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オードリック・バルギル(血の謀)
しおりを挟む【 オードリック視点 】
公爵家に生まれた次期公爵の私は第三王子殿下の側近をしていた。
18歳で結婚をしていたが忙しくて面倒になり城に泊まることが多かった。
妻は公爵家の次女で政略結婚だった。
愛せはしなかったが妻として敬っていたつもりだった。
ある日妻の具合が悪いと家令から手紙をもらったので休みをとり、医者と共に家に帰った。
何故か診察を拒否しているという。
医者と現れた私を見て青ざめた妻に疑念を持った。何か隠していると。
医師は告げた。
「おめでとうございます。ご懐妊です。
初期ですが悪阻があるのでしょう。当面は安静になさってください」
「ありがとうございました」
医師を帰し、妻の部屋に戻り尋ねた。
「父親は誰だ?」
「オードリック様!?」
「父親は誰だと聞いている!」
「オードリック様との子ですわ!」
「それは無い。結婚したばかりだし忙しくてまともに家に帰れないから、まだ早いと結婚する3ヶ月前から避妊薬を飲んでいた。
だから私の子のはずがない」
「あ、必ず効くとは」
「産まれたら誰に似るのか楽しみだ。
その代わり、血を謀った罪で投獄されるがな」
「どうして…」
「順位はかなり低いが継承権を持っているからな。王族の血筋に謀は極刑だ」
「!!」
「直ぐに脚を開く女は知能も低いのだな。
ゴウエン、この女の両親を呼び寄せろ」
「かしこまりました」
その後は妻は泣くばかりで妻の両親は平謝りだった。
「オードリック様、お腹の子は私達が引き取り養子に出します。ですのでやり直すチャンスを与えてください」
「公爵夫人。熟年夫婦ではないのですよ?
誓い合って数ヶ月で他の男の子種を受け入れているような軽い女とは無理ですよ。
血の謀をすればどうなるのか分かっていませんでしたし、黙っていれば済むとも思っていた。こんな低レベルでは公爵夫人は無理ですし、私は側近を辞さなくてはならなくなります。
そもそも浮気相手と避妊するでしょう?
身籠ったということは、打ち明けなかったということは故意ですよ。
性根まで腐っていてはやり直せません」
「あまりの言いようだわ」
「夫人。寛大な対応を取っているのですよ。
今すぐ陛下に報告を上げれば貴方達の娘は斬首刑、そちらの公爵家は降格、これから婚姻を控えている次男は無事に婿入りできますかね?」
「申し訳ありません。娘は今すぐ引き取ります。離縁の書類にもすぐ署名させます」
「お腹の子についての誓約書にも署名してもらいますよ。後で揉めたくないのでね」
「勿論です」
「あと、生涯社交に出さないように」
「それでは娘は…」
「夫人、また説明しなくてはなりませんか?貴女を見ているとお嬢さんが貴女に甘やかされて生きてきたのが良くわかる」
「なっ!」
「貴女の娘は犯罪者なのに、どんな顔をして社交に出させるおつもりですか?」
「犯罪者なんて」
「成程。温情は貴女にとっても娘さんにとっても良くないことが分かりました。
ゴウエン!すぐに陛下に大事な報告があるとシオン殿下を通して謁見の申し込みを入れてくれ!娘を馬車に乗せろ」
「かしこまりました」
「待ってくれ!」
「何度も待ちましたよ。ですが夫人が台無しにして当主の貴方が制さない。
これ以上不愉快で無意味な時間は過ごしたくない。
裁判を通してはっきりさせましょう。
徹底的な調査が入ると思います。粗が出ないといいですね。
それではお引き取りください」
「オードリック殿!」
「早く出ていかねば騎士が応対します」
その後、離縁が先に決まった。
相手は元妻の実家の専属騎士だった男。
元妻は最後まで否定したが、実家から連れてきていた専属メイドが証言した。
男の寝泊まりする部屋は元妻が金を出し借りてやっていた。宝石を売った金だと分かった。
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そしてすぐ後にシオン殿下が婚約者を刺し殺す事件が発生した。
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