【完結】ずっと好きだった

ユユ

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完治

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翌朝、食事を終えた後、ヒューゼル隊長とバーンズ卿が真剣な顔で話をしだした。

「アネット、思い出させて申し訳ないのだが私達は先手を打つ方がいいのではと思った。

数日後、王子達は帰国日を迎える。
それまでに再度会わせて欲しいと懇願するか、側近だけ残りアネットが伯爵家に帰ったところに訪ねる可能性がある。

アネットの気持ちを知りたい。
完治した後会うつもりがあるのか、縁談を再開するつもりがあるのか。

どうだ?」

「……縁談は無理です」

「なら手紙を書かないか。
はっきりと婚約できないと断ろう。
その方が互いのためだと思う」

「そうですね…書きます」




“オードリック・ギルバル様

夜会ではご迷惑をおかけ致しました
反省しております

完治までまだかかりますので
お会いすることは叶いません

縁談の件ですが私なりに悩みました

出会や夜会のことを振り返ると
ご縁がなかったのだと思います

正式に辞退を申し上げます

素敵なご令嬢との出会いがございますよう
心よりお祈り致します

短い間でしたがありがとうございました

さようなら

アネット・ゲラン”



「ヒューゼル隊長、これで大丈夫でしょうか」

「読んでいいのか」

「はい。バーンズ卿もお願いします」

「読ませてもらうよ」


2人は一緒に手紙を読んだ。

「いいんじゃない」

「そうだな」

「もし、これを渡しても付き纏うようなら呼んで。追い払うから」

「遠慮するな。部下の困りごとくらい解決するぞ」

「ありがとうございます。

早く治って欲しいけどお2人と離れると思うともう寂しいです」

「アネット、おいで」

「えっ」

「ハグだ、ハグ!」

「はい」

バーンズ卿がハグしてくれた。本当に感謝だ。

「次は隊長にハグしてもらいな」

「……」

「おいで」

「はい」

隊長もハグしてくれた。安心する。

「……」

「……」

「……」

隊長?

「隊長、長いですよ」

「あっ、すまない。

じゃあ、手紙を届けてくる」

「お願いします」


少し耳を赤くした隊長は手紙を届けに部屋を出た。






数日後、王子殿下達は帰国したと教えてもらった。

両親、ステファニー、テオと手紙を交わしながら楽しい療養生活を送っていた。

内出血が薄まった頃、メイドによるマッサージを受け入れた。

ヒューゼル隊長は簡単なものなら髪を結えるようになっていた。

隊長本人も結えるようになるとは思ってもみなかったと笑っていた。

隊長の優しい手が好きだ。

バーンズ卿の無邪気な笑顔が好きだ。






さらに1週間後。

「アネット!」

「ステファニー」

ステファニーは駆け寄って私をギュウギュウに抱きしめながら泣き出した。

「寂しくて寂しくて死んじゃいそうだった!
私が変な提案をしたせいでごめんなさい!」

「心配かけてごめんなさい。
ステファニーのせいじゃないわ」

「大好きなの!大好きなの!!」

「私もステファニーが大好きよ」


しばらくすると泣き止んでステファニーはヒューゼル隊長とバーンズ卿にも謝罪とお礼をした。

4人で昼食をとっている。

「アネット、引き締まった感じがするわ」

「私はお2人の部下だからちょっとずつ鍛えてもらったの」

「何してたの?」

「他に?本も読んでいたりしたけど、お話ししたりゲームをしたりして楽しかったわ」

「そうなのね。良かったわ」

「こんなことでもなかったらお2人を知ることがなかったと思うと今回の出来事はいい思い出になりそうだわ」

「私達も光栄でした。
王女殿下が彼女を側におきたがる理由が分かりました」

「ずっと第三にいて欲しいくらい可愛いです」

「そうでしょう!アネットは身も心も可愛くて天使なのよ!」

「やめてよ、ステファニー。贔屓目過ぎるわ。天使に怒られてしまうわよ」

「文句言うようなら天使を捕まえてじっくりアネットの魅力を語ってやるわ」

「天使の呆れる顔が見れそうね」


「明日帰るのよね」

「うん。両親が迎えに来るって」

「また遊んでくれるわよね」

「もちろんよ」


夕方に最後の検診を受けて、国王夫妻を含めた6人で夕食をとり部屋に戻る。

今夜は最後の夜だ。

メイドが入った今も濡れた髪をバーンズ卿が乾かし、櫛で丁寧にとかしてヘアオイルをヒューゼル隊長がつけてくれる。

「……っ、……っ」

「アネット!?」

「どうしたの!?」

「ううっ……」

「痛かったのか!?」

「離れたくない」

「アネット?」

「もう…明日が来たら…滅多に会う…ことは無くなって…うううっ」

「「アネット…」」

「私はっ…ヒューゼル隊長が…バーンズ卿が……大好きですぅ…ううっ」

私はドレッサーの前で隊長に髪の手入れを受けながら号泣しまった。
離れたくないと子供のように口に出した。

バーンズ卿は跪くと私の手をとった。

「王女に会いに来るんだろう?
私達にも会いに来てくれたらいいじゃないか。
なんで今生の別れのように泣くんだよ」

「そうだぞ。お前は薄情だな。怪我が治ったら私達に会わないつもりだったのか」

「ショックだなぁ」

「休みはたまに会って食事でもすればいいじゃないか」

「ゲラン邸にお邪魔してもいいなら行くよ」

「本当ですか…グスッ」

「本当だ」

「絶対?」

「絶対だよ」

「へへっ」

「まったく…」

そう言いながら隊長はグリグリと頭を撫で回していた。





翌朝、朝食後に王族に挨拶をして待機しているとお父様達がやってきた。

「「「 アネット!! 」」」

だけど真っ先に駆けつけて私をギュウギュウと抱きしめたのはテオだった。

「馬鹿!どれだけ心配したと思っているんだ!」

「テオ、苦しい」

「少し苦しいくらいなんだ!
俺がどれだけ……どれだけ……」

「ごめんね」

「変な内容の手紙なんかよこして」

「だってテオの婚約者が可哀想だわ」

「お前以上に大事なものなどない!
変な気を回すな!」

「でも従兄離れしないと」

「はぁ。そんなことは考えなくていいんだ。
……もう痛くないのか」

「うん、大丈夫。逆に筋肉ついたの」

「テオドール、私達もアネットを抱きしめたいんだがな」

「すみません、叔父上、叔母上」


「ヒューゼル隊長、バーンズ副隊長
アネットがお世話になりました」

「ご令嬢の護衛を務められて光栄でした」

「今後も引き続き、お付き合いをさせていただきますがよろしいでしょうか」

「アネット、そうなのか?」

「はい、私が離れたくないって泣いて頼んだのです。外出したり屋敷にお呼びすることを許してください」

「ご迷惑ではありませんか」

「もう彼女は私達にとって仲間ですからお許しいただきたい」

「分かりました。アネット、あまりご迷惑をかけては駄目だぞ」

「はい!」

「では帰りましょうか」

「待って!」

2人に順番にしがみついた。
2人も抱きしめ返してくれた。

「運動続けるんだよ」

「いい子にして待ってろよ」

「はい!」

笑顔で王宮を後にした。



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