【完結】ずっと好きだった

ユユ

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団長室の手伝い

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「アネット、今日は団長の手伝いを頼めないか」

「エリザベスさんの担当分ですか?」

「そうだ。水曜日に休んだみたいで」

「分かりました」

「今から連れて行く。荷物を持って行くぞ」

「はい」




三階にある団長の執務室は広くて景色が良かった。だけど側近の人達がいない。

「アネット嬢、よく来てくれた」

「おはようございます。
部下ですのでアネットとお呼びください」

「分かった。
エリザベス嬢が居なくても回るはずだったんだが、側近の2人が風邪をひいて休んでいるんだ。他の者に感染されるとまずいからね」

「団長は大丈夫ですか」

「ありがとう。大丈夫だ」

「急ぎのものはありますか」

ポシェットから筆記用具を取り出す。

「ポシェットの中には何が入っているのかな」

「筆記用具とハンカチとガーゼと粉末の止血剤と構内図と水です」

「止血剤?」

「念の為です」

「……そうか。
その箱の中の書類を宛先を分けて届けてくれないか。分けたところで見せてくれ」

「かしこまりました」

宛名があるものと無いものがある。
部署長はメモしてあるからそれを見よう。

あとはこんな感じかな。

「できました。上の2枚は分かりませんでした」

「ああ、この2枚は第一に回してくれ。勝手に第三まで回って戻ってくる書類だ。
所属と部署長が分かるのだな」

「メモしてあるだけです」

「そうか」

「あと、最後の書類は署名漏れです」

「えっ……うっかりした。助かった」

「では届けに行きます。戻す書籍はありますか」

「そこの4冊だ。持てるか」

「手提げ袋がありますから大丈夫です。
行って参ります」



書類を届けてまわり、本を返して第一の執務室へ来た。

「団長の遣いで参りました!アネットです!」

「入れ」

「失礼します!」

「第三じゃないのか」

「ちょっと人手不足になりまして、臨時です。こちらは団長から預かりました。
こちらは捜査部から、こちらは王宮騎士団長から、あとこちらは奥様からの預かり物だそうです」

「ああ、着替えだ。ソファに置いてくれ」

「ハンガーにかけるものはありますか」

「シャツはかけてもらえると助かる」

「かしこまりました」

「……飴、美味かった」

「それは良かったです。
何かお持ちするものはございますか」

「大丈夫だ」

「失礼します」

「ちょっと待ってくれ」

「はい」

「鎧の試験、私もバトラーズと一緒に行ってもいいか」

「アシュラル隊長がですか?」

「駄目か?」

「構いませんが、防汚クリームの試験ですよ?」

「午後に伺う」

「かしこまりました」




団長室に戻り掃除と片付けをして、午後に書類を読んでチェックしているとノックとともに扉が開いた。

「父上、ただいま戻りました!」

「久しぶりだな。だが返事がある前に開けるな」

「……この美女は誰ですか。まさか」

「何がまさかだ!ちゃんと挨拶をしろ!」

「レディ、私はローゼス・サヴィール。
近衛騎士団長の息子で侯爵家の次男です」

「お初にお目にかかります。
ゲラン伯爵家の長女アネットと申します。
近衛騎士団の雑用係でございます」

「アネット、ローゼスは騎士学校にいて交換留学をしていたんだ。

ローゼス、アネットは卒業したばかりのご令嬢だ」

「俺の2つ下!?」

「ローゼス!」

「てっきり、同い歳か歳上かと…。何でこんな美人が雑用なんてやっているんだ?」

「ローゼス、価値観はそれぞれだ。余計なことを言うな。

アネット、すまない」

「お気になさらないでください。お茶をご用意ましょうか」

「いや、席を外す。そのまま続けてくれ」

「かしこまりました」

「ローゼス、行くぞ」

「アネット嬢、またな」

王立学園と違い、騎士学校は入学歳が決まっていないし月日が流れれば進級試験というわけではなく、合格を積み重ねて卒業に向かう。

卒業を諦める者や、学校から才無しと諭され退学する者もいる。

近衛騎士団長の息子だとプレッシャーが凄そう。

その後、なかなか団長が戻らず定刻が過ぎてしまった。
窓を開けて換気をして運動を始めた。

扉の近くに居たのが悪かった。

ゴン!

「痛っ!!」

「えっ!!」

急に扉が開いて屈伸をしていた私の頭にぶつかった。

扉を開けたのはバトラーズ副隊長だった。

「ごめん!今日は側近達が休みで団長は一階に居たから誰も居ないと思って……」

「………」

「アネット!何処を打った!アネット!」

「頭も痛いけど舌も噛んだじゃないですか!」

「見せてみろ」

「いいです」

「見せろ!」

「嫌です!」

無理矢理口を開けさせられて掴まれた頬も痛い。

「血が出てる。医務室へ行こう」

「大丈夫です。すぐ止まります。掴まれた頬まで痛いです!」

「何処へ行く」

「洗面室です。うがいしたいので」


バトラーズ副隊長は洗面室まで入ってきた。

グジュグジュグジュ ペッ

ポシェットからガーゼと止血剤を出して当てる。

自然に止まるだろうけど、止まるまでバトラーズ副隊長が離れなさそうだからね。

「本当にすまない」

「いいえふ(いいです)」

すぐに止まり団長室に戻った。

「団長はどちらにいらっしゃいましたか」

「一階のオープンエリアだ」

「私はそちらに行ってから帰ります。失礼します」

「送って行く」

「勤務中ではないのですか?私は大丈夫ですから。それでは」


団長に挨拶をして帰った。



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