人も必要ありません」

「こちらの国に移住したら次期国王陛下の側近が職業で間違いないですか」

「はい」

「財力は」

「今の暮らしは間違いなく維持できます。
子が産まれても同様です」

「病気は」

「ありません。仕事柄、疲れはありますが問題ありません」

「調査を入れてもよろしいですか」

「はい。ご納得なさるまでお調べください」

「私達がいいと言ってもアネットが嫌がればお終いだ。アネットの望まぬ結婚をさせるつもりはありません」

「昨夜は私の誤解からご令嬢に失礼をしてしまいました。誠心誠意挽回します。
ご令嬢を食事など外出にお誘いしたり、こちらにお邪魔することをお許しください。
今回の滞在期間は長くてあと20日程です。
短い時間を大事にしたいと願っています」

「分かった。しかし、手は出さぬように」

「髪に口付けても?」

「アネットが嫌がらなければそのくらいは構いません」

「ありがとうございます」

「アネットの移住は許容できません」

「承知しております」

「早速、明日ご令嬢とお茶の時間をとらせてください」

「3時にいらして」

「ありがとうございます」




城に戻り早速裁判記録の発行願いを書いた。

「ゲラン伯爵夫妻は口説けたのか?」

「調査を入れると言っていましたので前向きだと捉えました。前妻との裁判記録も提出しますし。

後は彼女を口説けるかといったところです」

「出だしがアレでは難易度高そうだな」

「そこは王女殿下の後押しをいただければ」

「まったく…」







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