【完結】ずっと好きだった

ユユ

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9日後の訪問者

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午後の食堂のテーブルにはタオルとシートを敷き、4箇所に放置した鎧のパーツを並べている。
分かりやすく、紙で作った三角プレートを立てた。

「馬車の側面に付けた物が一番汚れているな」

「アシュラル隊長、ぱっと見は分かりにくいですが厨房に置いた物も油分が付着して汚れているのですよ」

アシュラル隊長は公爵家の次男で今は伯爵だ。

「このタライと水は?」

「汚れの落ち具合をみます」

それぞれ半面を布で拭く。

「庭と浴室は乾拭きで十分だな」

「では馬車の側面の汚れに水をかけます」

水が濁り布も汚れるが簡単に綺麗になった。

「次に厨房です。油分だと水を弾きますから通常の洗剤で洗います」

綺麗に落ちたが乾拭きして表面を触った。

「これだと防汚クリームを付け直さなくてはなりませんが、厨房勤務の鎧騎士は滅多にいないでしょう。汚れが落ちやすいと知れたので良しとします」

「古そうなのにすごく綺麗だな」

「磨き上げて塗ってますので。
以前、磨き過ぎだと止められました。
やりだすと止まらなくて。

あまりピカピカにし過ぎても反射して目立ちますよね。潜む騎士の鎧は程々にしないと駄目ですね」

「慶事とかの鎧は磨き過ぎてもいいんじゃないか」

「そうですね」

「あとはこの効果がどの程度保つのか知りたいところですが、ひとまずヒューゼル隊長と相談します」

「何でヒューゼル隊長?」

「私は第三の雑用係です。使うのは第三の鎧になりますから。
今日は外せない用事があるそうで、よろしくと仰っておりました」

「「………」」

「こちらがお店と住所、品名と単価です」

「「………」」

「どうかなさいましたか」

「いや。ありがとう」


その後、個人的なことを沢山聞かれ、将来のことも聞かれた。

将来のことと言われても困る。

「多分父が選んだ殿方から選んで嫁ぐと思いますが、しばらく考えたくないです。

無理に嫁がなくても働こうかなって思ってもいるのですが周囲が無理だと反対するのです。私がいると揉めるとか言われました。

そんなことを言われても困るんですけどね」

「「………」」


バトラーズ副隊長は洗剤の現物と、怪我を負わせたお詫びにと髪留めをプレゼントしてくださった。

ちゃんと使ってくれと言うけど高そうで怖い。






***** 騎士団会議 *****

今日はサヴィール団長、アシュラル隊長、ヒューゼル隊長、第二のキュヴィエ隊長が集まった。

団「雑用係の報告を簡単にしてくれ」

一「ザックは文官向きですね。仕事はきちんとしています。掃除は得意ではないですが整理はできます。掃除の仕方を習っていないのかもしれません」

二「ピーターは騎士になりたいようです。仕事は興味があるかないかでムラがあります。サボるわけではないですが意欲が感じられません。騎士の試験には落ちているようです」

三「アネットは自主性があり根気強く丁寧です。言われたままではなく工夫しようとします。コミュニケーションも問題ありません」

団「エリザベスは思っていた仕事や待遇と違ったようで渋々と言った感じだ。
差別的な部分もあって他部署の評価も良くない。靴も初日に忠告したが令嬢の靴を履き続けた為に、足を痛めて休むことになった。

言われたことが終わると指示があるまでソファに座って待ってる」

団「継続するか」

一「場合によってはザックは団長の所が向いているかもしれません。本人が継続を望むのであれば構いません」

二「必要とは言い難いですが不要とも言い難く、予想では長続きはしないと思います」

三「既にアネットの勤務日数を増やしました」

団「エリザベスは解雇クビだ。
ザックは面談をしよう。ピーターはいつ辞めてもいい仕事を振ることにする。

団長室にアネットが欲しい」

三「嫌です」

一「うちもアネットが欲しいです」

三「駄目です」

一「試用期間の配属は仮ですよね」

三「同じことをザックにやらせたら
  いいのではないですか」

団「どう増やした」

三「鎧に集中したいから月、火、金、土に
  来て、月、金の午後と、火、土は丸々
  鎧です。土曜は社交がある時は休ませ
  ます」

団「疲れるだろう」

三「アネットの希望です。
  体力的に続かなければ変えます。
  一度防汚処理が終われば、余程の
  汚れではない限りしばらく乾拭きで
  済むはずです」

団「最初の処理が終われば余裕があると
  いうことだな?
  ではその後は週2で団長室で預かる」

一「うちは?」

団「ザック次第だ。文官を希望して
  試験に受かれば次を募集するし、
  続けると言うのなら指導しろ」

一「団長!」

団「来週水曜の14時に4人を呼んで話しを
  するから月曜にザックとピーターの
  面談を済ませてくれ。

  ヒューゼル、飴とブラシの稟議書を
  書かせてくれ。

  防汚クリームは処理後3カ月以上様子を
  見て問題なければ導入する。

  金属の劣化がないか職人に確認させて
  決める」













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